父の遺言(4)

 福山総理こと、福山正則は既婚者で、子供が1人いる。年齢は50歳になり、49歳で総理に指名され、もうすぐ半年になる。福山総理と洋介が初めて出会ったのは、今から24年前になる。


 当時、福山は大学を卒業したばかりで、父親が政治家だったということもあり、2世として同じ道をいくと周りでは噂されていた。しかし、父親はお前の好きにしろと言う。

 福山は、自分が何をしたいのか、どうやって生きていくのか大学に入り模索していた。しかし、結局何もみつからず。そんな時、ふらりと洋介の父親の店に立ち寄り、鳥肌が立つものを見つけた。それは、1枚のディズニーのセル画だった。

 ディズニーが大好きな福山は、ディズニーグッズコレクターでもあり。収集は少ないが、特に欲しいのがディズニーのセル画で、中々手に入れることができない、値も張る、1枚も持っていない。だからといって、父親のコネで、そういうことは考えない。

 食い入るようにショーケース越しにディズニーのセル画を見ていると、洋介の父親が福山に話しかけてきた。

「それ、今日入荷したばかりで、40万はちょっと高いかな?」

「いえ、安いと思います。このセル画なら45万が妥当だと思います。でも、私にはこれを買うお金がありません……」

「1つ聞いていいかな? これ、本物だと思う?」

「どういう意味ですか? これ本物ですよ!?」

「その根拠、説明できる?」

「はい、できます」


 洋介の父親は、ショーケースの鍵を開け、ディズニーのセル画を取出し、また鍵をかけ。私についてきなさいと言い。2人は、洋介の自宅に行き、2階にいる洋介を呼び出し、リビングでお互い自己紹介を交わし。ソファーに洋介と洋介の父親が座り、ローテーブルの上にディズニーのセル画を置き、その前に福山が立っている。

 洋介の父親は、このセル画がどうして本物なのかその根拠を3分で説明するように言い。そして、どうしてこのセル画が欲しいのか、その想いを10分でスピーチするように言った。


 すると、福山はわかりましたと即答すると。13分後、このセル画が本物である的確な説明と、想い思いのスピーチが終わり。洋介の父親は、福山に何も言わず。

「洋介、どう思う?」

「凄いですね、福山さんの鑑定内容、店長とほぼ同じ鑑定内容だし、このセル画に対してというか、ディズニーへの想いの凄さ、この人ならきっとこのセル画を大事にしてくれる、私はそう感じました、っていうか、なんなのこれ? 説明してよね、店長!?」


 洋介は、店の手伝いをしながら鑑定士の勉強を始めて1年が過ぎ。洋介に何も言わなかったのは、この人の本質を見抜くためで、洋介なら同情しかねないと思ったから。

 本来ならお客を選んだりはしない、例外はあるが。ただ、福山の目を見て感じた、こいつはいい鑑定士になると、このセル画を大事にしてくれると直感した。だから、福山を試してみたくなった。そのことに洋介の父親は謝り、もしうちで働く気があるなら、本来なら支払いは現金のみだが、特別に分割でこのセル画を売ってもいいと言う。但し、3日以内で返答してもらいたい。もし3日返答できなければ、このセル画は店頭に戻す。もちろん断っても同じこと。

 突然、そんなことを言われた福山は、困惑気味だが、考える時間が欲しいと思っていると。突然、洋介が福山に訳のわからない質問をした。

「福山さん、もし魔法の映画のように、魔法が現実に存在したらどうしますか?」

「……私なら、魔法は脅威でしかないから、魔法は封印するかな……」

「そうですか、私はそうは思いません。魔法も科学も同じだと思います。ただ、使い方さえ間違わなければいいだけとこと。それさえ見失わなければ、魔法も科学も人を幸せにできると思います」

「……なるほど、参ったなー……決めた。店長、私をここで雇ってください、よろしくお願いします」

 福山は、深々と頭を下げ。突然、洋介に友達になって欲しいと言い出し。

「いいですけど、10歳も年下ですよ?」

「何そのくだらない質問!? 洋ちゃん、よろしくね。あっ、そうだ私のことは、福ちゃんでいいから」


 洋介は、急にキャラ変したような福山に困惑気味だが、意外とフレンドリーなのかと思っていた。


 翌日、履歴書を持参した福山は、ここで鑑定士を目指すのも悪くないなと思い、何か一筋の光を見たような気がしていた。

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