父の遺言(2)

 特A魔法士合格へ向けて、魔法使いの練習が始まり、17日が経ち。 洋介とサクラは、毎日8時間、週休2日で魔法使いの練習をし、2人の魔法能力なら余裕で約束の3ヶ月間で特A魔法士合格すると使い魔たちは思っていた。

 しかし、この2人、一つ一つの魔法を極めてから次の魔法へ進む。これじゃ3ヶ月間で特A魔法士に合格するなんて絶対に無理だとリリカが2人に言うが。真っ先に反論したのはサクラだった。

「じゃ、試験に合格すればそれでいい訳!? 魔法使いってそんなものなの!?」

「あなたたちバカなの!? 約束を破るつもり!? 魔法を極めたいなら約束を守ってからにしてよね!?」

 確かに、というかまったくリリカの言う通り。


 約束を破る訳にはいかない。それに、いくら過去に戻れるといっても未来は動いている。一刻も早く魔法界の住人たちを救い出さないといけない。2人はそのことを忘れていた訳ではないのだが。つい極めたいという思いが先に立ち、リリカに注意され思い出した。


 翌日、今日は洋介の父親の命日で、墓参りと洋介の案内で、サクラとサクラの両親たちを東京観光に連れて行くことになっている。

 この日は、魔法の練習を休み。午前9時にいつも花屋に立ち寄り、両親が好きだったバラの花束を買い。自宅から車で15分の場所にある、お寺が管理する墓地に行く。

 洋介の自宅の駐車場には、軽自動車が1台停まり。洋介たち4人は車に乗り込み、バラの花束を買い、お寺に着くと4人は、住職に挨拶に行った。

 すると、洋介の父親の同級生の住職は、何を勘違いしたのか、洋介が結婚したと思い込み大喜びしている。しかし、そうではないことがわかると、今の喜びを返してくれと冗談を言い。もうすぐしたら例のお方がお見えになると言う。いつもなら、あのお方は午後からお見えになるはずなのにと言っていた。

 そのことを聞いた洋介は、まさか青ちゃんの仕業なのか、気を使ったのか、まさかな、と思い。4人は洋介の両親が眠るお墓に向かい。洋介の右手には紙袋を持ち、左手にはバラの花束。サクラの右手には墓参り道具一式を持っている。

 4人は2分くらい墓地内を歩き。大泉家の墓の前に立つ4人は、墓の周りを見渡し、墓掃掃除が始まった。

 10分くらいで墓掃除が終わると。洋介はバラの花束を供え、紙袋から何かを取出し、それを供えた、その時だった。


 サクラの父親がスーツを着た4人組の男たちがこちらに向かって歩いてくるのに気づき、重々しい雰囲気をかもし出し、その中の1人に、何かオーラのようなものを感じ、今朝のニュースを思い出し。

「あれは、間違いない、福山総理だ。洋介君、あれを見てくれ!?」

 洋介は、ゆっくりと立ち上がり、サクラの父親の見る方を見た。しかし、その光景にまったく驚くこともなく、すぐそばまで来ている福山総理に向かって深々と頭を下げ。

 福山総理とSP3名が、洋介の目の前に来ると立ち止まり。洋介は、福山総理の前に一歩前に出た。

「福山総理、あの時は大変申し訳ないことを言い、本当に申し訳ありませんでした」

 洋介は、また深々と頭を下げ。

「あの時の私は、冷静になれずにいました。あれは、福ちゃん、福山総理のせいではありません……」

「いや、私があんなお願いさえしなければ……本当に申し訳なかった……」

 今度は、福山総理まで深々と頭を下げ。

「今朝、不思議な夢を見た。大ちゃんが私に向かって、息子に会ってくれないかと……私は、勝手ながら洋介君のことをずっと陰から見守っていた。本当に申し訳なかった……」

「ですから、あれは、福ちゃんのせいではありません。その証拠をお見せします」

 洋介は、お墓に供えていた物を福山総理に手渡すと。福山総理はそれを見て驚き、涙を流している。

「……これは、幻のディズニーのセルが……」

「10年かかりました。これが、私の答えです」


 サクラたちは困惑の渦の中、福山総理と洋介が知り合い、それもただの知り合いではない。サクラの父親はこの状況をチャンスと考え、もしかしたら魔法を広めることができるかもしれないと思い、洋介の隣に並び。

「福山総理、私は松本と申します。初対面で大変申し訳ありませんが、この世界の存亡にかかわるお話があります。どうか洋介君の話を聞いていただけませんか!?」

 サクラの父親は、深々と頭を下げ。その光景に福山総理は、この人はただ者のではないと悟り。

 この光景に洋介は、突然何を言い出すんだこの人はと思い、困惑気味だが。そんなつもりはまったくなく、そのことを一切考えていなかった訳ではないが、それとこれとは違うと思っていた。

 すると、福山総理は、私の罪は消えないけど、やっとこれで恩を少しでも返せる。洋介君の頼みとあれば断る理由などない、と思い。今日の午後2時までなら時間を開けると言い、快く承諾した。


 このあと、洋介たち5人は墓参りを済ませ、住職に挨拶をし、各々車に乗り込み。洋介の車の後をついて行く、福山総理を乗せた車。どうやら行先は洋介の自宅。


 洋介は、福山総理へ手紙を書き、あの幻のディズニーのセルが入れた紙袋を住職に渡し、福山総理に渡してもらう予定だった。


 手紙の内容は、10年前の件の謝罪文と。あの件はこれで終わりにしませんか。10年の前に止まった時計を動かし、あの時のように店に遊びに来てください。私は待っています。手紙にはそう書かれていた。

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