突然すぎる再会(6)

 洋介は、2つ目の木箱を抱え、駐車場へ向かいながら呟いた。

「これで、あとは青ちゃんがどう出るか。やっぱり1人暮らしの方がきらくでいい、さくらちゃんには感謝している」


 洋介は、あることを思いつき。トラックの荷台に木箱をそっと隠し、2人には木箱のことを話さず、何食わぬ顔で運転席に座り、店へと戻って行った。


 洋介たちが店に戻ると、車内の時計は午後5時30分を過ぎ。外はまだ明るく、搬入口では従業員たちが、美術館以外では滅多にお目にかかれない国宝級のお宝2000万円に目がくらみ、一目見たいと今か今かと待っている。

 そのことを洋介が知ったら嘆き悲しみ、ロマンはどうした夢はどこへ行ったと言うに違いない。

 洋介は、トラックをバックで搬入口に入れようといつも以上に辺りを気にし。トラックを搬入口につけると、急いでトラックから降り浮遊魔法を使い、誰にも気づかれないようにあっという間に家の鍵を開け、あの木箱を書斎のテーブルに置き、家の鍵はポケットの中に戻り。何食わぬ顔でトラックの荷台を覆っていたブルーシートのロープを解き始めいる。

 しかし、どういう訳か、査定品降ろしに浮遊魔法を使わない。予定では浮遊魔法を使い、従業員たちを驚かすはずだった。予定を忘れたのか、ずば抜けて記憶力がいいはずなのにどうして。もしかしたら、あの木箱のせいなのか。


 そんな中、サクラはちょっと困惑気味で洋介の様子を見ていた。洋ちゃんならきっとここで浮遊魔法を使うはずと、なんとなく思っていた。もしかしたら従業員たちもそう思っていたかもしれない。


 結局、洋介は査定品降ろしに浮遊魔法を使わず、国宝級のお宝、幻の金屏風を超慎重に荷台から降ろし、店内の保管倉庫に移動すると、超慎重に梱包を解き。洋介と島田主任は、再度傷がないか確かめ、問題はなく。従業員たちは、マスク越しに、これが2000万円か、と言いながら幻の金屏風を眺めている。

 この光景に洋介は、こいつら本当に鑑定士になる気があるのか、それとも私の指導が甘いのか。幻の金屏風を前にして、肩を落とし自分が情けなくなり、うつむいている。

 すると、従業員たちは目を輝かせ、これが本当に本物なのか、資料を見て比較して確認したり、疑問になるとこは議論したり、タブレットPCでネット検索したり。従業員たちは、従業員たちなりの鑑定をしている。

 この光景に洋介は、目頭を熱くさていると。従業員たちから、これが本物だという根拠を説明して欲しいと言い。その根拠を説明すると、さすが店長だとつい従業員たちは口を滑らし、いつものロマンと夢を語り始めると思い。慌てるように幻の金屏風を超慎重に特別保管倉庫にしまい始め。

 この幻の金屏風について説明や作者の想いについて、洋介は語ろうと思っていのにまた逃げられ。ロマンと夢はどうすると言いたいが、またいつものようにはぐらかせるので、いいかげん学習することにした。

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