突然すぎる再会(5)

 連ちゃんの蔵まるごと査定はすべて終わり。査定品をトラックに積もうとする洋介たちに依頼主が声をかけ、お昼はあの縁側で桜を見て食べてくださいと言う。

 昨日、依頼主はお寿司を御馳走すると言っていたが洋介は断っていた。この部屋にある柱時計は午前11時50分、振り子が壊れているが動いている。洋介たちはお言葉に甘えて、お昼をすましてから作業の続きをすることになった。

 サクラは、トラック中から3人分のお弁当を取りに行き、戻って来ると、縁側にはお茶が用意され。洋介たちは、縁側で桜を見ながらお弁当を広げ。なんか最近こんな光景が多いようなと、洋介は思いながら、相変わらず美味し過ぎるお弁当だと思い、サクラに感謝していた。


 なごやかな雰囲気の中、昼食が終わると、一気に緊張が走る。幻の金屏風の梱包に取りかかり、8日のクーリングオフ制度が慎重さ増し、絶対に傷つける訳にはいかない。梱包に30分かけ、家から持ち出すのに15分かかり、慎重に、慎重にトラックに積み込んだ。


 この時、浮遊魔法を使えば、あっという間に梱包が終わり、あっという間にトラックに積み込んだはず。そんなことなど洋介は一切考えなかった。

 一方、サクラはというと、魔法を使えばと頭をよぎる。しかし、これはこれでいいような気もすると思う。なぜこの感覚の現象になるのか。すべてはなれというものが関係する。


 依頼主たちがいなくても、浮遊魔法は結局使わず。2時間後には、すべての査定品をトラックに積み込み終わり。洋介たちは依頼主に挨拶をすると、依頼主は真剣な表情になり。洋介に、もう1つ見て欲しいものがあると言う。洋介は依頼主のあとをついて行き。サクラと島田主任は、先にトラックに乗り込んだ。


 依頼主は蔵の中入り、洋介は蔵の前で1分ほど待たされ。依頼主が蔵の中から出て来ると、洋介は呆然と立ち尽くしている。


 依頼主によると、なぜこんな木箱がここにあるのか、いつからここにあるのか。この木箱の存在を知ったのは昨日の午後。

 鍵を探したが見つからず。前回の依頼主が言っていた同じ木箱に似ている。試しにノコギリで切ってみた、まったく切れない、傷一つかない、歯が立たない。チェーンソーでも傷一つつかず、まったく歯が立たない。屋根裏部屋からも落としてみた、結果は同じ。中身が壊れた音もしない。

 あいつが言っていた同じ木箱に間違いない。だったらこんな木箱はいらないと思い、処分して欲しいと言う。


 洋介は困惑しながらも木箱を受け取り、ふと鍵穴に目が行き、冷静さを取り戻し、まさかと思った。鍵穴の紋章はサクラちゃんの木箱と同じもの。しかし、鍵穴の紋章だけは金色に輝いている。ということは、この木箱の持ち主は、そういうことなのか。

「わかりました。これは個人的に処分させていただきます。よろしいですか?」

「はい、よろしくお願いします……。すみません、私の友人にもお店のことを紹介してもよろしいでしょうか?」

「ありがとうございます。くれぐれもクーリングオフが過ぎてから買戻しは難しいので気をつけてください」


 このあと12日後に、前回の蔵まるごと査定品はクーリングオフもなく、島田主任の知り合いを通じて完売し。今回の蔵まるごと査定品もクーリングオフもなく、洋介の知り合いを通じて、あの幻の金屏風も売れ、完売した。

 しかし、2つ目の木箱を持ち帰ったせいで、洋介はこの売上UPを素直に喜べず、厄介なことに巻き込まれていく。そして、嘘も方便と自分に言い聞かせ、あの依頼主2人には、あの木箱は焼却処分したと言っていた。



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