謎の木箱(9)
依頼主は、査定総額1013万4718円に納得し。運転免許証を提示し、指定用紙に記入し。洋介は記入内容を確認すると、13万4718円は後日振込となり、用意していた現金1000万円が入ったカバンを乗せたトラックへ取りに行こうとした時だった。
突然依頼主が、もう1点だけ査定額0円でいいから、後日振込分もいらないから、どうしても引き取って欲しい物があると言う。その1点の品物に興味をもった洋介は、なんかワクワクし、とりあえずその品物を見ることになり。島田主任に、買取り品をトラックに積んでおくように指示し。洋介は、依頼主のあとをついて行き、蔵に前に案内されると。依頼主だけ蔵の中に入り、黒い箱のような物を抱えて蔵から出ると、地面に置き。これ、どう思いますと言う。
洋介は、黒い箱のような物に近づくと、黒く塗られた長方形の木箱のようで、鍵らしき穴のようなものがあり。見た目はわりと綺麗で劣化している様子もなく、新品と言った方がいいくらいに、どことなく輝いているようにも見える。これって日本製なのか、疑問に思いつつ、メジャーで測ると、横1メートル60センチ、幅50センチ、高さ20センチ。重さはというと、それなりに重いが。
「ご主人、これはいったい、なんですか?」
「実は、私にもわからないんですよ。とにかく不気味で奇妙な箱なんです」
「不気味で奇妙!? ですか? いったいどこが……」
依頼主によると、なぜこんな木箱がここにあるのか、いつからここにあるのか。この木箱の存在を知ったのは昨日の午後。
鍵を探したが見つからず。どうしても木箱の中身が知りたくなり、ノコギリで切ってみた。しかし、まったく切れない、傷一つかない、歯が立たない。知り合いからチェーンソーを借りても傷一つつかず、まったく歯が立たない。思い切って2階から落としてみた、結果は同じ。中身が壊れた音もしない、そもそも何も入っていないのか。
どう見ても木箱、この感触は木そのものなのにどうして壊れない。もしかしたら新素材なのか、そんなものがうちにある訳がない、そんな知り合いもいない。いったいこれはなんなのか、不気味だ、奇妙だ、こんな木箱はいらない。こんな怪しげな物は、うちには置いておけない。
洋介は、引き取って欲しい事情を知り、ますますワクワクしている。奇妙、不気味、いんじゃないの、これぞ魅惑のお宝というもの、私はこういうお宝を待っていたのか、これこそ堀出し物、まさに、ロマンと夢。
そう感じてしまった洋介は、快く引き取った。しかし、洋介は依頼主に確認した。もしこの木箱の鍵が開き、高価の品物が出てきたらどうしますか。
すると、依頼主は即答した。いりません、差し上げると。今回の1000万円で十分だと言った。
洋介は、この木箱の査定額は未知数として、査定額0円で引き取り、依頼主は喜び納得し、口頭だけで処理をした。もし「返せ」と言われても返す訳にはいかない。この時、洋介はなぜかそう思い。それに、あの依頼主なら、万が一にも「返せ」なんてことは言わないと思った。
洋介は、現金1000万円を依頼主に渡し、今回の出張買取りは終了した。
時刻は午後4時40分、トラックにすべての買取り品を積み終わり、あの木箱も荷台にちゃんと積んだ。
査定リストに載っていないあの木箱、島田主任は気になり、洋介に聞くと、「秘密のお宝だよ」と言われ。2人はトラックに乗り込み、洋介はエンジンをかけ。助手席では、島田主任があの木箱はなんなのか知りたくて洋介に聞が、「秘密のお宝」としか答えてくれない。そこで、しつこく追及すると、やっと洋介が口をわり依頼主のあの話をした。
すると、島田主任は、ロマンですね、夢ですね、と言い。想定外のお宝に巡り合えた気分の2人だった。
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