謎の木箱(4)

 翌日、月曜日。大泉リサイクルショップの開店と同時に、この店の電話が鳴り。島田主任が電話をとると、鳥肌が立ち、動揺しながらも保留ボタンを押し。

「店長! 電話です、ついにあれがきました、急いでください!?」

 その声が店内に響き渡り、店内で商品棚のレイアウト変更を思案していた洋介は、慌て急ぎ買取りカウンターに行き、電話を替わり、詳しく内容を聞いた。


 洋介が慌てるのも無理はない。あれとは、蔵鑑定のこと。それも、めったにない蔵まるごと査定。


 この依頼主は、神奈川県のとある旧家。1人娘が結婚をし、初孫が生まれ。これを機に、実家の蔵をリノベーションして、そこに住みたいと言ってきた。娘と孫と一緒に住めると喜ぶ両親。そして、同居している兄も歓迎し、蔵は妹に譲ることになった。しかし、リノベーション費用に2000万円かかる。そこで、現金1000万円はなんとか工面できたが、あと1000万円足らない。

 娘夫婦は、銀行から借りる予定をしていた。しかし、娘夫婦に借金をさせたくない両親はこの際だからと、蔵の品物に興味がない兄妹ということで蔵の品物をすべて売却すること決め。どこに査定を依頼するか悩んでいると、骨董品に詳しい知り合いから、洋介の店を進められ。明日、蔵をまるごと査定して欲しいと急ぎの電話だった。ただ、急ぎのため、買取金額を当日払いして欲しいとお願いされた洋介は、1つ返事でこの依頼を受けた。


 いったいどのくらいの大きさの蔵に、どれだけのお宝が眠っているのか全くわからないうえに、現金を用意しなければならない。店の金庫には、常時1000万円の現金を保管してある。先方には、当日払できる現金は1000万円と伝えてある。

 先方が必要な額は1000万円、ということで問題はない。ただ、総額1000万円以上の査定金額がでた場合は、買取りをどうするか先方に確認をしないとならない。それと、その逆の場合もある。査定総額0円、又は査定額0円の品物も存在するということ。こういった場合は、引き取れない場合と、一旦、こちらで引き取るが、処分対象となり、こんな言い方は大変失礼で申し訳ないが、ゴミとして処分されてしまう場合もある。


 2人は、どんなお宝に巡り合えるのか、掘り出し物があるのか、そのことで盛り上がっていた。


 島田主任は、2トントラックのガソリンをチェックし、ガソリンを満タンにすると。トラックを掃除し、ブルーシート、ロープ、クッション材に毛布と段ボール箱を準備し。タブレットPCと小型プリンタとデジカメ、こちらも準備OK。あとは、忘れてはいけないのが番号札、とりあえず1000品分を準備した。明日は、夢の蔵まるごと査定が待っている。

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