謎の木箱(2)

 大泉リサイクルショップでは、高級ブランド品から家具、食器、楽器、古着、家電、アウトドア用品、玩具、金券など、幅広いジャンルの中古品を買取り、販売を行っている、総合リサイクルショップ。

 もちろん骨董品も扱い、都外からも来客が多く、鑑定の依頼が殺到している。もはや中古ショップというよりは骨董屋に近い気もする。骨董品を鑑定するのは、洋介と島田主任。

 この店は、平屋だがわりと大きな店舗を構え。少し店舗を広げようか、洋介は迷っていた、売上は順調に伸びている。


 日々、従業員たちは鑑定士を目指しつつ、この店を盛り上げ。中には独立を、なんて思っているかはわからないが、もしそんな者が現れたら、洋介は歓迎をすると言っている。但し、強力なライバルとしてお客様を第一に考え、かかって来なさいと、強気の姿勢をかもしだしていた。もしかしたら、本当に飼い主に手を噛まれるかも。しかし、この面子なら、そのようなことはないとは思うが、わからない。


 午前9時50分、この店の前の駐車場に車が1台駐車し。男性が1人、車から降り、右手には紙袋を持ち、急ぎ店の前に来ると、紙袋を覗き込み。

「ごめんな、鉄人……どうしても金が要る。なんとか仕事を探さないと……」

 どこか、今生の別れのような雰囲気をかもしだし、その男性は開店を待ち、他に客は誰もいない。


 午前10時、大泉リサイクルショップが開店すると、1番乗りのあの男性は急ぎ買取りカウンターへ行き。

「あのー……」

「買取りですか?」

「……」

 男性は紙袋をまた覗き込み。ごめんな、そう一言つぶやき。紙袋の中から箱付のおもちゃを1つ取り出し。

「すみません。この鉄人28号の買取りをお願いします。それと、こんなことをお願いするのは筋違いだとわかっています、大変失礼なこともわかっています、無理を承知でお願いします。こいつを大切にしてくれる人に売っていただけませんか?」

 突然の申し出に関わらず、島田主任は何かを察し。

「わかりました。なんとかしましょう。でも、本当にいいんですか? 売っても? これから先、値があがりますよ!?」

「……実は、先月リストラされて、中々雇ってくれるところがなくって、子供もいるし……」

「急ぎ、と言うことですね。そういうことなら仕方ないですね、わかりました。査定しますので、この番号札をお持ちになり、店内で少々お待ちください」


 男性は、番号札1番を手にし、玩具売り場へ行き。島田主任は、査定品を持って奥の査定室に入り。真っ白な手袋をすると、査定品をテーブルに置き、箱を開け査定を開始した。

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