第7話 京一郎くん、発見。
京一郎くんのお母さんと一緒に探していると、ふと、幸雄くんが僕に気づいたようで……小声で僕の名前を呼んだ。
「京一郎くん?!」
そう言って、少ししてから幸雄くんが言う。
「おい、裕太くん、そこに京一郎くんがいるぞ?!」
「は?ーー冗談やめろよ!いないじゃねーか?!」
裕太君は怒った口調で、幸雄くんに文句を言っている。
僕はここにいるのに……。
このやり取りも全部見てるのに……。
僕は幸雄くんを呼ぶようにそっと手招きした。
「おい、京一郎くん……どこに行くんだよ?待てよ!!」
必死になって僕を呼んでいる裕太くんを見つめて、僕もどうしたものか?と頭を抱える。
ーーそーだ。今やっと幸雄くんが僕に気づいてくれてるんだ。幸雄くんを僕のところに連れて行こう。
「京一郎くーん……京一郎くーん……」
京一郎を呼ぶ声だけが狭い室内を響き渡っている中、幸雄くんだけが、迷わず二階の寝室へと向かった。
ベットの下に僕はスルリと入る。
そこにいる僕の姿に、僕は何か変な感じがした。 なぜならば、不自然に目を見開き、僕をみているからだ。
ベットの下に入り込んだ僕のその姿を見て、幸雄くんもベットの下を覗いた。
「裕太くん、ここ、見てみて!!」
幸雄くんがベットの下を指さしている。
「なんだよ?」
裕太くんも不思議そうに、幸雄くんが指さしているベットの下を見ると、そこには……いた!京一郎くんが見つかった……。
「おばさん、いたよ!!京一郎くんがいたー!!」
大きな声で俺が言って、おばさんを呼んだ。
僕はずっと狭いベットの下にいた。
お母さんはベットの下を覗き込み、僕を見つけると突然泣き出した。
ーーなにか様子がおかしい。
目を見開き、こちらを見ているかのような僕の姿に、お母さんも驚いている様だ。
お母さんは、無理やり僕の体を引っ張り出そうかとも考えたかも知れないけど、危険だと思ったのだろうか?救急車を呼んだようだった。
救急車を呼んだ後で、お母さんはもう1本電話をかけた。
「もしもし、あなた。出張中に悪いんだけど、京一郎が大変なの!!すぐに帰ってきて!!」
どうやらお父さんに電話をかけていたみたいだ。
救急車が到着する。
「かくれんぼしてたら、ベットの下に無理やりかくれちゃったようで、様子がおかしいんです。なんとか出してあげて下さい」
必死な様子でお母さんが警察官に頭を下げている。
警察官二人がベッドを持ち上げ、もう一人が僕を引きずり出してくれる。
五分程度で、僕の体は警察官の手に寄って引きずり出された。
「こ……これは……」
警察官は僕の体を見て、不思議そうにしている。
僕も僕の体を見下ろして、首を傾げた。
ーーなんで、僕の体はこんな風になってるの?!
ーーどうして?!
僕自身が不思議に思っている事を、警察官たちも不思議がっているのかも知れなかった。
「この家にいたのは、あなたたちだけですか?」
「はい」
「おかしいなぁ」
警察官が、おかしいなぁ。と繰り返して首を傾げている。
それが不思議だった。
「おかしいって、あの……どーゆー事ですか?」
お母さんが警察官に聞いた。
「これを見てください」
警察官が指さした場所を見つめて、お母さんが言う。
ーーこの手形って……。
「息子は……京一郎は……なくなってるんですか?」
お母さんは怖くて聞けなかった言葉を、無理やりにと言った様子で聞く。
「それは医師の判断を待たないと言えませんので少しお待ちください」
救急隊員がお母さんの質問に答える。
僕の首には、僕の手形よりも一回り程度小さい手の跡が残っていた。
「こ……これって……?!」
お母さんも警察官の顔を不思議そうに見た。
「一応、二人の手形は取らせて頂きますが、たぶん、ここにいる子供たちの手形ものではないでしょう?ーーだから、我々も不思議なんです」
僕はもう死んでいるのだと白衣をきたお医者さんが、お母さんに言った。
ーー僕はココにいるのに。
お母さんは声も立てずに、ハンカチで涙を拭った。
「ーーもしかして、あなたたちが……?!」
そう言いかけた言葉を飲み込む事で、精一杯だったのだろうか?
お母さんはただ悲鳴を上げるように、僕の名前をくり返し呼び続けた。
その後お母さんは貧血を起こしたのだろう。パタリと倒れた……。
それもそうだろう。
ただのかくれんぼが、こんな事になるなんてーー。
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