第4話 かくれんぼ
お母さんと圭くんが、1階に下りて行った後、僕と裕太くんも1階に下りて行く。
「お前のお母さんに失礼があったら困る」
裕太くんがそう言って僕を連れて行ったからだ。
遊ぶために家に呼んだのに、圭くんが来た途端、遊ぶどころじゃなくなってしまった。
せっかく、仲良く遊ぼうと思ってたのに……。
転校してきたばっかりの僕が言う事でもないが、僕は圭くんの事を大嫌いだと思った。
ふすま越しに、お母さんと圭くんの会話を盗み聞きしていると、圭くんの声がかすかに聞こえてくる。
「京一郎くんのお母さんだから言うけど、この家の前の住人の魂が、この家にまだ住んでいます。その魂が山本家の事を歓迎していないーー」
「そうなの?!それで?」
「このまま住み続けると、大変なことになるそうです」
「圭くんと言ったかしら?ーーあなたには前の住人の顔や言葉が分かるの?」
僕のお母さんが聞いている。
「はい。シッカリと見えています」
「そうなの?じゃーコッチに来てちょーだい」
僕のお母さんが玄関の方に圭くんを連れ出す。
「悪いわね、圭くん、あなたはもー帰ってちょーだい」
お母さんの表情が、険しくなっている。
その表情のまま、お母さんは玄関先に塩を巻いた。
温厚なお母さんも、腹が立ったらしいのはあの顔を見れば、間違いなかった。
これまでの僕が見た事のない冷たい表情を浮かべていた。
「もう心配ないわ。二人で仲良く遊びなさい!」
お母さんが優しく笑った。
僕は裕太くんの顔を見てみる。
「これで安心して遊べる!じゃ京一郎、遊ぼーぜ!」
「何して遊ぶ?」
「そーだ。もう一人圭以外のヤツを誘いに行こーぜ!!それで三人で、かくれんぼしようぜ!」
「誰かいるの?」
「あぁ」
裕太くんは自信ありげに笑った。
外に出て、僕は裕太くんと一緒に遊べる友達を探しに行く。
※
外に出て歩き始めてから、少しして裕太くんが言った。
「これから遊びに誘おうとしてる子、人見知りで普段は静かな子なんだ。でも俺がいれば、明るく遊んでくれると思うんだけど、そう言うヤツでもいいか?」
裕太くんが遠慮してる様な口調で言った。
「僕はぜんぜんいいよ。圭くんみたいに、見えないモノが見える人じゃないよね?」
不安になって僕は聞いた。
「うーん。圭みたいに人には言わないけど、見える事は見えるらしい。でも、圭とはまったく違う人種だから、安心してくれ!」
裕太くんが、そう言うなら大丈夫だろう。
「その子、何て名前なの?」
「西城幸雄(さいじょうゆきお)って言うヤツなんだ」
「会うのが楽しみだな」
「ついたぞ」
そう言ったと思ったら裕太くんが玄関のインターフォンを鳴らす。
扉の向こう側でバタバタと音がして、ドアが開いた。
「おう!」
裕太くんがそう声をかける。
「裕太、どうしたの?」
「幸雄、今さーーヒマしてないか?今から、俺ら二人で遊ぶとこなんだけど、お前も入れよ!」
話しの流れを聞いていて、二人の仲の良さを感じていると、裕太くんが僕の事を紹介してくれた。
「あぁ、コイツは今日転校してきたばかりの山本京一郎って言うんだ。仲良くしてやってくれ!」
「えと、西城幸雄です。仲良くしてください」
今にも消えてしまいそうな細い声で、幸雄くんは僕に手を差し出した。
僕も自己紹介をしながら、幸雄くんの手を握る。
「もちろん、加わるだろう?」
裕太くんが突然、話しを元に戻した。
「うん」
明るい顔をして、幸雄くんが参加してくれる事になった。
「僕の家でいいんだよね?」
「うん」
こうして再び、僕の家に戻る事になった。
「かくれんぼしようぜ!」
ジャンケンをして負けた方が鬼、それ以外は隠れると言う事で決まった。
そうして、鬼は裕太くんに決まった。
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