第4話 かくれんぼ

 お母さんと圭くんが、1階に下りて行った後、僕と裕太くんも1階に下りて行く。


「お前のお母さんに失礼があったら困る」


 裕太くんがそう言って僕を連れて行ったからだ。

 遊ぶために家に呼んだのに、圭くんが来た途端、遊ぶどころじゃなくなってしまった。

 せっかく、仲良く遊ぼうと思ってたのに……。


 転校してきたばっかりの僕が言う事でもないが、僕は圭くんの事を大嫌いだと思った。


 ふすま越しに、お母さんと圭くんの会話を盗み聞きしていると、圭くんの声がかすかに聞こえてくる。


「京一郎くんのお母さんだから言うけど、この家の前の住人の魂が、この家にまだ住んでいます。その魂が山本家の事を歓迎していないーー」


「そうなの?!それで?」


「このまま住み続けると、大変なことになるそうです」


「圭くんと言ったかしら?ーーあなたには前の住人の顔や言葉が分かるの?」


 僕のお母さんが聞いている。


「はい。シッカリと見えています」


「そうなの?じゃーコッチに来てちょーだい」


 僕のお母さんが玄関の方に圭くんを連れ出す。


「悪いわね、圭くん、あなたはもー帰ってちょーだい」


 お母さんの表情が、険しくなっている。

 その表情のまま、お母さんは玄関先に塩を巻いた。

 温厚なお母さんも、腹が立ったらしいのはあの顔を見れば、間違いなかった。

 これまでの僕が見た事のない冷たい表情を浮かべていた。


「もう心配ないわ。二人で仲良く遊びなさい!」


 お母さんが優しく笑った。

 僕は裕太くんの顔を見てみる。


「これで安心して遊べる!じゃ京一郎、遊ぼーぜ!」


「何して遊ぶ?」


「そーだ。もう一人圭以外のヤツを誘いに行こーぜ!!それで三人で、かくれんぼしようぜ!」


「誰かいるの?」


「あぁ」


 裕太くんは自信ありげに笑った。

 外に出て、僕は裕太くんと一緒に遊べる友達を探しに行く。



 外に出て歩き始めてから、少しして裕太くんが言った。


「これから遊びに誘おうとしてる子、人見知りで普段は静かな子なんだ。でも俺がいれば、明るく遊んでくれると思うんだけど、そう言うヤツでもいいか?」


 裕太くんが遠慮してる様な口調で言った。


「僕はぜんぜんいいよ。圭くんみたいに、見えないモノが見える人じゃないよね?」


 不安になって僕は聞いた。


「うーん。圭みたいに人には言わないけど、見える事は見えるらしい。でも、圭とはまったく違う人種だから、安心してくれ!」


 裕太くんが、そう言うなら大丈夫だろう。


「その子、何て名前なの?」


「西城幸雄(さいじょうゆきお)って言うヤツなんだ」


「会うのが楽しみだな」


「ついたぞ」


 そう言ったと思ったら裕太くんが玄関のインターフォンを鳴らす。

 扉の向こう側でバタバタと音がして、ドアが開いた。


「おう!」


 裕太くんがそう声をかける。


「裕太、どうしたの?」


「幸雄、今さーーヒマしてないか?今から、俺ら二人で遊ぶとこなんだけど、お前も入れよ!」


 話しの流れを聞いていて、二人の仲の良さを感じていると、裕太くんが僕の事を紹介してくれた。


「あぁ、コイツは今日転校してきたばかりの山本京一郎って言うんだ。仲良くしてやってくれ!」


「えと、西城幸雄です。仲良くしてください」


 今にも消えてしまいそうな細い声で、幸雄くんは僕に手を差し出した。

 僕も自己紹介をしながら、幸雄くんの手を握る。


「もちろん、加わるだろう?」


 裕太くんが突然、話しを元に戻した。


「うん」


 明るい顔をして、幸雄くんが参加してくれる事になった。


「僕の家でいいんだよね?」


「うん」


 こうして再び、僕の家に戻る事になった。


「かくれんぼしようぜ!」


 ジャンケンをして負けた方が鬼、それ以外は隠れると言う事で決まった。

 そうして、鬼は裕太くんに決まった。






 


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