第2話 見える少年

 僕にとっては引っ越し後、初めての学校だ。

 ドキドキする。

 僕はランドセルを抱え、お母さんと一緒に家を出た。すごく緊張する。

 昔から方向音痴な僕は、学校までの道を覚えられるだろうか?


「ついたわよ!京一郎、お家までの道のりは覚えられた?」


 お母さんがそう聞いてくる。


「わかんない。緊張してる間についちゃったから」


「それじゃ住所を言って、お友達に教えてもらいなさい」


「分かった」


 緊張してガチガチの顔で、僕は校内に入って行く。


 ーー僕に、友達が出来るだろうか?


 教室まで行くと少しの間、廊下で待たされた。


 ※


「今日からこのクラスに転校生がくる。みんな、仲良くするように…」


 先生が大きな声でそう言っている声が、廊下の端まで響き渡っているように思えた。

 心臓のドキドキする音が、全身から聞こえてくるくらい、僕は緊張している。


「山本、入ってこい」


 先生に呼ばれ、僕は教室に入った。


「は…はじめまして」


 声が裏返ってしまい、僕は慌てて軽く咳をして、僕は改めて挨拶をする。


「は…初めまして。僕は、山本京一郎と言います。これから仲良くして下さい」


 顔が熱い。

 緊張しすぎて、赤面しているのが僕にも分かった。


「ーー京一郎、お前、顔が真っ赤だぞー!!」


 名前も知らないクラスメートが、僕にチャチャを入れる。

 その言葉で、僕の緊張は再びマックスになる。


 そして、授業が始まる。

 僕のクラスの担任は男の先生のようだ。


 授業の内容など、まったく聞こえてこないまま、僕の初めての授業が終わる。


 ※


 休み時間になると、僕の周りには、クラスメートが集まってくる。

 転校生が珍しいのだろう。


「俺は笹原裕太って言うんだ。よろしくな!」


 裕太と名乗った少年は、筋肉質なのか?随分とガタイがいい。けど、優しい表情で僕に笑いかけてくれる。

 二人で握手をした時にその笑顔を見て、僕の緊張しすぎて疲れた心が、裕太くんのその笑顔でほぐされた様な気がした。


「ーーなぁなぁ、お前どこに住んでんの?」


 後ろからそんな声が聞こえてきた。


「僕は…僕の家は…」


 どう説明したらいいのか?分からず、俯いて困っていると、裕太と言う少年が言った。


「ーー京一郎が困ってるだろ?」


 僕が困ってるのを察知してくれたようだ。


「裕太くん、僕、家までの帰り道が分からないんだ。住所はわかるんだ。帰り、教えてくれないかな?ーーついでに僕んちで遊ぼうよ」


「いいねいいね。そしたら、もう一人くらい呼んで遊ぼうぜ!」


 裕太くんと僕は約束をした。

 もう一人は誰が来るんだろう?


「自分も混ぜて下さい」


 自分の事を自分と言った少年は栗原圭というらしい。

 少し暗い感じがする。


「お前もいくのか?」


 裕太くんが聞くと、暗い印象を受けるその人は、うん、と小さく頷いた。


「君は?」


「栗原圭って言います。よろしく」


 僕は圭くんとも遊ぶ約束をした。

 突然、僕の腕を裕太くんが掴んで、窓際に連れて行こうとする。


「裕太くん、どうしたの?」


「お前の為に言っておく。アイツとはあまり関わらない方がいい」


 さっきまでとは違う顔つきで、裕太くんが言った。


「アイツって?」


「栗原圭だ。アイツには、他の人に見えないモノがみえるらしいんだ」


「他の人には見えないモノ?」


「いわゆる、幽霊というヤツだ。気をつけろ!」


 ーー幽霊、か?


「裕太くん、そう言うの信じてるの?」


「俺は信じてないんだけど、アイツが言うと不気味なんだよ」


 その日は、裕太くんと圭くんで遊ぶことになったが、圭くんの事、僕も少し気をつけた方がいいのかも知れない。

 裕太くんが、あんなにも真剣に教えてくれたんだから。


「いいか、アイツに何を言われても気にするなよ」


 改めて裕太くんが僕にそう言ってくれた。


「うん。わかった。ありがとう」


 いきなり友達が出来たみたいで、僕は嬉しかった。






 










 

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