第21話 高笑い

「フッフッフッ…。王さまスライムは魔法に対する絶対防御があるから魔法効果を付与された武器も効果がないんだ。ということは、むしろサリバンやムトゥの宝具の方が王さまスライムを倒すのに適しているといえるね。」


アルの台詞にヴァンは驚愕する。


『アルが怒らせたせいで、みんなが逃げ惑っている件は置いておいて。魔法に対する絶対防御って反則でしょ…。どうやって倒すの?魔法なしで鋼鉄のように硬い核を壊すのはかなり困難だよね。』


アルは腕組をしながら自信満々に続ける。


「やっぱ、“斬鉄剣”や“金属斬り”とかの特技でひたすら攻撃し続けるのが一番有効だと思うんだよね。…おっ!!!王さまスライムもそろそろ疲れてきたな。良い感じでみんなに気を取られているし、そろそろチャンスだなッ!!!よ~しッ!いくぞ~ッ!」


アルは目の前に魔法陣を展開し始める。


…ディバイン・シールド(光魔法)…

…ディバイン・アーマー(光魔法)…

…ミラージュ・ステルス(光魔法)


そして、目に前に光のシールドを張り、光の鎧を身に纏うと、姿を消して急降下していく。


アルの姿は一筋の光となり、一直線に王さまスライムに向かっていった。



(うぉぉぉぉぉぉッ!食らえッ!特技―クラッシュ・バスター―ッ!)


“天叢雲”から巨大な“つるはし”に装備を変更していたアルは、王さまスライムの核に“つるはし”を勢い良く振り下ろした。


!!!バキッ!!!


加速度と重力を最大限利用した一撃は、王さまスライムの核を深く傷つけた。


“ピャ…ピャ…ピャ…”


王さまスライムは小さく萎んでいき、握りこぶし大の大きさになって動かなくなった。


“プルプル…プルプル…プルプル…”

……………………………………


なんと 王さまスライムが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!


アルは、笑顔で王さまスライムに近づくと無言で”つるはし”を振り上げた。


「殺し合いをしておいて、負けたら“仲間にしてください”って虫が良すぎるだろ?ということで、経験値とドロップは貰うぜッ!ハッハッハ~♪ドロップは何かな~♪」


“プルプル…プルプル…プルプル…”

……………………………………


王さまスライムは、おずおずと体から銀色の胸当てを吐き出した。


・王さま鋼鉄スライムの胸当て………攻撃魔法に対する絶対防御効果を持つ世界に一つしか存在しない幻の胸当て。


“ピャ(お代官様)。ピャピャピャ(ここは、どうかおひとつよろしくお願いします)。”


「………。」


アルは右手を前に出して、魔法陣を展開し始めた。


…ヒール・ライト(光魔法)…


王さまスライムは光に包まれた。


そして、アルと王さまスライムは握手をすべくお互いに手(触手)を差し出す。


「ハッハッハ~。越後屋、お主も悪よのう。」


“ピャ(いえいえ)、ピャピャピャ(お代官様には敵いません)。”


そして、固く握手を交わした。


「“ハ~ハッハッハッハッハァァァッ!(ピャピャピャピャピャッ!)ハ~ハッハッハッハッハァァァッ!(ピャピャピャピャピャッ!)ハ~ハッハッハッハッハァァァッ!(ピャピャピャピャピャッ!)”」


アルと王さまスライムの高笑いが、狭い空間に長く響き渡った。


そのやり取りをみていた仲間達は、驚きのあまり言葉を失っていた。


「『≪≪≪………………。≫≫≫』」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る