第16話 断るッ!

ヴァンとザックの無事を確認したアルは、テスラに話しかける。


「んで、試練に合格したんだろ?もとの場所に戻してくれよ。」


テスラ達は、静かにアルの前に跪いた。


≪主様☆私どももお連れください☆≫


アルは目を見開いて答える。


「断るッ!!!」


テスラは唖然とした表情で理由を尋ねる。


≪なぜでございますか?☆≫


アルは目を閉じ語り始める。


「まず、お前らの格好が恥ずかしい。自分の姿を見てみろ。上半身裸の男にぴっちりスーツの腐女子、そして極めつけは…謎のピエロだ…。お前らに“主様”と呼ばれて後ろから付いて来られるのを想像したら、…残念ながら…“ナシ”と判断せざるを得ない。そもそも、いきなり拉致しておいて“試練を受けろ”だなんて頭のおかしいことを言うヤツは信用できない。最後に、お前らの生活費はどうするんだ?お前らの明らかに金持って無いよな。扶養家族などいらん。お前らは戦闘力が高いから、俺達に付いてこなくても良い就職先があるだろう。今回はご縁がなかったということで…。」


ムトゥが話に割って入る。


≪おいッ!小ぞ…お坊ちゃんッ!オレ達は真の主様が現れるまで、ここで封印されている存在なんだ…です。封印を解いておいてホッポリ出すなんて無責任だ…です。それに、オレ達は空間使いで役に立つ…です。そもそも、オレ達を従者にするために戦争が起きるほどなんだ…です。だから、意地悪言わねぇで、連れていってくれ…です。≫


アルは、営業スマイルをしながら首を振った。


「意地悪といわれましても、当方といたしましても厳正な選考を重ねまして、誠に残念ながら今回はご期待に添えない結果となりました。 せっかくご試練いただいたにもかかわらず、誠に申し訳ございません。口頭で大変失礼とは存じますが、何卒ご了承くださいますようお願いいたします。 皆様方の今後益々のご活躍をお祈り申し上げます。」


びっくりするほどの塩対応にヴァンは笑いだした。


『アハハハ♪確かに恥ずかしいよね~♪君達も、掟や決まりに囚われすぎてるんじゃないの?もう封印は完全に解かれたんだよね?これは、きっと自由に生きろってことだと思うよ♪封印の民だとか、くだらない”しがらみ”に縛られていないで好きなことをしてみれば~?僕達は、我慢をするのをやめたんだ♪自分のしたいことをする…例え苦難の道になったとしてもね♪押し付けられてする我慢はもうたくさんなんだ♪』


テスラとムトゥとサリバンは、雷を受けたかのような衝撃を受けていた。


≪掟や決まりに囚われている私達が恥ずかしい…?☆…確かに…☆…でも…☆≫


≪例え苦難の道になったとしても、自分のしたいことをする…だと…!?そんな生き方があるのか…!?できるのか…?≫


≪自由に…イケメンウォッチング…じゅるり…。≫


サリバンだけは、意味を大きく履き違えていた。

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