第9話 新たな武器

アルは、ウキウキしながらミノタウロスの死体が宝箱になるのを待っていた。


しばらくすると、死体がダンジョンに吸収され宝箱が現れた。


「さて、ボスドロップは何かな?」


・魔弾銃・・・込めた魔力を打ち出すことができる。


宝箱から“魔弾銃”を取り出すと、アルは満面の笑みを浮かべてザックに手渡した。


「やったなッ!これでザックはコスパの良い攻撃ができるなッ!」


ザックは“魔弾銃”を注意深く観察したあと、試し撃ちを始めた。


「そうですね。“魔弾銃”と“課金銃”を組み合わせたら、相当な威力が出せそうですね。」


血走った目をしたアルがザックに詰め寄る。


「“課金”や“課金銃”は、ここぞというときだけだぞッ!普段使いするなよッ!商人なんだから、それくらいの計算はできるだろ?」


ザックは、詰め寄るアルをかわしながら魔弾銃を大切そうに腰のホルダーに収納すると悪魔の死体に目を向けた。


「ところで、悪魔達の所持品で使えるものはありましたか?」


アルは、収納ペンダントから一冊の本を取り出してザックに見せる。


「俺が装備できない闇系統の武具ばっかだったけど…じゃ~ん♪これは役に立ちそうだ

ぜッ!」


・特技指南書「ウイングブレード」・・・自分の翼を硬化させて刃のように扱うことができる。


「これはアル様の光の翼に使えそうですね…。」


苦笑いのザックの視線に気づいたアルがジト目でザックに抗議する。


「ザック。俺が光の翼で敵を切り刻んでいる姿を想像したろ?」


ザックは両手を振って否定する。


「いえいえ。以前の貴公子風のアル様よりも、今のイキイキしておられるアル様の方が素晴らしいと思っていただけですよ。ねぇ、サブスク?」


サブスクも同意するかのように元気よく鳴いた。


『ゼニィィィィィィィィッ!』


アルは、不満そうな顔をしながら腕を組んだ。


「お前らってなんか嘘くさいんだよなぁ。」


『おいおい、戻ってくるのが遅ぇと思ったら、クソガキとメガネとトカゲに殺られてたのかよ。』


奥から筋肉質の悪魔がやってきた。


(角二本にコウモリの翼…。男爵級か…。マズイな…。)


「ザック。本気出すからサブスクと逃げてくれるか?」


真剣な顔になったザックは即座に頷くとサブスクに乗り、引き返す準備を始めた。


「へぇ~。以外に紳士なんだね。攻撃せずに待っていてくれたの?」


悪魔は、イラついた様子で握りこぶしをつくりながら声を張り上げる。


『よく言うぜッ!逃げたヤツを追ったタイミングで逃げたヤツごと攻撃しようとしてやがったくせによッ!てめぇ、光魔法使いだろ?光魔法使いっていったら正義面したヤツって相場が決まってんのによぉッ!おめぇみてなヤツは初めて見たぜッ!』


(光魔法使いとバレてるし、筋肉バカかと思いきや意外と思慮深いタイプだな。予想以上に厄介だな。)


「誉め言葉と受けてとっておくぜっとッ!」


アルは、魔法陣を展開しながら悪魔から距離をとる。


…ディバイン・アロー(光魔法)…


魔法陣から光輝く矢が次々と生み出され、射出されていく。


『おいおい。なんだよ、その貧弱な攻撃は?』


…ダーク・フォース(闇魔法)…


ディバイン・アローを闇のオーラで掻き消しながら、悪魔が猛スピードで接近してくる。


「これならどうだッ!」


悪魔に向けて魔法陣を展開する。


…レイ(光魔法)…


魔法陣からまばゆい光線が放出される。


『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!効かねぇなぁぁぁぁぁッ!』


光線をものともせず突進してきた悪魔が至近距離に接近すると、闇のオーラを纏った拳を振り上げた。


『ウラァッ!特技―マッハ・ナックル―!』


高速で振り下ろされた拳がアルの顔面にヒットした瞬間、アルの姿が飛散した。


…ミラージュ・アバター(光魔法)…


『なにぃぃぃッ!』


悪魔は、渾身の一撃が空振りになったことにより体勢を崩した。


「引っ掛かったなッ!」


…シャイニングフォース(光魔法)…


悪魔が体勢を崩した隙に、光魔法で生み出した光のオーラを変化させると、光の翼を造り出した。


「ぶっつけ本番だけど、いくぞぉぉぉぉッ!特技―ウィング・ブレード―ッ!」


アルは舞を舞うように高速で横回転を繰り返し、光の翼を使い悪魔に斬りかかった。


『グググゥゥゥゥッ!グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!』


光の翼は悪魔の皮膚を切り裂き続ける。


「まだまだぁぁぁぁぁッ!」


(覚えたての特技だけど、これならいけるッ!)


アルが攻撃のスピードを上げて勝負をかけようとしたとき、悪魔の筋肉が肥大化し眼球全体が黒く変化した。


(深化できるのかよ!?男爵級かと思ったら子爵級かもしれないなッ!)


『てめぇぇぇぇぇぇッ!調子のってんじゃねぇぞごらぁぁぁぁッ!特技―マシンガン・ナックル―マシンガン・ナックル―マシンガン・ナックル―ッ!』


マシンガンの如く打ち出される拳がアルを襲った。


アルは、咄嗟に光の翼を盾にして攻撃を防ぐが光の翼と魔法障壁が耐えきれずに飛散していく。


「ぐぅぅぅッ!」


悪魔が腰をおとして正拳突きの構えをとり始めた。


『これでトドメだぁぁぁッ!ウラァァァァァッ!特技―暗黒正拳突き―ッ!』


悪魔は、右拳を真っ直ぐ前に突き出し、防御体勢のアルを突く。


(ぐぅぅぅッ!間に合えぇぇッ!)


…ディバイン・シールド(光魔法)…


「グハッ!」


シールドを展開したものの、激しい衝撃により突き飛ばされて壁に激突したアルは、状況を冷静に分析しながら回復魔法を自分にかけていく。


…ハイ・ヒーリング(光魔法)…


(グッ!何とか気絶せずにすんだな。問題はここからどうするかだ…。人間界のこんな初級ダンジョンに子爵級がいるなんて反則だろッ!ここは逃げるしかないか…無理だろうけどね。だったら、アイテム使いきってでも最後まで戦ってみるか…うん?…)


アルの目に、王冠を頭にのせてマントをはためかせながら空から降りてくる光の精霊の姿が映った。


『おい、悪魔…。僕のアルに酷いことしてくれたね…。覚悟はできてるか…?…アル…ごめんね♪ちょっと、寄り道してたら遅くなっちゃった♪あっ、これはお土産だよ♪』


・光の聖剣・・・光魔法の力を増幅してくれる聖なる剣。アンデッド、悪魔、闇系に特効。真の所持者になると魔法発動短縮、消費魔力半減効果追加。


・転移の指輪・・・登録した地点に転移できる指輪。短距離転移も可能。あらかじめ魔力を溜めておくことができる。使い捨てではない。


(ゲーム後半で手に入るチート武器きた~ッ!)

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