第8話 課金攻撃

サブスク(サブスクリプション・ドラゴン)の背中に乗りながら快適に攻略を進めていくと、奥に大きな扉がある空間にたどり着いた。


「アル様、この先はどうやらボス部屋のようですね。準備はいいですか?」


(ボス部屋には、低確率でエンペラークラスが出現するから念には念をいれておいた方がいいな。)


「サブスクは扉が閉まらないように、安全な位置から扉を押さえておいてくれッ!ザックは俺の後方支援を頼む。強いボスが出たらコストは気にしないで惜しまず使えよッ!くれぐれも弱いボスでは使うなよッ!」


「『はい(ゼニィ)ッ!』」


サブスクは尻尾を器用に使い、扉をゆっくりと開けた。


開いた扉の奥をそっと覗き込むと、闇のオーラを纏った執事風の老人がミノタウロスの死体の上に立っているのが見えた。


アルは小声でザックに耳打ちする。


「ザック…。当たりだ…。きっと、魔界から遠征に来ている悪魔だ…。しかも、通常ボスを倒した直後とみたッ。これはラッキーだぞッ。今コイツを倒したら、悪魔の経験値と持ち物とボスのドロップが全部手に入るぜッ。」


ザックは呆れ顔で腰に下げた銃を構える。


「魔界の悪魔とダンジョンで鉢合わせして、喜ぶのはアル様くらいですよ。油断しないでくださいね。いくら光魔法が悪魔に特効だからって…って、聞いてませんね…。援護するこっちの身にもなってくださいよ。」


アルは、魔法陣を展開しながら悪魔に向かって一直線に駆け出した。


…ディバイン・アロー(光魔法)…


アルが展開した魔法陣から光輝く矢が次々と生み出され、悪魔に向かって射出されていく。


突然、無数の光矢が飛んできた悪魔執事は驚きを隠せなかった。


『な、なにぃぃぃッ!ひ、光魔法だとぉぉぉぉぉぉぉぉッ!人間界に勇者が出現したなんて、聞いておらんぞぉぉぉぉッ!グギョォォォォォッォォ…………。』


悪魔執事は回避を試みるも、回避しきれずに被弾して体勢を崩したうえに大ダメージを受けた。


アルは隙を見逃さず大きく跳躍すると、収納ペンダントから鋼鉄の剣を取り出した。


「ビンゴだなッ!ディバイン・アローが効いたと言うことは間違いなく悪魔系ッ!じゃあ、遠慮なくいくぞッ!”特技―デーモン斬り―”」


鋼鉄の剣が輝き始めると、悪魔執事の脳天に無慈悲に振り下ろされる。


『させないわッ!―ダーク・キャノン(闇魔法)―』


声がした方向から闇の砲弾が飛んできた。


アルは気にせず”デーモン斬り”を放つと、悪魔執事を両断した。


『アギャァァァァ…。』


悪魔執事は光の炎に包まれ、やがて飛散していく。


一方、闇の砲弾はアルの魔法障壁に触れると蒸発するように消滅していた。


『あり得ない…。全属性の頂点の闇魔法の”ダーク・キャノン”が全く効いてない…?』


声のした方向をみると、1体の悪魔が驚愕の表情で立ち尽くしていた。


「悪魔がもう一匹いるとは儲けたなッ!」


アルが左手を掲げ、魔法陣を展開し始めた。


…ホーリー・レイン(光魔法)…


魔法陣は大きく拡がり、広範囲に聖なる雨が降り始めた。


『こ、これが…闇魔法の唯一の弱点、ひっ、光魔法!?か 、身体が溶けるぅ…。』


聖なる雨は、悪魔達の身体を浄化していく。


「コイツも悪魔で間違いないッ!ザック!とどめは任せたぜッ!」


ザックは銃を構え、悪魔に向けて狙いを定める。


「すいません。アル様は、良くも悪くも老若男女平等に接する方なので、”見た目”を老人にしたり女性にしたりしても、あまり意味がないんですよ。残念でしたね。それでは、さようなら。特技―課金銃【10000ゴルド】―」


チャリン…チャリン…チャリン…


ザックの放った弾(金貨)は、正確に悪魔の額を貫いた。


「ザァックゥゥゥゥッ!瀕死のヤツにコスパ悪い攻撃するんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!なんだよ、”課金銃”ってッ!”意味もなく課金するんじゃありません”って何度も言ってるだろッ!しかも、10万ゴルドって、稼ぐのにどんだけ苦労すると思ってんだッ!商人なんだから、もうちょっと計算しろよぉぉぉッ!」


「アハハ。アル様といると本当に退屈しませんねぇ。サブスク。」


『ゼニィィィィッ!』

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