第10話 エコロジー

光の精霊の雰囲気に悪魔は冷や汗をかいていた。


『この気配は…てめぇ精霊かッ!?なしにしに来やがったッ?』


光の精霊は悪魔を無視しながら、アルの傷を回復し始める。


『ずいぶん派手にやられたね♪まあ、これも貴重な経験と言うことで許してちょ♪お土産も気に入ったでしょ?』


回復したアルは、“光の聖剣”と“転移の指輪”を装備すると照れ臭そうに笑う。


「まぁな、豪華なお土産もあったし、子爵級と戦う貴重な経験もできたしなッ!助けに来てくれてありがとなッ!ヴァンッ!」


『おう♪』


アルと光の精霊-ヴァン-はハイタッチを決めた。


「アル様は、お土産があるとすぐに元気になりますからねぇ。ヴァン様、お久しぶりです。」


振り返ると、ザックが仲間を連れて戻って来ていた。


ヴァンがザックに手を振っていると、アルが震える指でザックが連れてきた仲間を指差す。


「ザ、ザックゥゥゥッ!金で仲間を連れてくるのはダメだって言ったじゃねぇかッ!ソイツらムチャクチャ時給高いんだぞッ!しかも、みんな無駄にイケメンじゃねぇかぁぁぁッ!」


ヴァンとザックは、顔を見合わせると呆れたように笑い合う。


「アハハ。緊急事態ですから仕方ありませんよ。それに、この中で一番お顔が整っているアル様には言われたくないと皆が思っていますよ。それよりも、悪魔が何やら叫んでますので、そろそろお相手してあげた方がよろしいのではないですか?」


視線を移すと、怒り狂った悪魔が巨大な魔法陣を展開していた。


『ウジ虫どもがぁぁぁぁぁッ!うじゃうじゃと煩わしいぃぃぃッ!まとめて滅びやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!』


…ダーク・クラスター(闇魔法)…


巨大な魔法陣から濃縮された闇エネルギーの塊が生み出された。


闇エネルギーの塊は、周囲のエネルギーを吸引しながら少しずつ速度を上げて向かってくる。


『僕らから見たら、ウジ虫はお前の方だよ。特技―フェアリー・ゲート―』


ヴァンは右手を前に出すと、異空間に繋がるゲートをつくり、迫っていた闇エネルギーの塊を異空間へ送り込んだ。


『く、空間系の特技ッ!?な、なんで、初級ダンジョンにフェーズ6オーバーがいるんだぁ?ひ、卑怯だぞッ!き、貴様ぁぁぁぁぁッ!』


後退りをしながら撤退しようとしていた悪魔の背後から声が聞こえた。


「早くお前を倒さねぇと、奴等の時給が雪だるま式に膨らむんだよッ!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!光の聖剣よッ!俺に力をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!あの悪魔を出来るだけ早く倒したいんだぁぁぁぁぁッ!」


―揺るぎない強固な意思を確認しました―


―アルフレッド・フェリクスを、光の聖剣の真の所持者として登録しました―


光の聖剣に荘厳な装飾が施されていく。


「豪華な装飾なんて要らねぇッ!見た目よりも性能とコスパだぁぁぁぁぁッ!」


―揺るぎない強固な意思を確認しました―


―性能とコスパを重視した進化を開始―


―完了、命名“天叢雲”―


光の聖剣“天叢雲”は、シンプルでシャープな日本刀の姿に変化した。


「性能とコスパを追求すれば、必然的に機能美が生まれるんだぜッ!だから、無駄な装飾は不必要ッ!いくぜッ!特技―デーモン斬り―」


アルは、“天叢雲”を横薙ぎに一閃すると悪魔の首を刎ね飛ばした。


『コスパ…?…な、何を言ってるんだ!?な、なんで俺はこんなガキに殺られてるんだ…?…魔族に伝わる古い言葉に、”光魔法使いは何よりも最優先で消せ”というのがあったがこういうことか…。ふははッ!じゃあ、てめぇを道連れにしてやるぜッ!特技―自爆散―』


首を刎ね飛ばされながらも悪魔は体内のエネルギーを増幅させ、風船のように膨らみ始めた。


『本当に往生際が悪いよ。大人しく死んで

よね。特技―フェアリー・サークル―』


ヴァンは両手を前に出し、風船のように膨らんだ悪魔を覆う光の輪を造り出した。


光の輪は、悪魔を巻き込みながら少しずつ小さくなり、やがて消滅した。


ヴァンは、アルに向かってVサインをしながら満面の笑みを送った。


『アルッ♪光の聖剣を進化させるなんて、スゴいじゃんッ♪』


アルもヴァンに向かってVサインをしながら満面の笑みを送る。


「おうッ!しかも、太陽光や斬りつけた相手のエネルギーを吸収して新たなエネルギーを生み出すエコロジー機能まで搭載しているぜぃッ!」

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