第5話 【ジークフリート視点】

「早く馬車を出せぇぇぇぇぇッ!」


(一体何がどうなっている!?バカな王女を騙して国を奪って、兄弟達の鼻を明かしてやろうとした筈なのに、なぜ僕が追い詰められているんだ!?しかも、よりによって、王女の婚約者が光魔法使いだと!?それも常時魔法障壁を展開できるほどの使い手であるうえに光の精霊まで使役しているだとぉ!?さらに、光の精霊は少なくともフェーズ5にまで進化していて、百の軍隊でないと太刀打ち出来ない。あの王城を軽々と破壊する姿はまるで天災…。…なにがッ!光魔法の素質があるだけの無能だぁ?騙しやがってぇぇぇッ!あの王女に関わるとロクなことがないッ!奴等に見つかる前に脱出しなくてはッ!)


事態を把握したジークフリートは、急いで母国へ向かって馬車を走らせた。


馬車に乗って数日が経過した頃、ふと外の景色を見ようと視線を変えると、光の精霊がニヤニヤしながら、こちらを眺めている姿が視界に入った。


『こ~んにちわ~♪やっと気付いたね♪気付いてくれなかったらどうしようかと思っちゃった♪ああっ、そんなに怯えなくとも大丈夫ッ!君には感謝しているんだよッ!君のおかげでアルが解放されたからね♪あの王国の連中ってさ、本当にバカだよね♪自分達の切り札を自分から捨てちゃってさ♪君もそう思うだろ?』


ジークフリートは、冷や汗をかきながら質問する。


「では、許してくださるのですか?」


光の精霊は、笑顔を崩さずに答える。


『”バカ王女を唆して婚約破棄させたこと”は許してあげる。でも、”アルを殺そうとしたこと”は絶対に許さない。』


ジークフリートは必死で土下座をした。


「そ、そんなッ!な、何でもいたしますッ!い、命だけは助けてくださいッ!もう、アルフレッド様の害になるような真似はいたしませんッ!だから、どうかッ!命ばかりはッ!」


光の精霊はジークフリートの前に立つとガシガシと頭皮を踏みつけた。


『じゃあ、君の国の宝物庫にある“光の聖剣”と“転移の指輪”を僕に返してちょうだい♪あれがあると、僕もアルも今よりもっと強くなるからさ♪まあ、もともと僕のだから、わざわざ君にお願いなんてしないで自分で取りに行けばいいんだけど、君への罰には丁度良いからね♪正直に“光の精霊に脅された”って言ってもいいし、黙って宝物庫から盗んできてもいいよ。どちらにしても、君の立場は極端に悪くなるけどね♪じゃあ、後で取りに行くからなる早で用意しておいてね♪バイバ~イ♪あ~ッ!変なことを考えない方が良いよ。君も感づいているかもしれないけど、僕はフェーズ7まできてるから国を潰す気でこないと勝てないからね。しかも、アルと組んだらフェーズ8以上になるから、君の国レベルでは100%敵わないよ♪』


ジークフリートは驚愕のあまり失禁した。


「フェ、フェーズ8ぃぃぃッ!?りゅ、龍族と同じ厄災クラス以上…!?そ、そんな怪物に自分から喧嘩を売ったことが知れたら、僕の人生は終わりだぁぁぁぁぁッ!」


『逃げても無駄だよ。約束を破った方が酷い目に合うからね♪喧嘩を売る相手を間違えたね♪これに懲りたらもう少し謙虚に生きた方が良いよ。世の中には上には上がいるんだよ♪もちろん、この僕にだって敵わない相手がいるんだからさ♪』

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