魔王軍四天王のアイチ
治療を終えたカレンと悪事の証拠を入手したアイリスの父は、領主邸から広場へと急ぐ。その道中、街の様子がおかしいことに気付いた。
「魔族が出たー!!」
「領主様が魔族だったんだ!」
「しかも、魔王軍の四天王だってよ」
「いやぁああああ!! 死にたくないっ!」
街の人々は魔王軍四天王が現れたことによって、混乱していた。
「「魔王軍の四天王!?」」
カレンとアイリスの父は仰天する。
まさか魔王軍の四天王が正体を隠して、領主に成り代わっているとは誰が予想できただろうか。そして一人と一匹は、はっと気付いた。領主の正体が魔王軍四天王なら、先に広場へ向かったアイリスは――
「いま、白銀の天使様が応戦しているらしいぞ!」
「なんだって、あの美しい白銀の天使様が!?」
「俺、観に行こうかな……」
「俺も……」
予想していた通り、アイリスと魔王軍四天王の戦いは始まっていた。
「やばいですわ!! アイリスが……死んでしまいますわ!」
「ルビーがあるから、そう簡単には死なない……はず。 あぁ……心配になってきたっ! 無事でいてくれよ……!!」
カレンとアイリスの父がアイリスの心配をしていると、住宅街の裏路地から奇妙な格好で、様子のおかしい男が現れた。その姿は、全身を包帯でグルグル巻きにしている兵士長である。カレンと対峙した男であるが、以前の姿とまったく異なるので、カレンは兵士長だということに気付かなかった。
「お、お前は……あの時の小娘!……くくっ、こうなったら……殺される前にお前を犯してやるぅぅううう!!!」
兵士長は剣を抜き、カレンに向かって襲いかかる。痛めつけて、あの続きを俺がやろう、と彼は酷薄な笑みを浮かべていた。そんな兵士長に対して、カレンは落ち着いた様子で腰にある剣の柄を握る。そして彼に一言告げた。
「火炎一閃(フレイムフラッシュ)」
カレンは鞘から剣を抜く。その瞬間、兵士長は悲鳴を上げず、ばたりと倒れた。そして剣についた血を振り落とし、鞘に戻した。
「どこの誰か存じませんが……弱すぎますわ」
倒れた兵士長の姿はどこにもなかった。
――もうすでに燃え尽きて灰になったからだ。
◆◆◆◆
ローブを脱ぎ終わったアイリスは恥ずかしいのか、頬を赤らめている。ローブの中は胸元がしっかりと見える白いブラウスだった。何よりアイリスの大きな部分がかなり強調されている。そしてローブで目立たなかった黒のスカートからは、ムチムチした太ももが魅力的に溢れている。
「なぁ、天使様のスタイル良くないか?」
「なんだあのメロン……」
「太ももに挟まりたい」
「ローブになりたい人生だった……」
街の人々、特に男達はアイリスの容姿にメロメロであった。
「ふむ……犯しがいがありそうだ。次はどこを脱いでもらおうか」
魔王軍四天王アイチは不適な笑みを浮かべる。
「うぅ……太った姿を見せないといけないなんて恥ずかしい……」
アイリスのある部分が大きいせいなのか、テッドからはデブと言われていたのだ。
「太っている? どこが?」
「ここですよ。大きすぎて太っている、とよく言われまして」
アイリスは自分の胸を触る。マシュマロみたいに柔らかそうだった。アイチはアイリスの大きな部分をじっくりと見る。すると様子が一変し、真剣な表情となったアイチはアイリスへ告げる。
「俺と結婚しろ。お前が望むなら魔王軍をやめる」
「え?」
アイチの目はハートになっていた。今まではアイリスの美しい顔だけであったが、ローブを脱いだ姿も足されてアイリスの魅力のスキルが強化されたのだ。もちろん、街の人々も告白しようと集まってくるが、アイリスは止まって、とお願いする。
「んん? 俺は一体なにを」
しかし、魔王軍四天王のアイチは状態異常耐性があったので、自我が戻った。そして、アイリスを見て再び目をハートにしていた。そんなアイチの様子を窺っていたアイリスは確信する。
(もしかして、魅了が効いている……?)
アイリスは試しに、両手の指を顔の前で絡めて握り、アイチへお願いしてみた。
「二人を開放してください」
「はい、天使様!」
アイチは姉弟の縄を解き、二人はアイリスの後ろへと逃げて行った。
「はっ!? またか。なぜこのような行動を……」
アイチは焦燥感に駆られる。
(元魔王の娘……この女は危険だ……ここで殺さないと……俺たち魔族は……滅ぶ)
四天王のアイチは、普通の人間では扱えない火属性超級魔法を唱える。
「魔王軍四天王のアイチさん、攻撃を止めてください」
(や、やばい……またおかしく……)
アイチは慌てて目を閉じたが、天使のようなアイリスの姿を思い出してしまう。
「い、
しかし何とか自我を保ち、魔法を放った。
「アイリス!」
「アイリスさん!!」
「「天使様!!」」
プラン、キッド、そして街の人々は叫ぶ。
アイリスは火の爆発に飲み込まれた。
◆◆◆◆
爆発と同時に、カレンとアイリスの父はようやく広場へ到着した。
「いやぁああ!!! アイリス!!」
「アイリスさん!! うわぁあああ!!」
「天使様ぁあああ!!!」
そこには泣き叫ぶ街の人々がいた。
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