59.結果報告

「グレイスの持ってきた武器はすごかったぞーー。あの鉱山アリの体を貫いたんだぞー」

「この銃であの鉱山アリを倒したのか。本来はここまでの破壊力はなかったはずだが……グレイス殿はすごいな。ソウズィの遺物をさらに強化するとは……」



 ルビーの報告にアルヴィス王が感心したように声を上げる。彼は興味深そうに魔法銃剣に触れて、何やらうずうずとしている。この人までボーマンみたいに解体したいとか言い出さないよな?

 それと気になったことがある。



「アルヴィス様は銃を知っていたのですか?」

「ああ……とはいっても私ではなく、昔の王とその部下たちがソウズィの元に訪問した時にお土産にと一つもらったのだよ。その時のアスガルドは、未知のアイテムだらけですごかったと日記に記されている。我らドワーフはその時、新しいものを作れずに行き詰っていたのだが、アスガルドで刺激を受け追いつこうとさらに頑張ったのだ。あそこはドワーフたちにとって宝の山だったのだろうな。自分たちが想像のつかないものがたくさんあったのだから……来るときにエレベーターに乗ってきただろう。あれはその時に得た知識を元に開発したのだよ」

「お父様が……」

「あれもソウズィの知識から作ったものだったのか……すごいな……」



 どこか懐かしそうにアルヴィスは語る。昔の平和だった時を思い出しているのかもしれない。というかこの人たちは『世界図書館』もなしにソウズィの遺物を再現したのよ……もしも、ドワーフの技術力を得たらもっとアスガルドはすごいことになるんじゃないか?

 思わず感嘆の声を漏らしたがそれを彼は自虐的な笑みを浮かべて否定する。



「すごくなんかないぞ、結局銃を筆頭にほとんどのものは再現はできなかったうえに、鉱山アリに滅ぼされそうになっているからな……だからこそ、グレイス殿。あなたのすごさを我々ドワーフは知っているのだよ。ソウズィの遺物を元に新しいものを作る貴公のその才能をな!! かつて、我々はソウズィの登場によって刺激を受けて、行き詰っていた技術の発展に成功した。そして、今度はソウズィのアスガルドと知識を継いだものが、助けに来てくれたのだ。私はこれを運命だと思う。改めて頼む……ドゥエルを救ってくれ」

「アルヴィス様!?」



 以前よりも深くこちらに向けて頭をさげるアルヴィス様に俺は思わず驚きの声を上げる。だって、一国の王だぜ……一度ならず二度までも頭を下げるなんて……



「俺はそんな大した人間ではないですよ」

「そんなことはないだろう。先ほどの演説は素晴らしかったし、現に馬鈴薯に鉱山アリを倒すための武器を持ってきてくれた。まさに救世主ではないか。我らドワーフでできることがあればなんでもしよう、だから力をかしてくれ!!」

「そうだぞー。グレイスはすごいぞー。あの銃って武器で、すごい音と共に鉱山アリが倒れて行ったんだぞー、まるで魔法みたいだったぞー」



 二人の期待に満ちた目が俺の心振るわせる。信じられるかよ、ヴィグナ、ボーマン……外れスキル持ちってバカにされていた俺がさ、他国の王族にまですごいって言われているんだぜ。お前らが一緒にアスガルドまで来てくれたおかげだよ。

 そして、お前らが信じたグレイス=ヴァーミリオンはすごいっていうことをみせてあげないいとな。



「任せてください。取り急ぎ、鉱山アリの資料と、工房を一つと優れた知識を持つドワーフを数名かしてください。この魔法銃剣を量産しようと思います」

「なっ、だが……これはドワーフでも作ることができなくてだな……」

「それならばご安心を……現物はここにありますし、ばらしてもかまいません。そして、俺もボーマンと一緒に銃を作っていました。お力にはなれるとおもいます」

「ああ、助かるぞ。ただ……その……工房の連中は少し気難しい。ギムリを使いに出して事前に話は通すが、失礼な事をしたら言ってくれ。私が叱ろう」



 アルヴィスの言葉に俺は頷いた。まあ、大抵の職人は変わった人間が多いよな……ボーマンやノアを思い出して、苦笑する。

 そうして、俺たちは街を見ながら工房へと向かう。




「これはすごいな……」



 鉱山に作られたレンガとミスリルで造られた美しい街並みに俺は思わず感嘆の吐息を漏らす。山の上だからか空気は冷たいが澄んでいておいしい。そして、日差しとミスリルが反射して何とも幻想的な光景である。



「合金ではないミスリルを加工して家材にするとは……ドワーフの技術力の高さには感動しますね」

「ああ、そうだな。というかガラテアはなんか機嫌がいいな。やっぱりソウズィの名前を聞いたからか?」

「うふふ、それもあります。ですが、他国の王までマスターをわが父の後継者とみなしてくれたことがうれしいのです」



 彼女は本当に嬉しそうにほほ笑む。かつて彼女は俺をソウズィの後継者になってくれてうれしいと言ってくれたのを思い出す。最初に名乗ったときは領民たちを安心させるためのはったりも半分はまじっていたが、他国の人にも認められるようになったのか……

 そう思うと自分の胸が熱くなるのを感じる。



「だったらソウズィの後継者として……アスガルドの領主としてぜったいここを助けないとな」

「はい、期待していますよ。マスター!! おや、ないやら話し声が聞こえてきますね」



 アルヴィス様に教えてもらった工房へと向かうと、扉から声が漏れている。なにやら盛り上がっているようだ



「そこでグレイスはの……」

「って、俺の話かよ!!」

「おう、ちょうどいい!! お前さんの話をしておったんじゃ。こっちにこんか」

「おお、ちょうどいい。おまえさんがグレイスか、ちょっと話を聞かせてもらおうか」



 思わず突っ込みを入れると他のドワーフたちとはなしているギムリと目が合ってしまった。一体何をはなしていたんだろうな?

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