49.アイン達の話
蒸気自動車が走る音が鳴り響く。そんな中俺とアイン、ギムリは向かい合って座っていた。ヴィグナは黙って運転をしていてくれている。
「それで話って言うのはなんだ? 悪いが他国で革命したい!! なんて言われても力を貸せないぞ。俺はあくまで援軍としているのだからな」
俺は二人に冗談っぽい口調で釘をさす。
まだ、アスガルド領も発展途上だ。王命で援軍に行ったついで食料などを援助するくらいなら可能だが、本格的なサポートは無理だろう。二人には悪いがそこまでは見てはいられないというのが現実だ。
「はい、私も短い間ですが、アスガルドで暮らした身です。現状はわかっています。ただ、私がドワーフの王と会う機会を作るので、友好を築いてほしいのです。今のドワーフたちは人間に絶望をしてますから……」
「ドワーフの王か……人の王ではなくか?」
「あいつはダメじゃ、戦争に負けてすっかり腑抜けてしまったわい」
不快そうに鼻をならすギムリにアインは悲しそうな表情で見つめたあとに視線を山の方へと送った。かつての人とドワーフが仲良くなった時の事を思いだしているのだろうか。
でも、今の二人の話で大体読めてきたな。
「友好か……俺がドワーフの王に人間も悪い奴ばかりじゃないと、再び思わせればいいって事か……でも、どうすれば……」
「それなら問題はありません。少しくらいはお世辞を言っていただくかもしれませんが、普段通りのあなたでいてくだされば大丈夫です。」
「いや、それじゃまずいだろ……」
「何を言っておる。それでいいんじゃよ。わしらドワーフだって馬鹿じゃない。見下されたり、気を遣われていたらわかるんじゃ。じゃが、お前さんはさっきの村でもドワーフに対しても公平に接していたじゃろ? ボーマンと子供の時から接していたからじゃろうな。お前さんにはドワーフへの偏見がない。ボーマンと酒を飲んだ時もお前さんの事を誇らしげにしゃべっておったよ。ドゥエル以外で人とドワーフが対等な関係でいるとはな……儂はあいつがうらやましかったぞい」
「いや、そんなの当たり前だろ」
どこか羨ましそうなギムリの言葉に怪訝な顔をしてしまう。何を言っているのだろうか? ドワーフも人間も生きていて会話ができるのだ。同じ領民だし、同様に扱うのは当たり前ではないだろうか?
そんなことを思っていると先ほどまで黙っていたヴィグナがため息をつきながらも口をはさむ。
「あんたは本ばかり読んでいる頭でっかちだけど、そのせいか客観的にものを見れるのよ。そしてその感性はとても大事だし、貴重なの。それに救われた人間だっているのよ。覚えておきなさいな」
その声色はなぜか自慢げだ。救われたというのは忌子とよばれていたヴィグナの事だろう。のろけかな……可愛いな、こいつ……
それはさておき、大前提として言っておくことがある。
「二人の言いたいことはわかったが、俺が援軍を頼まれたのは人の王の方だ。まずは彼と話をしなければならない。そして、彼がドワーフたちと交流するなと命じれば少し動きは制限される。それは覚悟しておいてくれ。それとドワーフの王に会うための伝手はあるのか?」
「ふふ、あきらめてくれと言われないだけありがたいです。それに……第一王子も援軍としていらっしゃるんですよね? それならば問題はありません。あなたがドワーフの王と会ってもあの人は気にしないでしょう」
「そうじゃな、あのバカはおそらくお前さんの価値には気づかんじゃろ。そして、ドワーフの王と会うのならば簡単じゃ。アスガルドで作った酒を手土産にもってきとるからの」
「いや、そんなんで王に会えるのか? うおおおおお!!?」
俺が二人の言葉の意味をきこうとすると、急に蒸気自動車が止まった。急な動きにバランスを崩しそうになったがアインがとっさに助けてくれた。
窓の外を見るとストーンアルマジロと見慣れない紋章の兵士たちが戦っているようだ。かなりの数に囲まれており、どう見ても劣勢である。俺は急いで扉を開けて大声で叫ぶ。
「みんな、あの兵士たちを助けろ!! 俺達の力をみせてやれ!!」
その言葉と共にわが軍の衛兵たちがストーンアルマジロたちと戦い始めた。これはチャンスだ。早々と俺達の価値を彼らに示せるからな。
色々と気になる事はあるが、俺は戦闘の士気をすることにした
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