50.

 ストーンアルマジロを倒した俺達は負傷したドゥエルの兵士達を乗せて城へと向かう。彼らを救う時に魔法銃剣などを使用したこともあり、良いデモンストレーションになっただろう。



 しかし、近づくと何ともすごい景色だな……



 ドウェルの王城はドワーフたちがすむ山の麓にある。そして、上を見上げると見える山はすさまじい高さであり、見上げても山頂が雲で隠れてしまい良く見えない。

 山のふもとが人間、鉱山はドワーフたちが支配しているそうだ。よくもまあ、こんなところに暮らそうと思ったもんだ。勾配が激しいため足腰は鍛えられそうである。

 


「それにしても……人間ばかりでドワーフが全然見当たらないな……」

「そうね……それに活気が無いわね……」



 俺の独り言にヴィグナが同意とばかりに答えた。蒸気自動車が物珍しいのだろう。こちらを様々な人々が見てくるが、頬は痩せこけておりどこか人々には元気がない。

 そして、ちらりと市場の方に視線を送るがあまり人通りもない様で活気もない。これは……かなり追い詰められているな……そんな事を思っていると王城へとたどり着いた。

 街の活気と半比例するように、立派な門が見えてきた。それだけでなく、王城の造りはすさまじく立派なものだった。天にそびえる塔に、城のあちこちには精巧な装飾が施されている。



「綺麗だな……」

「あなたね、二人っきりだからっていきなり変な事を言わないの!!」

「は? 俺は城が綺麗だと言ったんだが……ああ、ヴィグナはいつでも綺麗だぜ」

「うるさい、馬鹿……!! でも、ありがと」



 彼女の勘違いに気づいた俺がからかうと顔を真っ赤にしたヴィグナが悔しそうに……でも、まんざらでもなさそうにお礼を言う。ちなみにアイン達はというと、俺達が王都に入った時からちょっと用事があると言い残して去ってしまった。

 彼女が最後に言い残した言葉が少し気になったが、そのうちわかるとの事だった。



 プオオオオオー!!



 ガラテアと助けたドゥエルの兵士が門を守る衛兵に話すと、あっさりと入城の許可が下りたらしくラッパの音と共に、門が開かれる。

 他国の人間が入城するのはもっと手続きに時間がかかるものだが、やはりヴァーミリオン国からの援軍という事と先ほど兵士を助けたためあっさりと終わったようだ。



「マスター準備ができたそうです。ドウェルの王がお待ちしているそうです」

「ああ、ありがとう」



 ガラテアがその言葉と共に乗り込むのを確認するとヴィグナが蒸気自動車を発進させる。他の兵士たちは街でお留守番である。

 同盟国とはいえ他国だからな。代表である俺達しか入る事はできないのだ。



「マスター……ドゥエルの方々から安心と、助かったという気持ちを感知致しました。皆さん私達を歓迎してくれているようですね。マスターの頑張りが認められているという感じがしてちょっと嬉しいですね」

「どうだろうなぁ……なんかアインの言っていたことが引っかかるんだよなぁ……」



 彼女のまるでドウェルの王は当てにならないみたいな言葉がどうしても気になる。まあ、何かを考えても仕方ないだろう。

 そして、蒸気自動車を止めた俺達を立派な鎧を身にまとった壮年の男性が出迎えた。



「遠くからご足労頂きありがとうございます。私はドウェルの騎士団長をやっているカイゼルと申します。長旅の所申し訳ありませんが、さっそく我が王にあっていただけますでしょうか?」

「はい、もちろんです。グレイス=ヴァーミリオンです。出迎えと迅速な対応ありがとうございます」



 先に降りたガラテアが開けた扉から、俺は降り立ってカイゼルに挨拶を返す。騎士団長という事だけあって、彼がつけている鎧はかなりの業物だとわかる。

 高品質なミスリルに細やかな装飾をされた鎧はボーマンクラスの物でしか作る事は難しいだろう。くさってもドウェルっていう所か……



「申し訳ありません、もし答えれたらで良いのですが、その武器は何というのでしょうか? それにその女性は……」

「これは魔法銃剣よ、アスガルドの領主の一の騎士にのみわたされる特別な武器なの」

「私はガラテアと申します。ちなみにゴーレムではありませんよ、ロボットです」



 二人の言葉に……特にガラテアが流暢にしゃべったことに、カイゼルが一瞬驚くも、即座に笑顔を浮かで返す。てか、ヴィグナの魔法銃剣にそんな設定なかった気がするんだけどな……そして、ガラテアはびっくりしたカイゼルを見て嬉しそうである。



「なるほど……その武器と、新しい乗り物を見て、確信いたしました。稀代の発明家にて、ボーマン殿と共にアスガルドを発展させたグレイス様の噂は決して、大げさなものではなかったようですね。お会いできて光栄です」



 カイゼルはどこか嬉しそうに俺に頭を下げる。彼もボーマンの事を知っているのか……それに、俺の頑張りが他国にまで伝わっていると言うのは嬉しい。



「ただ……これから少し不快な思いをさせてしまうかもしれません。その事だけは先にお詫びさせていただきます」



 本当に申し訳なさそうにそう言った。一体どういう事だろうな?



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カクヨムコンテストように新作をあげました。

読んでくださるとうれしいです。



『彼女たちがヤンデレであるということを、俺だけが知らない~「ヤンデレっていいよね」って言ったら命を救った美少女転校生と、幼馴染のような義妹によるヤンデレ包囲網がはじまった』

ヤンデレ少女たちとのラブコメ


https://kakuyomu.jp/works/16817330667726316722



『せっかく嫌われ者の悪役領主に転生したので、ハーレム作って好き勝手生きることにした~なのに、なぜかシナリオ壊して世界を救っていたんだけど』


本人は好き勝手やっているのに、なぜか周りの評価があがっていく。悪役転生の勘違いものとなります。


https://kakuyomu.jp/works/16817330667726111803


よろしくお願いいたします。

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