43.ドウェルの現状
「あれは……」
俺達がしばらく森を進むと、魔物たちの声と共に何かを破壊するような音が聞こえてきた。なんだか嫌な予感がする。
「これは……ひどいですね……」
「ストーンアルマジロじゃと……普段は鉱山に済んでいるはずなんじゃがな……」
転倒している馬車の中を漁っている何匹かの全身を石の様な鱗で覆ったアルマジロの様な魔物がいた。あれってアーマードアルマジロとは違うのかよ。
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ストーンアルマジロ
全身を石でできた鱗で覆っている。その体は大変硬く、弓を通さない。主に肉と石を食べて生きており、鉱山から出ることは無い。
アーマードアルマジロが鉱山にて適応して進化した魔物。
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どうやらアーマードアルマジロの親戚みたいな感じだ。しかも強そうである。てか、なんで鉱山の魔物がこんなところに……それよりもだ。あいつらが喰っているのってもしかして……
「マスター……あまり見て気持ちの良いものでは無いと思いますので、私が処理しましょうか?」
「俺が目を逸らしちゃダメだ。俺がミスれば領民がこうなることだってあるんだからさ。それよりも……アイン、ギムリあいつらを倒せるか?」
「もちろんです、でも、彼らの鱗は硬くて、師匠ならばともかく、私の力では………」
「いや、倒せるぞい。そのための武器がこれなんじゃろ?」
「ああ、頼む。今回のは依頼外だからな。金も払う。だから彼らを苦痛から救ってあげてくれ」
ギムリの言葉にハッとした表情をするアインが銃を構える。乾いた音と共に、弾丸が発射されて、ストーンアルマジロを背後から鱗ごと貫いた。
鉱物アリを倒すために作ったのだ。いくら硬かろうが石ごときで止まってもらっては困る。そして、音に気づいたストーンアルマジロたちがこちらへとやってくるが、量産型魔法銃剣によってどんどん打ち抜かれていく。
一緒に冒険者をやっていたからアインと、ギムリのコンビネーションはたいしたもので、片方が弾を込めている間に、もう片方が射抜き隙を見せなかった。
「すごい……確かにこれならば鉱山アリとも戦えますね」
「そうじゃな、流石はボーマンの作った品じゃ……」
感心している二人に俺は一つだけ付け加える。確かにボーマンも頑張ってくれたけど、それだけじゃないんだよな。優秀な助手もいたからこんなに早く完成したのである。
「いや、これは……ボーマンだけじゃない。ノエルっていう人間の二人が思考錯誤して作った武器だ」
「いいえ、マスターのアイデアも参考にしていたとおっしゃっていましたよ。二人の人間とドワーフの三人の合作です」
「ボーマンめ、そんなことを言っていたのかよ……」
俺が恥ずかしさを誤魔化すように憎まれ口をたたくと、なぜか二人は羨ましそうにぼやく。
「人とドワーフの合作か……羨ましいのう」
「耳が痛いですね……師匠。今のドゥエルでは難しいでしょう」
なんでだろうか? ドゥエルは人とドワーフが共存している国ではないのだろうか? 俺が疑問に思った時だった。ガラテアが慌てて、壊れた馬車へと駆け出した。
「マスター!! 生存者がいます!!」
「マジかよ!!」
その言葉に俺達は慌てて駆け寄った。馬車をどかしたところには一人の18歳くらいの少女が傷を抑えながら、呻いていた。
「うう……助けていただいてありがとうございま……アイン様にギムリ様まで。ドウェルに帰ってきていたんですか? っつ……」
「あなたは……ミランダ……?」
「なんで村長の娘がこんなところにいるんじゃ……?」
アイン達の顔を見て、安心したのか、少女は張りつめていたものが切れたかのように気を失った。村長の娘が何でこんなところにいるのか……どうやら、ドゥエルは予想よりも深刻な状況みたいだな。
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