41.新兵器の力

 薄暗い鉱山の中を俺達は歩いていた。蝙蝠の泣き声と蒸気自動車の音が何とも騒がしい。メンバーは簡単な魔法がつかえるようになった衛兵5人と、蒸気自動車に乗っているニールに、その補佐が一人。最後に、指揮をするヴィグナに、俺とガラテアだ。

 実はノエルも来たがっていたがさすがに断った。ワイバーン相手だと油断したら万が一があるからな。たいまつを持った衛兵の一人が何かを発見したのか声を上げる。



「これは……ゴブリンの死体ですね……おそらくワイバーンが捕食したんでしょう」

「ふーん。ゴブリンって美味しいのかしらね?」

「いや、普通は食べねえだろ……でも肥料にしたらなんか効果あったしなぁ……今度料理にしてみるか?」


 俺の言葉にヴィグナとガラテアがちょっと引いたように諫める。


「何言ってんのよ、冗談に決まってるでしょ……」

「さすがにやめた方が良いと思いますよ。マスター」



 うう……なんかアスガルドで生活をしていて色々な発見があるせいかつい確かめたくなってしまうんだよな。

 冷静になったら二本足で歩いている魔物を食べるのは流石に抵抗あるな……



「マスター、そろそろ縄張りに来たようです。気を付けてください」



 少し緩んだ空気もガラテアの一言で張りつめる。しばらくはこいつらのせいで鉱山の開発が止まったからな。もう二度と来ないように、アスガルドは怖いっていう所を見せてやらないと……



「訓練通りにやるわよ。まずは光を照らしなさい」

「「光よ、我が腕に!!」」 



 その一言共に、何個かの弱々しい光が鉱山を照らす。おお、基本的な魔法だし、練度もまだまだ低いが我が領土の貴族出身でない衛兵が魔法を使えるようになったとは!! イースさんの教育すげえな!! 

 明かりにつられて5匹ほどのワイバーンが潜んでいるのが見える。そして、ヴィグナの命令で衛兵たちが動き出す。



「今よ、餌をばらまきなさい!!」



 突然の光とばらまかれたドラゴンの好む家畜の生肉によって、潜んでいたワイバーン達がこちらへと向かってくる。しばらく、隠れていたからか飢えているんだろうな。鉱山にはろくに動物もいないし……そして、ヴィグナのハンドサインによって一斉に銃声が鳴り響く。

 本来素早いワイバーンだが、鉱山ではその力を発揮できなかったのだろう。より早く威力が増した弾丸相手に、どんどんその数を減らしていき、おまけとばかりに蒸気自動車の砲身からフラワーガンが放たれる。

 轟音と共に打ち抜かれ、地面で悶えるワイバーン。



「もう一発だ!!」

「了解です。戦場に血を咲かせ!! フラワーガン!!」



 助手席に座っていた衛兵が即座に弾を砲身に詰め込み、とどめとばかりに二発目が放たれる。てか、なんかキメ台詞とか考えてたのかよ!!

 狙いをつけるニールとそのサポートの弾込めかかりの衛兵。これが実戦用にノエルの発案したショットガンを連射できるようにしたのである。ちなみに彼らは耳栓をつけている。蒸気自動車内の発射音はそうとうやばいらしいんだよな。ボーマンのいびきとどっちがやばいんだろうか?

 これが最後の一撃となりワイバーン達は全滅した。



「みんなよくやった。あとはしばらく交代制で、残りのワイバーンがいないか探索を頼む!!」



 その言葉と共に勝どきの声があがる。フラワーガンの性能は中々だ。これが当たれば鉱山アリの急所にも当たるだろう。もし生きてていても弱った所を至近距離から射抜けばいい。



「やりましたね、マスター。これなら鉱山アリも倒せそうでしょうか?」

「そうだな、効果はあると思うぞ。ただ、今回は数が少なかったからな。だけど……有力な力を得たのには違いない。あとはドウェルの人たちの話をきいてからだろうな。二人の様子はどうだ?」

「そうですね……興奮と共に希望を感じます。悪い感情ではないので問題ないと思いますよ」



 兵士たちと喜んでいるヴィグナを見ながら俺は。ガラテアにこっそりとつけてきたアイン達の様子を聞く。まあ、ガラテアが問題ないというならば大丈夫だろう。世界図書館で調べた時もクソ兄貴のスパイというわけではなかったしな。何か考えはあるようだが……

 後は……クリスに遠征用の食糧などの商品を頼んだら出発だな。鉱山アリ相手にもこんな感じで上手くいけばいいんだけどな。

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