27.王の依頼

「依頼ですか……」

「父上、まさか隣の国の救援にこいつの力も借りるというのですか……」



 クソ親父の言葉にゲオルグが目を見開いた。依頼だと……いったいどんな無理難題をおしつけるつもりなのだろうか? 

 ちなみに隣の国といっても武力で征服して、欲しい技術なり資源を奪っただけで、同盟国というわけではないのだが、うちの国に助けを求めるとは相当追い詰められているのだろう。



「私の考えに何か意見があるのか、ゲオルグ?」

「いえ、大した実戦経験もなく、俺と競わされるグレイスが哀れに思っただけです。何の問題もありません。グレイス!! 戦争は俺の得意分野だ。それと……秘密兵器をもっているのがお前だけだと思うなよ」



 そう言うとゲオルグはこちらを見つめて得意気に笑った。秘密兵器ってまさか俺の領地にいるスパイが横流しした旧式の銃のことじゃないよな? とは思ったがまさか確認をするわけにもいかないので、俺はあえて、悔しそうな顔をする。

 ふははははは、せいぜい調子にのっているがいい!! もしも、戦場であったらアスガルド製の新型の銃の力を見せてやろう。



「父上、俺は準備があるので先に失礼いたします。剣聖たる俺の力で、見事隣国を苦しめる魔物を狩ってみせましょう!!」



 そういうと、ゲオルグは踵をかえしてそのまま謁見の間を後にしていった。そして、すれ違いざまに得意げな笑みをうかべてきやがった。うぜえやつだな……



「それで……王よ、俺に依頼とはいったいどういう内容でしょうか?」

「うむ……隣の国のドゥエルがあるだろう。そこがな、魔物によって苦しめられているので助けを求めてきたのだ。無視をしてもいいが、彼らにはまだ利用価値がある。だから、救援に行って欲しいのだよ」

「ドゥエル……ドワーフと人間が共存している国ですか……あそこにはミスリルを加工する技術があるので魔物ごときには……ああ、そう言う事ですか……」



 俺の言葉にクソ親父はどうでもよさそうな顔をしてうなづいた。ドゥエルはドワーフの技術によってミスリルを加工し、その商品を貿易をして発展していた国だった。そこの武器や防具はとても優秀で、自国の兵士たちにはそれを装備させ武力もあった。

 そう全て過去の話である。この国によって侵略されて、ミスリルとそれを加工する技術も奪われ国力が低下したのだ。そして、そこを魔物に狙われたのだろう。



「わかりました。俺も救援の準備をさせていただきます、ではこれで失礼いたします」

「うむ、我が国の力を見せてやれ」



 我が国が侵略したことがきっかけだと言うのに、他人事のようなクソ親父の言葉に俺は怒りを抑えられそうになくなったので、さっさとここを出ることにする。俺が立ち上がるとヴィグナとガラテアもその後に続く。



「待て……グレイス」

「なんでしょうか?」



 俺を怪訝な顔をしながら振り返ると、複雑な顔をしてクソ親父が一言言った。



「ガラテアを大事にしろよ」

「はい、もちろんですが……」

「ではいっていいぞ」



 ほんとうにそれだけだったようで、俺はなんでガラテアのことをわざわざ言ったのだろうと思いながら部屋を出る。まあ、ソウズィの遺物を大事にしろという意味なんだろうが……

 それにしても、帰ったらやらなければいけないことが一気に増えた。何せ遠征は初めてだからな。




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 王しかいなくなった謁見の間で、彼は楽しそうに笑った。



「まさか、グレイスが本当にロボットをよみがえらすとはな……」

『私の言った通りだったでしょう? この世界の人間の『スキル』は私や、愛しのあの人が持っていた科学でも、実現不可能な事ですら、可能にするわ。彼のあのスキルが強化されて、私の持つ科学の力とあわされば、私の目的だっていずれか実現可能になるわ。そして……あなたの目的もね』



 彼の独り言に声が天から降ってくる。それを聞いた彼は再び満足そうに笑う。



「君と出会えて私は幸運だったよ。奪うしかない私の力だが君に出会えて本当に良かったと思う」

『私もよ……あの人の次くらいには好きよ。うふふ、この世界の力と私の世界の力があわさればできないことなんでないでしょうね。共にこの世界で遊びましょう』



 そうして彼と天から降ってくる声は嗤うのだった。



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