23.王都までの道のり
王都までの道のりは順調だった。最高級の素材に加えて我が領土で作成をしたスライムラバーを原料にしたゴムタイヤに、最近発明したばかりの『サスペンション』も使用していることもあり振動も少なく済むこともあり、かなり快適である。
だけど、そんな順調な旅も長くは続かなかった。
『マスター、なにやら人が集まっています』
「ん? 何か問題でもおきたのか?」
ガラテアの言葉に窓から顔を出すと、遠くに豆粒のようなものが集まっている。どうやら何台もの馬車が止まっているようだ。ここから先は確か一本道の山道なのだが、何か事件がおきているらしい。
ガラテアやヴィグナがいるし、魔物くらいなら瞬殺なんだけどな……
「ヴィグナ、詳しい状況を聞きたいから先行してくれ」
「わかったわ。飛ばすわね!! 行きなさい、グレイス!! ちんたらしているとお仕置きするわよ」
俺の言葉に頷いたヴィグナは無茶苦茶楽しそうに『グレイス号』を加速させた。いや、俺の事じゃないってわかっているんだが、お仕置きとか言われるとちょっとドキドキしてしまうな。
蒸気自動車は馬車よりも小回りが利くこともありスイスイと進んでいき先頭の方へと向かっていく。そして、俺達が先頭で見たのは衛兵に絡んでいるミスリル製の鎧を身に着けた身分の高そうな男だった。あの格好は近衛騎士だな。
「何をダラダラしているのだ。私は早く王都に戻らねばならんのだ!! 岩くらいとっととどけろ」
「ですから、あまりに大きすぎる上に、魔物も寄ってきて撤去に数日はかかるんですよ。待っていただくか迂回するしかないんです」
「ふん、それならば我らがゲオルグ様直属の近衛騎士団が力を貸してやる。皆の者行くぞ!!」
「ああ……危ないって言うのに……ワイバーンだっているんですよ……」
そう言うと男は門番の制止も聞かずに馬車に乗り込みさっさと行ってしまった。俺はその男の顔に見覚えがあり、苦い顔をする。
「懐かしい顔ね……相変わらず偉そうなんだから……」
「あんまり見たくない顔だったな」
『先ほどの方はお二人の知り合いなのですか?』
「ああ、ゲオルグのクソ兄貴の近衛兵だよ。何かと兄貴と一緒に馬鹿にしてくる嫌な奴だ。まあ、剣の腕は確かなんだけどな……」
「ふん、私の方が剣の腕は上よ。模擬戦だって10回に6回は私の方が勝っていたもの。あいつ……昔っからグレイスの悪口を色々と言っていたのよ、ああ、顔を見たらムカムカしてきた!!」
『なるほど……マスターの悪口を……消しましょう』
俺達の言葉にガラテアが感情を殺してそう言った。消すって何を消すんですかね? 存在? ガラテアがちょっと怖いんだが!!
『ウフフ、ロボジョークですよ、お二人の気持ちを明るくしようとしたのですが、失敗してしまったようです』
ぎょっとした俺達に対してはガラテアは舌を出して、笑った。よかった冗談だったぁぁぁ。まあ、確かにむかつく奴だが、死んでくれとまでは思わないからな。ガラテアは俺とヴィグナの感情を読んで気を遣ってくれたのだろう。
俺は彼女の気持ちに感謝しながら衛兵に声をかける。
「さっき騎士と話していたのが聞こえたがそんなにやばい状態なのか?」
「そうですね。この道は普段はそこまで危険はないのですが、少し前にこの山の主のドラゴンが冒険者にテイムされたせいでいなくなったのです。それ以来後釜を争っているのか、魔物達が殺気立っているんですよ。おそらく落ちてきた岩も魔物達が争っているのが原因だと思います。危険なドラゴンもいるので先ほどの騎士の方々でも苦戦すると忠告をしたのですが……」
「それは何とも厄介ね……こういう時は魔物はいつもより凶暴になるし、ドラゴンは空を飛ぶから魔法使いや専用の道具がないと倒すのが難しいのよね……」
「待て……前の主ってどんな魔物だったんだ?」
衛兵の言葉を聞いて嫌な予感がした俺が訊ねると予想通りの答えが帰ってきた。
「火竜ですよ。空を飛び、炎のブレスを吐く強力な魔物だったのですが、冒険者がテイムしたまま帰ってこないのです。また、戻ってきてくれればいいのですが……」
「なるほどな……その冒険者って赤髪の長い髪じゃなかったか?」
「はい、良く知ってますね。その通りです。よくご存じで!! もし、知り合いだったら山の主を戻すようにその方を説得していただけないでしょうか? 今よりはましになると思いますので……」
やっぱりーーー、テイムしていったのって、カイルと組んでいた冒険者じゃねえかよ……こんなところでつながっていたとは……そうなると、あのドラゴンは今頃うちの畑の肥料になっているだろう。
俺は一切悪くないのだが少し責任を感じてしまうな……
「なあ、ヴィグナ、ガラテア……」
「ええ、わかってるわよ。グレイス。騎士達の所に行くんでしょう? そして、あいつらがピンチになった所にざまぁっていいながら助けに行くのよね!! 馬鹿にしていたグレイスに助けられるあいつらの顔を見るのが楽しみね!!」
「そんな性悪な事かんがえてねーよ!?」
「いいのよ、だって、あいつは……図書館で一生懸命頑張っていたグレイスを馬鹿にしていたんですもの!! それに助けてあげるんだから文句はないでしょう? ね、ガラテア」
『ヴィグナ様から怒りの感情を感知しました。でも、私も同意見です。少しくらい見返してあげてもいいと思いますよ。マスター』
ヴィグナの言葉にガラテアが満面の笑みで頷いた。うちの女性陣ちょっとこわすぎない? そんなこんなで助け?にいくことになったのだった。
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