19.祭りの後
「ガラテア、臨時の賞与を配っておいてくれたか? 今回のパーティーの成功はみんなのおかげだし、幸い金銭にも余裕があるからさ。皆にはたまには気分転換をしてほしいんだが……」
『はい、皆にも休暇を取って、街の方へと遊びに行くようにいってあります。これもノア様のゴーレムとボーマン様の超ミスリル合金のおかげですね。強力なゴーレムの小型化に成功したおかげで、農作業などの人手を少なくすることが可能になりました」
「流石ノアとボーマンだ。まあ、細かい作業はやはり難しいようだがな」
『アグニさんが大工の仕事を任せたら建物を破壊されて、仕事が増えたって泣いてましたね……』
俺の言葉にガラテアが苦笑をする。そう、ノアのゴーレムを超ミスリル合金で作ったことにより、少ない魔力でゴーレムが動くことになったおかげで、長時間簡単な作業を任せることができるようになったのだ。それに伴い、空いた新しい仕事を覚えたいという人間が増えてきて、今はちょっとてんてこ舞いである。色々と調整している間に休んでもらおうと考えたのである。
そのうえ、新しい移民も受け入れたのだが、一人だけ問題児がいると来たものだ。やることだらけでマジでやばいんだが……
「まあ、人が増えるのは今はありがたいんだけどなぁ……」
「ご主人様!! また、商品について教えて欲しいっていう手紙が来ましたよ!! あと、ちょっとボーマン様と面白いものを作ったんです!! 中庭に来ていただけませんか?」
少しテンション高めに部屋に入ってきたのは大量の手紙を抱えているノエルである。ちょっと待って。あの量に目を通さなきゃいけないのかよ……
『ノエル……マスターは今お忙しいんですよ。そんな風に我儘をいってはいけません』
「あ、そうですよね……すいません……」
ガラテアにたしなめられてノエルがしゅんとする。ノエルの教育係であるガラテアは彼女には少し厳しいのだ。もちろん、理不尽なものではないのはノエルもわかっているので素直に謝る。
だけど、ノエルはまだまだ子供で、純粋に俺に新しい発明を見てほしかったのだろう。
「ガラテア、せっかくだしちょっと席を外してきていいか? せっかくノエルがこうして俺に報告したいって言ってくれているんだ。もちろん、仕事はちゃんとやるからさ」
「え……グレイス様……」
俺の言葉に嬉しそうに目を輝かしたノエルだが、恐る恐るといった様子で、ガラテアの方を見ると、彼女は苦笑をしながらため息をつく。
『もう、マスターはノエルには甘いんですから。そこまで言われてしまっていかせなかったら、私が悪者になってしまうじゃないですか、いいですよ。行ってらっしゃい。グレイス様、そのかわりお仕事が終わるまでは休んではだめですからね……』
「う……ああ……がんばるよ」
「うふふ」
ガラテアの言葉に俺がげんなりとしているとノエルがくすくすと笑った。いったいどうしたんだろうと思い、視線を送ると彼女は少し恥ずかしそうに言った。
「その……グレイス様とガラテア様のやり取りを聞いていたら、お父さんとお母さんみたいだなって思ってしまいまして……」
『ノエルにはばれてしまいましたか……これは責任を取ってもらわないと困りますね。お父さん』
「え? なんでお腹押さえてんの? マジで身に覚えがないんだが!!」
俺は器用に顔を赤らめながらこちらをみつめてお腹を押さえるガラテアを見ながらぼやく。いや、マジで記憶にないし、そもそもガラテアってそういうことできないだろ……いやできないんだよな? もしかしてできるの? ロボットってマジですげーな。
『フフ、ロボジョークですよ。私とマスターはご主人様と使用人の関係ですよ。でも、ノエル……あなたが私をどうおもってくれているかはわかりました。ちょっと嬉しいです』
「ガラテア様くすぐったいです」
そう言うとガラテアはどこか嬉しそうにノエルの頭を撫でる。撫でられているノエルもどこか照れ臭そうに、されるがままにされている。
そういえばノエルとニールの両親は彼女達が幼いころに亡くなったんだっけな……ひょっとしたら俺とガラテアのやりとりを聞いて何かを思い出したのかもしれない。
「ノエル……俺の事をパパと呼んでもいいんだぞ」
「ご主人様……それはちょっと……ヴィグナ様に怒られてしまいますよ……」
『マスター……それはパパ活ですよ』
なぜか冷たい目で二人に見られたんだが!! てか、パパ活って何? パパのふりをするの? 変わったプレイだな!!
俺は変な空気になってしまったので、誤魔化すように立ち上がって、ノエルの方へと向かう。
「じゃあ、ノエル、中庭に案内してくれるか?」
「はい、ご主人様!! きっとびっくりすると思いますよ!!」
そして、俺がノエルと一緒に出ようとするとガラテアが声をかけてくる。
「そういえば……ノア様からの提案ですが、『取引が増えてきたので、この村にも、そろそろどこかの商会をつくったほうがいいんじゃないでしょうか? むしろ作ってください。流石に私でもそろそろキャパオーバーです……でも、ガラテアさんと一緒にお風呂に入れば頑張れるんですが……私がいくらお願いしても断られるんです。グレイス様から命令してくれませんか? 本当にお願いします!!』との事でした。後半は無視をしてくださって結構ですが、私もノア様の意見には賛成です」
「あ……ああ、考えておくよ……」
俺は器用にノアの声色を真似るガラテアに苦笑しながらうなづく。確かにそろそろ商会の必要性がでてきた。商会ができれば取引もスムーズになるし、仕事も増える。
エドワードさん経由でクリスさんにお願いをするか……以前話した時は結構乗り気だったし……そんなことを考えながらノエルと一緒に進む。すると中庭はからは何やら煙が発生している。
「げ? 火事かよ。ワイバーンでもきたか!?」
「あ、グレイス様これは……
嫌な予感がした俺は急いで駆け出した。隣のノエルが何か言っていたが今は緊急事態である。するとそこにあったのは……
「馬のいない馬車だと……?」
俺は馬もいないのに煙を出しながら走っている金属の塊を見て驚きの声をあげるのだった。
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