16.パーティー
そして、俺は次から次へとやってくる貴族や商人と色々と話す。これまで別のパーティーで出会った時に自分の娘と会ってくれないかと言っていた貴族も、俺の隣で微笑みながら座っているノアを見るとその話題は出さなくなった。
レメクさんが俺を王子として扱い敬意を払ったことも大きいだろう。それによって俺とノアの関係を勝手に勘違いしてくれたのかもしれない。
そして、その事は他にも色々と俺と貴族や商人たちとの関係に影響を与えるのだった。
「おお、これが魔力を回復する馬鈴薯ですか、味もいいですし、私の領地にも是非とも入れてみたいですな」
「そうですね、やはりポーションは味が悪いですからな」
「ありがとうございます。気に入って何よりです。こちらの馬鈴薯はハリソン商会に降ろしていますので、後程エドワードさんと一緒に商談をさせていただいたら幸いです」
うちでとれた馬鈴薯の料理を食べながら貴族たちは口々に褒めたたえる。いきなり手のひらをくるりと変えたな。などとは思ってはいけない。
俺は実質無派閥だったからな。俺がもしも、カシウス家と敵対する派閥に入れば、別派閥の貴族と商売をしていたという事で、立場が悪化する可能性だってあるのだ。そうなれば、彼らのような地方貴族はここいらでの生活が一気に苦しくなるのだろう。俺がカシウス家と仲良くしたことにより彼らも安心して俺と取引ができるのだ。そして、彼らにうちの商品が広まればもっと地位のある貴族達も興味をもちやすくなるだろう。
「おお、これが超ミスリル合金ですか!! こんなに軽いのに魔法を通すミスリルの性質を持っているとは……」
「すごい……これで防具や武器をつくれば戦況が変わりますな」
「流石は名高いボーマン殿です。こんなものを作るなんて……」
「はい、この金属は軽い上に鉄よりも頑丈なので色々と用途に使えますよ!!」
あっちの方ではノエルとボーマンによる超ミスリル合金のプレゼンが盛り上がっているようだ。あまり人前に出るのを好まないボーマンをノエルがサポートしているのである。
「あの二人はなんだかんだ良いコンビね」
「ああ、そうだな、俺とヴィグナも良いコンビだけどな」
「はいはい、それよりも……やっぱり武器にって話が出るわね……」
俺の軽口に少し頬をにやけさせたヴィグナだったが、さっと真剣な顔に戻って少し憂鬱そうに言った。
「まあ、仕方ないだろ、俺がカイルたちを倒したのは知れ渡っているし、その時に圧倒的な戦力差をひっくり返した理由だって、もう、噂になっている。いつの日か銃も誰かの手に渡って、廉価品が市場に出回るだろうさ」
「グレイス……」
そう言い切る俺の言葉に、ヴィグナが心配そうに俺を見つめる。そんなに心配しなくていいのに……俺だって『世界図書館』の力を使って、武器をつくるっていうのを決めた時にそれくらいは覚悟しているのだから……
そんな事を話しあっていると、ダンスの時間がやってきた。貴族って何でダンスが好きなんだろうな? 俺がヴィグナに手を差し出すと彼女は首を横に振った。
え? フラれんのかよ!?
「そんな悲しそうな顔をしないの。今日はノアと踊ってあげて……意味はわかるでしょ?」
「あーまあ、そりゃあな……」
さっきまでの貴族や商人の反応を見れば否が応でもわかる。俺とノアの関係を誤解させておけという事だろう。
まあ、それが正しいって言うのはわかるんだけどさ……
「でも、なんか利用しているみたいで嫌なんだよなぁ……」
「それならご安心を。私としても、グレイス様と噂になれば縁談が来ないので助かるんですよ。まだまだ、ここで研究もし足りないですし、ガラテアさんとお風呂にも入っていませんからね!! それとも私と踊るのはお嫌ですか?」
俺がぼそりと呟くとノアがいつの間にか後ろに立って微笑んでいた。そうまで言われたら問題はないだろう。
そして、俺は彼女とダンスを踊るのだった。どんなものかと思ったが、彼女のダンスは礼儀をしっかり、教えてもらっているからか、むしろこちらがリードされたくらいである。そして何よりも胸が揺れてやばかった……
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