9.新しい発明

「ああ、平和って素晴らしいな……暇って素晴らしいな……」

「ノア様のおかげでマスターの体調及び精神状態が良好になりましたね。どうぞ」



 俺は屋敷でガラテアが淹れてくれた紅茶を飲みながらほっと一息をつく。以前までの地獄のような書類達もノアが処理してくれるおかげで、こうやって紅茶を楽しむ時間ができたのだ。



「ああ、性格にはクセがあるがうまくやってくれて助かるな。ガラテアも悪い噂はきいていないんだろ?」

「ええ、そうですね。あの容姿に、穏やかな性格ですからね……私にはちょっと熱烈な感情を向けてきますが……この間も一緒に水浴びをしようと何回も誘ってきましたね……」

「マジかよ……今って結構寒いんだが……ガラテアはともかくノアは風邪ひくだろ……」



 そう言うとガラテアはその時の事を思い出したのか苦笑する。

 話に出ているノアだが、あの外面の良さから、領民たちの評判も良いようで、「アスガルドの美姫」とか呼ばれているようだ。

 本人は隠したがっていたけれど、カシウス家の令嬢だという事はすでに知れ渡ってしまっているのだけれど、みんな気を遣って彼女をただのノアとして扱うのは暗黙の了解となっている。



「エドワードさんも今度移民をつれてきてくれるらしいし、また忙しくなるな……それに、そろそろパーティーを開かないとな」

「そうですね、ようやくこの間の戦いの傷も癒えてきましたからね」



 ガラテアの言葉に俺はエドワードさんの手紙を見ながらうなづく。傷というのは何も建物のなどのダメージの事だけではない。領民たちの心の傷などもさす。

 ようやくみんな日常を取り戻してきたのだ。そろそろ新しい風をいれてもいいだろう。



「それにしても、パーティーですか……なぜ、うちの屋敷で開いてほしいとおっしゃっているのでしょうか?」

「ああ、俺がカイルを撃退したっていうのはほぼばれているからな……貴族や商人たちは俺の価値を見極めたいんだろう。いや、俺だけじゃないこのアスガルドという土地の利用価値もな……」

「なるほど……数々の発明をして、格上の相手も倒したマスターをみんなが興味をもってくださったんですね。何か嬉しいですね!!」



 確かにみそっかすだったときに比べればみんなが注目をしてくれているというのはありがたい。だけど、それは諸刃の剣である。迂闊な事をすればまだ定まっていない俺の評判はがた落ちするだろうし……かといって過度に戦力などで目立ちすぎても叩かれ、無駄に警戒をされるだろう。なにせ戦大好きクソ親父の血を引いているからな。俺は……

 なんか武器とか以外で、良い感じの印象を持ってもらえるアスガルドの名物が欲しいんだよなぁ……まだ、他の人間にはみせていない発明品とか何かないだろうか。

 そんな事を考えているとノックの音がしたので入室を許可するとノエルが顔を出す。



「ご主人様……外に来てはいただけませんか? ようやく蒸気ポンプの試作が完成いたしましたのでお見せしたいのです」

「おお、ノエル、お疲れ様って、なんか目のクマやばいけど大丈夫か?」

「うふふ、大丈夫ですよ!! こんなのは馬鈴薯を食べればすぐに治りますからね!! それよりも早く来てください。待ってますから!!」



 ノエルがちょっとハイテンションに答えて、さっさと出て行ってしまった。徹夜で気分がおかしくなっているのだろうか……

 ボーマンに蒸気ポンプの事を話した所、すっごいノリノリで作ってみようとなったのだ。そして、彼の専門外という事もあり、サポートとして、蒸気の可能性に気づいたノエルも一緒にソウズィの工房に連れていかれてこの様である。



「行ってらっしゃいマスター、後かたづけは私がやっておきますよ。あと……ノエルが色々と頑張っているようなので褒めてあげてくださいね」

「ああ、ありがとう、せっかくだし様子をみてくるわ」



 そうして、俺は気分転換がてら屋敷の外へと向かうのだった。




 そこ俺が見たものは、ドスンドスンという音と共に、光沢が目立つミスリルの人型の何かが作業している姿と、ボーマンやノエル、とノアが楽しそうにしゃべっている姿だった。

 てか、あのゴーレム何なの? 金属のゴーレムって初めて見るんだが!! 普通ゴーレムって石とかで作るよな!!

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