8.ゴーレムクリエイター

「あー……それで……、さっきの反応は何だ? もしかしてガラテア目当てでうちに来たのか?」

「マスター、ノア様からすさまじい興奮と感動を感知致しました。でも、ちょっと怖いです」

「いやぁ、あはははは。恥ずかしいところをお見せいたしました」



 彼女が何を目的にうちに来たのかを探るための案内だったが、予想以上の効果があったようだ。尻尾を出した彼女を連れて、俺は屋敷へと戻った。

 てか、ガラテアが引くくらいの興奮ってどんな感じだよ……俺はなにやら恥ずかしそうに苦笑をしていて上品に座っているノアを見つめる。



「グレイス様は私がゴーレムを作っていたのを覚えてらっしゃいますか?」

「ああ、その肩にのっているゴーレムは確かノアが自分で作ったんだよな?」

「はい、昔からゴーレムを作るのが私の趣味で、この子は今30代目なんですが……」

「え? その鳥、そんなに代替わりしてんの?」

「はい、色々と改良をしておりまして……ちなみにこの子の口にはボウガンが仕込まれているので護衛も兼ねているんですよ」


 

 彼女は少し誇らしげに言う。確かにそう言われると目の前の鳥が強そうに見えるから不思議だぜ。まあ、俺よりは強いんだろうが……

 てか、グレイス像の鼻に銃といい、そういうのを仕込むのが流行っているんだろうか?



「そんな感じでゴーレムを作っていたためか、私は『ゴーレムクリエイター』というゴーレムを作成するスキルに目覚めたんですが……色々と伸び悩んでおりまして……その時にグレイス様の領土で、強力なゴーレムがいるという話を聞いたんです。おそらく、ガラテア様はソウズィの遺物ですよね? 実はグレイス様が開拓をする前から私もアスガルドにゴーレムを見に行こうと思ったのですが父に止められてしまっていて……それで領民を募集していると聞いていてもたってもいられず……」

「そりゃあ、当時は近づくものは皆殺しにするゴーレムとか言われてたしな……お父さんも心配するわ……」



 それに関してはノアのお父さんに同意である。アスガルドは魔物だって多いし、俺だって最初は死を覚悟したものだ。冷静に考えたらそんなところを開拓して来いというクソ親父はマジで頭おかしいよな。絶対ざまぁしてやるからな……

 などと思っているとガラテアが少し不満そうな顔をしている。



「マスター、私はゴーレムではなくロボですよ」

「いや、知っているけど、今はややこしくなるから黙っていてくれない?」

「すごいです……主人に意見をするゴーレム何て……しかも、自我を確立している……ばらしてもいいですか?」

「良い訳ねえだろ!! さっきまでの典型的な貴族令嬢キャラはどこいった!?」



 俺はガラテアをすごい興味深々とした目で見つめるノアに突込みを入れると、彼女は「あははは」と照れくさそうに笑った。

 そんな彼女を見て、俺は今まで感じていた違和感が消えてくるのを感じた。ああ、そうだ……彼女はこういう少女だった。俺と一緒に会った時も、お茶よりも俺が籠っている書庫に連れて行った方が喜んでいたし、ボーマンが鉄に関する事をグダグダ話している時も「ゴーレムに使ったらどうなるでしょうか?」とか色々と興味深そうに質問をしていたものだ。



「マスター、ノア様からは私への強い興味と、マスターへの懐かしさ、後は申し訳なさ……そして、淡い感情を感知できます。信用してもいいと思いますよ」

「淡い感情ってなんだよ?」

「それを私が言うのは無粋ってやつですね」



 そんな事を言うガラテアを俺は見つめた後に、こちらを見つめているノアを見る。まあ、ガラテアが信用してもいいって言うのならば問題はないのだが……



「グレイス様、私なら先ほどのお風呂の問題も解決することが可能ですよ。私は魔法を適度な威力に制御することが可能です。俗に言う戦闘魔法ではなく、生活魔法ですね」

「へぇー、じゃあ、これをハート形に切ったりできるのか?」



 俺が彼女にテーブルにあるリンゴを渡すと得意げな笑みを浮かべて魔法を使用する。圧倒的な制御力で支配された風の刃がリンゴをハート形に切り刻んでいく。

 すごいな……俺は見事にハート形に刻まれたリンゴを手に取って感嘆の息を漏らす。これは何もヴィグナが劣っているわけではない、魔法を極める目的が違うのだ。生活に使う魔法は戦闘魔法とは違いいかに制御するかが大事なのである。



「私なら望む威力の火力を石に込める事も可能ですし、書類作業をお手伝いして、グレイス様の負担をヘらすお手伝いもできると思います。その代わり……」

「その代わり……?」

「ガラテア様を好きに触らせてください!! お願いします!! そうすれば私はより良いゴーレムを作れるようになる気がしますし、あと単純に動いているのを見ると興奮するんです」



 はぁはぁと勢いよく喋るノアに若干引きながら、俺はガラテアに訊ねる。正直性格はちょっとあれだが、敵意が無いようならば彼女を移民としていれても問題はないんだよな。後はガラテア次第である。



「その……ガラテアは大丈夫か?」

「え……ええまあ、害を与える気はなさそうですから……」



 ガラテアも若干引いているようだがいいようだ。しかし、動揺しているガラテアというのも珍しいなとニヤニヤとしていると、拗ねたように頬を膨らました彼女に睨まれた。



「あともう一つお願いがあるのですが……その……ゴーレムの研究をする事を認めてくださると嬉しいのですが……もちろん、仕事に支障は出ないように致しますから」

「ああ、いいんじゃないか? というかそのために来たんだろ? ボーマンが面白い素材を作ったんだ。声をかけとくな。あと、ノエルっていうメイドがいるんだが、発想力がすごいんだ。話をしていると、なんかいいアイデアがわくかもしれないから、今度飯でも食べる機会をつくろう」

「……」


 俺の言葉に彼女はなぜか、きょとんとした顔をしている。一体どうしたというのだろう?



「ああ、すいません……想像以上に協力をしていただけるようだったので……その……私のような年齢の女性がそういう研究とかをするのを嫌がる方や変人扱いする方が多いものでして……」

「そうなのか? そもそもノアは昔から研究とかゴーレムが好きだったじゃん。むしろ、今の方が俺の知っているノアっぽくて、話しやすいけどな」

「うふふ、ありがとうございます。グレイス様は変わっていませんね」


 

 俺の言葉になぜか彼女は笑顔を浮かべてうなづいた。わりかし当たり前のことだと思うんだが……ボーマンとか時々仕事をそっちのけでなんかいじっているしな……

 同意を求めようとガラテアに視線を送るとなぜか彼女はニヤニヤと笑みを浮かべている。一体何だというのだろう。この顔はかつてのヴィグナと俺を見ていた時とかぶる。

 まあいい、これで引っかかっていたものは解決した。




「じゃあ、ノア……正式に移民として頼む」

「はい、ありがとうございます。お望みならばグレイス像をゴーレム化して動かすことも可能ですよ」

「一生望まねえから絶対それはやめろ!!」



 アグニやボーマンに話したらノリノリでゴーレムにしそうである。というわけでノアが移民として暮らすことになった。



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領地情報


領民:25名(1名追加)


異界理解度 レベル4

(触れたものがどのようなものか、またどのように扱うか、及び、原材料に触れた際に中レベルならばどのように使用できるかを理解できる)



技術:異世界の鋳鉄技術

  :銃の存在認知→銃の基礎的な構造理解→簡易的な物ならば作成可能

  :ロボットの存在認知

  :肥料に関しての知識

  :アルミニウムに関しての知識→アルミニウムの作成及び加工の可能

  :合金の作り方

  :ミスリル合金→超ミスリル合金の作成可能

  :ゴムの作り方、加工方法

  :蒸気ポンプの存在認知

  :蒸気の存在を理解

   :赤飯の存在を理解

NEW ;お風呂の作成方法を発明

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