2.新しい発明

 そうして俺達はヴィグナと一緒に復旧中の村の方へついた。ワイバーンや敵兵が攻めてきたこともあり襲撃直後は建物の破損も目立ったが、今は改修されているようだ。

 


「あ、グレイス様、ヴィグナ様、良かったらこれを食べてください。ようやくりんごを収穫できたんですよ」

「見回りですか、お疲れ様です!! 今度うちの畑に遊びに来てくださいね」

「グレイス様、お久しぶりですね、今日もゴブリンが来ましたが、無事撃退できましたよ!!」



 村を歩くと、こんな風に領民に話しかけられたり、作物をもらったりなどして、あっという間に時間が過ぎる。

 新しい作物なども育つか試しており、本格的な収穫が楽しみである。そして、衛兵達もヴィグナがいなくても獣や弱い魔物相手なら対処できるようになってきた。やはり、この前の戦いでみんな成長したのかもしれない。

 そんな事を思いながら歩いているとちょうど小腹が空いてきたので彼女に声をかける。



「ヴィグナ、りんごのカットをお願いできるか?」

「いいわよ。ハート形に切ってあげようか?」

「え、そんな事できるのかよ!!」

「冗談に決まっているでしょう。そこまでやるにはよっぽどの制御力が必要でしょうね。でも、そうね……今度オムライスにハートをつくってあげるわね」


 

 そんな軽口を叩きながら彼女に風の魔法でカットしてもらい、りんごを食べる。しゃりしゃりした食感と共に甘みが口に広がる。どうやら最近植えた苗木から育ったらしい。ワイバーンを大量に倒したおかげで肥料には困っていないからな。作物が育ち放題だぜ!!



-----------------------------------------------------------------------------------------------

りんご ワイバーンの魔力が籠っているため、通常の物よりも育ちと味がよく、火属性への耐性が一時的につく。

----------------------------------------------------------------------------------------------


 いや、誰もリンゴに防御力は求めていないんだが……? とはいえ、開墾が進み馬鈴薯以外も育つようになってきたのはありがたい。

 以前エドワードさんのパーティーで出会ったセイレムさんから、戦いに勝ったお祝いと称してもらったものにもう実がなったようだ。成長が肥料の効果だろう、異常に早いがなんかもう慣れてきたな……



「ヴィグナも食べるだろ?」

「ええ、いただくわね。あーん」

「え?」



 俺が思わず聞き返すと彼女はキョトンとした顔で形の良い口を開けている。こいつ時々可愛く甘えるのずるくないか?

 俺が彼女の口元にリンゴを持ってくとしあわせそうな笑みを少しだけ浮かべて咀嚼する。



「あらあらお二人ともお熱いわね。こんな街中でいちゃついちゃって」

「うおおお、サラかよ!!」

「別にいちゃついているわけじゃないわ……これは……その……単に餌付けをしてもらっていただけよ」



 友人に見られていたことにより、ちょっと焦ったが俺以上にヴィグナがテンパっているようだ。餌付けってなんだよ……

 そんな俺とヴィグナにクスクス笑った後、サラは俺達に声をかける。

 


「ちょうど今ドノバンとアグニがうちで食事をしていて、グレイスの話を聞きたがっていたから呼びに行くところだったのよ。ちょっと来てくれないかしら?」

「ああ、別に構わないが……一体何があったんだ?」

「ふふ、アグニがあなたに見せたいものがあるらしいわよ」


 

 そう言いながらほほ笑んでいるサラについって行って広場の方へと向かうと、俺の銅像の隣に見慣れないものがあった。



「あれは……」

「お風呂かしら?」



 そう、俺達が見たものは石と超ミスリルでつくられた浴場だったのだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る