31.後処理

「魔物の駆除及び、侵入者の捕獲を終了致しました。マスターもご無事で何よりです」

「ああ、ありがとう、ガラテア」



 村に侵入した魔物や敵をあらかた倒し終えた俺達は、隠れた敵がいないか偵察を終えたガラテアの頭を撫でる。すると彼女は気持ちよさそうにうっとりとした笑みを浮かべた。てか、背後のヴィグナさんからすごい殺気を感じるんだが!? こりゃあ、後でまた彼女の頭を撫でさせられそうだ……

 気を取り直して、俺はワイバーン達や、敵兵の攻撃でがれきの山と化した家を見て何とも言えない気持ちになりながら、みんなが集まっている俺の屋敷へと向かった。



「それで……死者は四人か……」

「はい、衛兵が三人と、逃げ遅れた人が一人です……俺がもっと強ければ……」



 俺がみんなが集まっている広間に入ると悔しそうな顔をして報告をしてきたのはニールだ。彼はヴィグナに助けられた後も自分も怪我をしていると言うのに、あの後、住民の救助をしていたらしい。

 本当に立派になったな……



「何を言っている。お前達が頑張ったからこそ、これだけの被害で済んだんだ。ニール……お前達がアスガルドを守ったんだよ。もっと誇りに持っていい。相手は王直属の近衛兵だっていたんだぜ」

「グレイス様……」



 俺が笑顔でそう言うと彼は泣きながらうなずく。そうだよな……初めての実戦で仲間が死んだんだ……辛いに決まっている。万能に近い馬鈴薯とはいえ、流石に死者は蘇らす事は出来ない。

 そして、この村の人口は少ない。みんなが顔見知りだ。死者が出たことによって、沈んでいるのは誰でもわかる。だけど……俺達は勝ったんだ。だから、生きている俺達は前をむかなければいけないのだ。俺は自分にも言い聞かせるようにそう強く思う。



「みんな、悲しむのはまた今度だ。今から祝勝会をするぞ!! 今日は好きなだけ騒ぐぞ!!  ノエル、酒と食料を持ってこい。ご馳走用に育ててた豚と、エドワードさんが持ってきたなんか高そうなワインがあったろ。あれも振るまっていいぞ」



 俺の言葉に領民たちは少し困惑しながらも、こちらを見つめる。そりゃあ、辛いけどさ。悲しんでいても、死んだ人は生き返らないのだ。だから、勝った俺達は生きていることを喜ぶべきなんだよ。いつまでも沈んでても死んだ人たちは喜ばないだろう?



「ヴィグナ、今回亡くなった人の家族には報奨金を……あとはサラに言って、遺族の心のケアをお願いしておいてくれ」

「わかったわ。でも、あんたはどうするの?」

「まだ、やる事がある。俺の領地をこんな風にしてくれたんだ。逃げる前に追い詰めないとな……ちょっと商談に行ってくるよ。みんなは今日はずっと騒がせてやってくれ。あと念のために村の警護はまかせるぞ。ガラテアは俺に付き合ってくれ」

「ええ、わかったわ……行ってらっしゃい。あまり熱くならないようにね」




 俺はヴィグナに別れを告げて、ガラテアと共にお土産を持って、馬車へと向かう。カイルは倒した。だけど、まだアズール商会とは話をつけていないのだ。このまま逃げたもの勝ちにはさせはしない。レイモンドにもお礼をしないとなぁ。



「マスター、荷台に入れますね」

「んーーんーー」



 俺が馬車の準備をしているとガラテアが声をかけてくる。その手にはさるぐつわで口を封じられたシルバがいる。彼女は乱暴に荷台に放り投げると俺と一緒に御者台へと乗り込む。背後からは「んーんー」と聞こえたが、アレを見たのだろう、ひときわ大きな声を出して気をうしなったようだ。

 そうして、アズール商会へと向かうのだった。



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申し訳ありません、宣伝になりますが、カクヨムに異世界ファンタジーの新作を上げました。


「悪役好きの俺、推しキャラに転生!ゲーム序盤に主人公に殺される推しに転生したので、俺だけ知ってるゲーム知識で悪役令嬢、偽聖女を従え、悪役達の帝王として君臨す。おい、なんで主人公のお前が舎弟になってんだ?」



という新作を投稿してみました。異世界転生の悪役に転生物です。悪役好きの主人公が推しの悪役に転生したので、ゲーム知識を使って破滅フラグを防ぐ感じです。


今回は新しいタイプのヒロインにも挑戦してみたので、読んでくださると嬉しいです。

 よろしくお願い致します。


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