20.告白

「あー、訓練はどうだ、順調か?」

「ええ、銃っていう武器はすごいわね。特にライフルって言うやつは魔法が使えなくても、魔法使いと戦うことが出来るいい武器になるわ。今、アグニに頼んで、高台を作ってもらっているからかなり活躍すると思うわ。ハンドガンも、弓より楽に撃てて、乱戦では活用できそうね。これなら実力差を覆せるかもしれないわ。グレイスの方はどう? 鉱山はものになりそう?」

「ああ、鉱山技師を何人か派遣してもらえることになったから、何とかなりそうだ。これでミスリルやアルミニウム、マジックストーンを自前で用意できるからな。色々はかどりそうだよ」



 俺とヴィグナはそんな事を言いながら、歩く。やっべえ、雰囲気もくそもないんだが!? 久々に二人っきりになったと言うのにお互い仕事の話ばかりである。

 だけど……ここから戦いがおきるかもしれないのだ。準備でこれなのだ。より忙しくなるだろう。その時に伝えておけば良かったと後悔はしたくない。



「ヴィグナ……ありがとうな」

「なによ、いきなり……変な物でも食べたの?」



 俺のことばに彼女は怪訝な顔で毒舌を吐く。この女が俺を好きってやっぱり勘違いじゃない? まあ、勘違いでも俺のやる事は変わらないんだが……



「一緒にここについてきてくれたことだよ。色々生活が変わってたいへんだったろ? お前が来てくれなかったら俺は野垂れ死んでたかもしれん」

「そうね……だけど、後悔はしていないわ。元々私はあんたのおかげで近衛騎士になれたし……あんたのために強くなったんですもの」

「俺のためか……」

「そう、あんたのためよ。だから、元から城に残るなんて選択肢はなかったわ」



 そう言う風に語る彼女の顔が赤いのは夕日のせいだけではないだろう。そして、俺の顔も同様に赤いのかもしれない。

 てか、いい雰囲気じゃない? この流れなら言える気がする。



「あのさ……戦闘が落ち着いたら、伝えたいことがあるんだ。聞いてくれるか?」



 俺は震える声でそう言った。というか声が震えてしまったというのが正しい。心臓が急激にバクバクする。

 てか、反応が無いんだけど? あれ、聞こえなかったか。そう思っていると、足を止めたヴィグナが俺の肩を掴む。え、なにこれこわい。



「ダメよ、話があるなら今言いなさい」

「え……は……いや、こういうのはなんかもっと色々タイミングがあるだろうが!!」

「知ってる? そう言うのって死亡フラグって言うのよ。それに……私はその言葉を何年も待っていたの。もう待てないわ。今言いなさい。さもなくば私の方から言っちゃうけどどうする?」


 

 そう言いながら彼女は俺をまっすぐと見つめてくる。思わず身を引こうにも逃がすまいと肩を掴まれている。てか、両想いなはずなのに何で俺は脅迫みたいなことをされているんだよ!!

 俺は呆れ半分で彼女を見つめると、唇を噛んでおり、腕は震えているのに気づく。ああ、くっそ、そうだよ、こいつはツンデレなんだ。素直になれなくてツンツンとしているけど俺の事を思っていてくれて……そして、不安なのだ。

 言葉にしないと伝わらないことはある。ヴィグナがガラテアと自分を比べてへこんでいたことも、ボーマンが俺が決断するのを待っていたから武器を作らなかったことも言葉にしなければわからなかった。だから、俺はようやく、自分の気持ちを口にする。



「ヴィグナ大好きだ。多分、ずっとお前の事が好きだったんだと思う。だから……その……結婚してくれ」

「ありがとうグレイス……私もあなたの事がずっと好きよ。でも、結婚はしないわ、あなたは第三王子であり、このアスガルド領の領主なのよ。第一夫人はもっと身元のしっかりした人にしなさい」

「はぁぁ、お前この流れで振るのかよ!! てか、お前は俺が誰かと結婚してもいいのかよ……」

「いいはずないでしょう……でも、これが領土を発展させるには一番なのよ、その代わり……一番最初は私がもらうわ。その代わり私の全てをあげる」

「それってどういう……いってぇ」



 俺が何かを言う前に彼女の顔が迫ってきて唇と唇がぶつかった。歯が当たって痛いんだが。てか、これって……キスだよな……

 彼女も勢いが付きすぎて痛いのか、涙目で口を押さえている。なんか思っていたキスとは違ったが、まあ、そういう事だよな。こんな時でも俺の事を第一に考えてくれているんだろう。それは嬉しいけどちがうんだよなぁ。



「だったら、俺がそんな事を考えなくてもいいくらい成り上がればいいだけだろ。俺はお前と結婚するからな」

「そう……まあ、期待して待ってるわ」



 そういって憎まれ口を返す彼女の顔は真っ赤だった。そうして、彼女を引き寄せて今度こそちゃんとキスをする。これで負けられない理由がまたできてしまったな。

 そして、俺達は二人で仲良くてをつなぎ屋敷へ帰るのだった。帰宅した後、それを見たガラテアや、ボーマンにノエルまでが何やらにやにやしていたのが恥ずかしかった。


 



 そして、その数日後、エドワードさんから手紙が来た。その内容は第二王子であるカイルが街にやってきたそうだ。アズール商会はあいつに頼った。そして、あいつの魔法使いで固められた近衛兵達は強力で……何かを侵略するのが得意だ。

 つまりはそう言う事だろう……決戦の時が近づいてきたのだ。

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