10.発見

「うおおおおおお、暗いし、なんかむっちゃ蝙蝠が出てくるんだが!?」

「大丈夫ですか、マスター。私が目を光らせましょうか?」

「え、マジ? そんなことできんの?」

「いえ、大変申し訳ありません、今のはロボジョークです」

「ごめん、どう笑えばいいかわからないんだが!?」

「やかましいのう、今松明をつけるから黙らんか」



 そうやって俺達はさわぎながらも、鉱山の中を歩いて行った。幸いにもソウズィの残した資料と俺の『世界図書館』によってあたりをつけた鉱山の入り口はまだ残っていた。



「それにしてもすごいのう、ここはずっと放置されていたんじゃろ? よく壊れなかったのう」

「巣食っていた魔物もいたがガラテアがあらかた倒してくれたしな。ジャイアントバットで作物作ったらそらを飛べたりはしないかな?」

「マスター、魔物を倒したのでご褒美が欲しいです」

「おー、ありがとうな」



 俺はいつのようにガラテアの頭を撫でる。さきほどまですさまじい戦いをしていたのがまるで嘘のように可愛らしい顔でおねだりをしてくるのに俺は思わずにやけてしまう。

 ここに巣くっていた魔物をあらかた倒してくれたおかげで、探索も楽に進みそうである。ボーマンも驚いていたが、ソウズィが異世界の知識で坑道を作ったからか、道が全然壊れていないのだ。



「ふむ、ここらへんでいいかのう。ほれ掘るぞい」

「おお、わかった。だけど、ただの壁じゃないか」

「いいからやってみるんじゃ。この先に鉱石があると儂の勘がいっておるんじゃよ」



 ある程度道を歩くと、ボーマンが荷物を置いてピッケルを取り出して俺の方にも渡してくる。これはただのピッケルではない。ミスリルのピッケルである。

 ボーマンのよりも一回り小さいそれは、俺専用に作ってもらったピッケルである。しかも、これにはヴィグナが土の魔法をかけてくれているため、弱い力でも簡単に土を掘れるようになっているのだ。

 顔は拗ねたままだったけれど、「これがあんたを助けてくれるわ」と言ってピッケルに魔法をかけてくれた彼女を思い出して俺はにやける。帰ったら色々と話さないとな……



「フレーフレー、マスター!! フレーフレー、ボーマン様!!」



 手持ち無沙汰なガラテアは笑顔を浮かべながら聞きなれないエールを送ってくれる。異世界の応援だろうか。だけど、不思議と気合が入った。ガラテアはプログラミング? された事以外は力の加減ができないので、こういう作業には向いていないのだ。迂闊に手を出せば坑道ごと破壊しかねないからな。


 そして俺は慣れないながらもガンガン掘り進む。しばらくするとガキィンという音と共にそれまでとは違う音が響いて、見慣れない石が出てきた。漆黒のように昏い変わった石だ。



「おい、ボーマンこれはなんだ?」

「うん? ああ、それはクズ石じゃな。加工もしづらいし、売っても二束三文にもならんぞ。だったらこっちを手伝ってくれんかの? ミスリルがみつかったぞい」



 まじかよ……と思いながらボーマンの方を見ると光り輝く鉱石の原石を掘り当てていた。流石ボーマンである。俺はちょっと悔しさもあり、なんか使い道がないかなとクズ石に触れて『世界図書館』を使用する。


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マジックストーン 硬くて加工がしづらいが、魔法を溜めておくことができる。

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「はぁぁぁぁぁーー?」

「どうしたんじゃ、また頭でも打ったのかのう?」

「またってなんだよ!! 頭打った事なんてあんまりねえだろ、なあ、ボーマン。このクズ石にさ、魔法を放ったやつとかいなかったか?」

「いるはずないじゃろ、そもそも魔法を使える人間はかぎられておるからのう」

「だよなぁ……ふはははははは、つまり他の奴らはこれの本当の価値を知らないわけだ。ボーマン!! この戦争は勝ったぞ!! この石は魔法をためておけるらしいぞ!!」

「何と戦っているんじゃ、お前さんは……」

「マスターが死亡フラグのような事をいってますね、それよりも、マスターこれを調べていただけないでしょうか? 父がこれを大事に扱っていたのですが……」



 ボーマンどころか、ガラテアにまでちょっと冷たい反応をされて傷つく。いや、まじですごい発見なんだけど……みんな冷たくない? まあ、後で効果は実験する必要があるけどさ。

 それはそれとして、ガラテアが持っているのは赤褐色の粘土の固まったようなものだ。俺は触れながら『世界図書館』の使用をする。


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ボーキサイト 鉱石の一部であり、異世界ではアルミニウムの原材料として使われる。

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『おめでとうございます。アルミニウムの知識に触れたためアルミニウムへの理解度があがりました。その結果アルミニウムの作成方法が解禁されました』



 は? アルミニウムの原材料だって? 世界図書館の言葉と共に俺の脳内にアルミニウムの作成方法が俺の脳内に流れ込んできた。



「マスター大丈夫ですか? その……何か変な事が……」

「いや、よくやった。ガラテア、おまえのおかげで世界の産業は一歩進むぞ。ボーマン、ミスリルとクズ石……いや、マジックストーンとこいつを持って帰るぞ。ここは宝の山だ。さっさと開拓を進めよう」



 そして、俺達は鉱山をあとにする。新しい技術や鉱石が手に入り俺もボーマン、ガラテアは上機嫌である。さっさと鉱山の開拓の準備をしよう



「そういや、鉱山を掘ってて思ったんだが、ピッケルでも掘れないやたら固い所もあったよな。そう言う場合はどうするんだ?」

「ああ、そういう場合は土の魔法で掘るか、火の魔法が得意な奴が岩を爆発させるんじゃよ。とは言っても、威力が高すぎると生き埋めになるから専門家じゃないと無理なんじゃがな……」

「じゃあ、ヴィグナじゃ無理か……」



 ようはそれ専門に威力を調整できる魔法使いが必要という事だろう。もちろん当てなんてないので、エドワードさんに相談をしてみるか……そう思ったときに、俺は疑問に思う。魔法のない異世界ではどうやっているんだろうか?



『その場合は火薬などを使用して爆破をします』



 世界図書館からは即座に返答が帰ってくる。俺はその返答に少し苦いものを感じた。火薬ね……おそらく俺の胸元の銃にも使用されているものだ。そして……簡単に武器になるであろうものだ。多分ボーマンと力を合わせれば作れそうな気はする……だけど、そんなものを作っていいものだろうか? 人を殺す武器になってしまうのではないだろうか?


 そんなことを考えていた時だった。



「マスター大変です!! 村の方で火の手が上がっています」

「はぁ!?」



 山の上からは、俺の目ではとてもではないが村は見えない……でも、ガラテアが言うなら本当なのだろう。まさか、火竜でも攻めてきたのか?



「ボーマン!! 荷物は任せる!! ガラテア、俺を運べ!!」

「坊主!! 戦闘能力の無いお前さんが行っても……」

「わかってる。でも、あそこの領主は俺で……襲われているのは俺の領民なんだ!! それに俺には銃がある!!」

「わかりました、マスター急ぎます!! ボーマン様ご安心を!! グレイス様は私が意地でも守ります!!」



 そう言うと彼女は俺を背負って猛スピードで駆け出した。頼む……みんな無事でいてくれ……領民たちの顔が……そして、ヴィグナの顏が思い浮かんだ。

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