21.ソウズィの後継者

何だろうこの雰囲気……一気にみんなの熱が冷めたんだが……俺がどうしようと思っていると、ノエルがニールに笑顔を向けて少し震えながら口を開く。



「大丈夫だよ、お兄ちゃん……わかりました、私はグレイス様のメイドになります。なんでも申し付けてください」


 

 少し震えた笑顔でそう言うと彼女は笑顔を浮かべるが、その表情は硬い。え、待って? 俺ってそんなに嫌われてる? クッキーあげたりして、さわやかで親しみある優しい領主アピールしてたよね? うっそでしょ。顔か? 俺の顔があかんのか? 

 俺はほぼ初対面の女の子に嫌われてしまい、泣きそうな顔をしてヴィグナに助けを求めると、彼女は溜息をついて、やれやれといった。



「ノエル……あなたが思っているような心配はないわよ、こいつは完全な善意で言っているから……その言葉通りただの使用人として雇おうとしているのよ。もしも、無理やり変な事をしてきそうになったら私に言いなさい。こいつのをちょんぎってあげるわ」

「え……そうなんですか? その……純粋にメイドとして雇っていただけるという事ですか?」

「当たり前だろ、それ以外に何が……あー、そう言う事か……」



 俺は反論をしかけて察した……さっきアグニがいっていたな……『ちなみに孤児院から拾われた場合は、せいぜい奴隷に近い召使になるか、慰みモノとか』とか……普通メイドって言うのは貴族の令嬢が奉公にきたり、身分のはっきりした人間がなるものだからな……難民をメイドにするっていうことで勘違いをさせてしまったのかもしれない。

 あほかーーー、そんな無理やり変な事をするはずがないだろうが!!



「ああ、そうだ、ノエルには普通のメイドをやってもらうよ、主に料理メインだな。それとみんなに一人、紹介をしたい領民がいるんだ。彼女の存在を認めてもらわねばこれまでの話はなしだ。ガラテア入ってきてくれ」



 俺は変な雰囲気を払しょくするように咳ばらいをしてから、ガラテアを呼ぶ、彼女は待ってましたとばかりに俺の横に並ぶと、銀色の髪の毛をたなびかせながら優雅にお辞儀をする。



「ご紹介にあずかりました。私はグレイス様の……マスターのメイドをさせていただいているガラテアです。よろしくお願いします。ちなみに私を怒らせると爆発するので気を付けてくださいね」

「……」

「今のはロボジョークです。爆発はしません、よろしくお願いします」



 そう言うとガラテアは再度お辞儀をする。自分でも滑ったと分かったのか少し顔が赤い。いや、可愛いんだけどさ、初対面の人達絶対ひくだろ、誰だよ、こんなくだらない事をおしえたのは……

 俺が慌ててフォローをしようとすると、なぜか、皆ガラテアと俺を尊敬の目で見つめている。え、どうしたの? ロボジョーク受けた? 



「すごい高性能なゴーレムですね、グレイス様が狂王ソウズィの技術を受け継いだというのは本当だったのですね!!」

「すごい、本当にゴーレムなのか、これが!? 人間みたいじゃないか!!」

「噂は本当だったんだ、グレイス様すごい!! 誰も扱えなかったソウズィの遺物をつかいこなせるなんて……」

「いえ、私はゴーレムではありません、ロボットです」



 ガラテアを囲んでみんなが騒ぐ、あれ? みんなあっさりガラテアを受け入れている? ああ、そうか……エドワードさんの仕業だろう、俺に箔をつけるために狂王の知識をついだという噂も流したからみんなガラテアの存在を受け入れやすくなっているのだ。そして彼らは、何かを期待するかのように俺を見つめている。

 だったら都合がいい。俺はゴーレムと言われて複雑そうな顔をしているガラテアに目をあわせてうなづく。



「そうだ、俺が狂王ソウズィの後継者であり、このアスガルドの領主グレイス=ヴァーミリオンだ!! ここに誓おう、俺はお前たちを守ると!! だから安心して、俺の元で働くといい!! お前らの安全と繁栄はこの俺が保証する!!」



 俺の言葉に難民たちが歓声をあげて、喝采する。それを見て、俺は胸が熱くなるのを感じた。こんな風に肯定的な目で見られることは今までなかったのだ。

 一時は、どうなるものかと思っていたが、仲間たちとここにきて、ガラテアとソウズィの遺物に出会いようやく、俺は自分の居場所を作ることができたのだ。

 澄ました顔をしているヴィグナと目が合うと彼女は珍しく嬉しそうに領民たちにたたえられている俺を

眺めており、ガラテアは俺の隣で満足そうにうなづいている。後はボーマンがいれば完璧だったんだがな……

 そして、ここから本格的に俺の開拓は始まるのだ。俺は今の光景を忘れないだろう。まったくの新しい領民を迎えて本当の意味で領主になったこの日を……



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領地情報

 領民:8名(5名追加)

 

異界理解度 レベル3

(触れたものがどのようなものか、またどのように扱うか、及び、原材料に触れた際に低レベルならばどのように使用できるかを理解できる)

 


技術:異世界の鋳鉄技術

  :銃の存在認知→銃の基礎的な構造理解

  :ロボットの存在認知

  :肥料に関しての知識

  :アルミニウムに関しての知識

  :合金の作り方

  :ミスリル合金

  :ゴムの作り方、加工方法

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