18.難民

申し訳ありません、前回、先のはなしを投稿してました……17話差し替えました。


気を付けます。


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 馬車を降りて俺が彼らに話しかけるとやたらと驚かれてしまった。なんでだ?



「なあ、ヴィグナ、俺ってそんなに王族っぽくない? 今日とか礼服なんだが……」

「そうね……その胡散臭い笑みと、無駄に高そうな服装からして詐欺師っぽいのよね」

「想像以上に辛辣!? お前な、俺相手なら何言っても傷つかないって思ってない?」

「ああ、いえ……違うんです。わざわざ領主様が、馬車から降りて私達と話してくれるっていうのが信じられなくて……」



 俺とヴィグナがいつものように軽口の応酬をしていると、リーダー格らしき人間が慌てて口を開く。敬語が怪しいのはそういうのに触れる機会が少なかったからだろう。まあ、商売をしていたり、貴族とかと話さない限り使わんしな。俺も正直気にしていない。



「まあ、領主って言っても領民は3人しかいないしな、偉そうにしていてもしっくりこないだろ。それで君たちは一体どうしたんだ? 名前は?」

「ああ、俺の名前はアグニと言う……言います。俺達を受け入れてくれる地を探しているんだ。街で情報をあつめていたらあんたンところが領民を探しているって聞いてダメもとできたんだが……」



 アグニとやらは自己紹介をしながら事情を説明し始めた。やはり、彼らは難民の様だ。その証拠と言うわけではないが、元々屈強な体格だったろうに、今はロクに食べていないのか、痩せ細って骸骨のようだ。その後ろの人々もやせ細っているうえに子供もひもじそうにしている。



 詳しい話を聞くと、どうやら元々隣国との国境いの森にある開拓村に住んでいたのだが、戦争に巻き込まれそうになったため、若い連中だけで村を抜け出したらしい。まあ、徴兵されたり、他国につかまったら奴隷にされたりするかもしれないからな。その判断は正しい。



「その割にはずいぶん人が少ないな。開拓村だったらそれなりに、人手は必要なはずだろ?」

「大人数では目立つし、受け入れも難しいだろうということで何グループかにわかれたんだ。後はその……長期間の移動や野宿、野盗などにも襲われ死んだ者も多い……」



 そう言うとアグニは悔しそうに拳を握りしめる。守れなかった人々の事を思い出して、リーダーとしての責任を感じているのだろう。

 彼らが村を出るきっかけになった戦争を主導しているのって絶対父か兄だよなぁ……となると他人事ではない。あのアホたちのせいで困っている人たちがいるのだ。民をないがしろにして何が王だよ、死ね。クソ共が!!



「あ……」



 俺が内心毒づいている時だった。くぅーという可愛らしい声が鳴り響いて、難民のうちの一人の少女が顔を真っ赤にしてお腹を押さえた。

 相当過酷な旅だったんだろうな、この子は俺よりも年下みたいだし……



「お腹空いたんだな、甘いものは大丈夫か? よかったらこれを食べるといい」



 俺はなるべく優しい笑みを浮かべるように心がけながら、少女にハリソン商会でお土産にもらったクッキーの入った袋を渡す。すると彼女は一瞬手を伸ばして迷ったように俺の顔をみて様子をうかがう。



「え……こんなものをもらっていいのですか?」

「ああ、他の人たちも心配をしないでくれ。屋敷の中に食料なら十分にあるからな。遠慮なく食べてくれ」

「それって……俺達を受け入れてくれるっていう事なのか? その……こう言ってはなんだが、俺達は飢えでボロボロだ。すぐに労働力にはなれないぞ、本当にいいのか?」

「もちろん問題ないさ、街で俺が人を受け入れるという話を聞いてきたんだろ。それにすぐには動けなくても、君たちには開拓をしたという経験がある。俺はまだまだ素人だからな。色々と話を聞かせてくれ。それだけでだいぶ助かるんだ」

「ありがとう……あんたは救世主だ……」



 俺が手を差し出すとアグニさんは泣きながら俺の手を握った。力が入りすぎて痛いが俺は何とか微笑みをキープする。もちろん、俺だって無策で難民を加えるわけではない。ちゃんと考えての事だ。



『世界図書館、彼の情報を開示しろ』

『了解いたしました。アグニの情報を開示します』

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村人


アグニ

年齢:30歳

得意分野:大工、リーダー

スキル:なし

情報:開拓村では大工の見習いをやって、同じ見習いのリーダーをやっていた。建物を建てるのが得意で、責任感が強く人望も厚い

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 ほう、大工か……ボーマンも家を建てたりすることはできないことはないが本職には負けるからな。正直ありがたい人材だ。彼の知識は領土で役に立つことだろう。

 『世界図書館』はこの世界の触れた物の情報を開示してくれる。そして、それは人間も例外ではないのだ。俺達にはまだまだ開拓などをした経験を持っているやつらがほぼいない。労働力だけではなく、経験を持った人材も必要なのだ。そういう意味でも難民は貴重である。

 ちなみにこっそりだが、エドワードさんにも使っている。彼を信頼したのは『世界図書館』で信用に値する人間だと判断したからというのも大きいのだ。

 後は他の連中にも理由をつけて握手をして情報を集めるとしよう。ひょっとしたら中にはスキル持ちもいるかもしれない。



「あんたなんかたくらんでるでしょ、悪い顔をしてるわよ」

「してねえっての。では、館を案内するとしよう。食べ物はあるから安心をしてくれ」



 俺はつっこんでくるヴィグナをいなしながら、難民たちに声をかけた。

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