第16話桜星高校③

 学校を出てみんなと途中まで一緒に帰る。


 「蓮、委員会やってよ(笑)」

 「今度あったらなー(笑)」

 「那月だって学級委員になったんだよ」

 「じゃあ、文化祭だったり体育祭の実行委員はやろうかな」

 「お。言質取ったからな!」


 蓮と話しながら帰る中で後ろの方をちらっと見る。3人とも少しだけ気まずそうな感じがある。それもそのはずか。強引だったとはいえ無理矢理断ったからな。僕がやったことだからあんまり責任感じないでほしい。

 静かな那月たちを心配すると


 「ありがとね優」

 「何がだよ」


 僕は笑いながらごまかした。それは心配もあったけど那月の素直な感謝が大丈夫だと感じたからだ。


 「ありがと蓮くん!」

 「ありがとうございます蓮さん」

 「おう、今度菓子でもおごってよ」

 「ちゃっかり貸しを作ろうとするな(笑)」


 笑いあいさっきまでの空気が嘘みたいに和やかになる。

 この時間が僕は好きだ。


 「じゃあ、俺たちはこっちだな」

 「うん、じゃあね」

 「また明日!」

 「ばいばい!」

 「さようなら!」


 那月とこれからの学級委員のことについて話しながら帰った。

 家に帰り夕食時に僕たちが学級委員になったことを菜緒さんに話すと菜緒さんは喜んでくれた。


 「2人で学級委員なんてねぇ。ママ嬉しいわ!」

 「もう!喜びすぎだから!」

 「迷惑かけないようにねなっちゃん。中学の時いっぱい助けてもらってたでしょ」

 「そんなに迷惑かけてないから!」

 「大丈夫ですよ、菜緒さん。那月は頑張れるやつですから。ずっと一緒そばにいた僕が知ってますよ」


 ご飯を食べ終わり僕は食器を洗い自宅へと帰る。

 今日は那月がこちらに来ると言っていなかったので1人で過ごすことになりそうだ。


 風呂から上がりドライヤーをする。今日は大丈夫だ。

 そして配られた書類に目を通し記入していく。保護者のサインや同意書があったので菜緒さんのところに向かう。


 「菜緒さん。この書類にサインってお願いできますか?」

 「今見るねー。ええと、これね」


 菜緒さんは少し晩酌をしていた。菜緒さん書類を一緒に確認してもらう。


 「私のサインでいいのかな?」

 「あ、そっか。中学の時は先生に話してたけど高校はどうかわからないや。提出期限はまだだし、明日先生に話してきます」

 「了解!もし先生が確認で私を呼んでも心配しないでね。予定は空いてるから。それに優くんは大事な家族だもんねー」


 そう言いながら僕を抱き寄せ頭をなでる。


 「ちょ、菜緒さん!酔ってるんですか⁉」

 「えへへ、優くんは偉いねー」

 「な、那月!菜緒さんが!」


 助けを求め那月を呼ぶ。


 「またママ優に抱き着いてる。ママ。優が困ってるから」

 「えへへ。なーちゃん。」 ギュッ

 「はいはい。ごめんねゆう、また面倒かけて」

 「ありがと。助かった」

 「…てかなんでママに抱き着かれて顔赤くなってんの。いつも私としてるよね?」

 「いや、それは…」

 「ふーーん………」

 「こ、こんな時間だしもう帰るね、おやすみ」


 ジト目で見てくる那月から逃げるように帰る。

 家に帰り教科書に名前を書き明日の支度をする。明日から授業が始まるので教科書やノート、筆箱など授業をけるのに必要なものをバッグに詰める。

 支度を終え現在は9時過ぎ。ゲームするにも気分にならないので教科書をパラパラとめくる。こんなこと学ぶんだなと考えているとLINEが送られてきた。


 『今から行ってもいい?』


 送られてきたのは那月からだった。いいよと返事を送りゲームの準備をする。昨日のリベンジを果たしに来るのだろうと。


 コンコンコン


 窓からノックされカーテンを開けるとそこには寝間着姿の那月がいた。


 「開けてー!」

 「おまえ…」

 「ありがと!さっやろ!」

 「危ないからこっちから来ないでよ」

 「気を付けるー。今日こそ勝つから!」


 

リベンジを果たそうと意気込んでいる那月に対して遠慮なくやり、結局10戦やって10勝だった。そこで別のゲームに切り替えた。対戦ゲームではなく協力ゲームをすることにした。


 「そこのコイン取って!」

 「アイテム取っていい?」

 「私がペンギン!」


 2人で協力しながらゲームをしていると気付けば1時だった。


 「今日はここまでにして寝よっか」

 「分かった!じゃあ、はい!」


 僕たちはいつものように抱き着く。1分が経ち離れようとしたら那月が離れようとしない。


 「なつき?」

 「優はさ、私にドキドキしないの?」

 「…ずっと一緒にいたからね。良くも悪くも那月は家族だよ」

 「そっか…」


 少しだけ落ち込んでいるようにみえる那月が僕の顔を見ながら


 「私じゃだめ?」

 上目遣いをされながら言われ動揺する。すると、那月が笑い始め


 「なーんてね!ドキドキした⁉ねぇ!」

 「…ドキドキした僕が馬鹿だった」

 「ごめんね!」


 謝る那月が続けて


 「でも、今日はありがとね。嬉しかった。少しだけ戸惑ってたから。優があんな風に言ってくれて嬉しかった」


 那月はまた僕の胸元に抱きつき言う。


 「ありがと!やっぱり私には優がいないとだめなんだ!」


 感謝しながら笑顔で言う那月に見惚れる。


 「あれ?もしかして照れた?(笑)」

 「うるさい…。早く寝ろ!…おやすみ」

 「うん!おやすみ!」


 笑顔で自分の部屋に戻った那月を見送り、部屋の電気を消して布団に入る。

 高校生になって少し大人びた彼女を見て僕は彼女に抱くその気持ちに今はまだ気づくことはなかった。

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