第9話初めての放課後③
<優・蓮サイド>
午後2時30分。ご飯を食べ終わり授業を受けていたらちょうど睡魔に襲われているであろう時間。お腹を満たし気持ち程度の休憩をして僕たちは店を出た。
僕たちはこれからどうしようか悩んでいた。
「さて、これからどうしよっか」
「そうだね。体を動かすのもいいけどさすがにね…」
「すぐに動いたら気持ち悪くなるぞ」
学校が半日で終わったとはいえ、あまり遅くなると菜緒さんに申し訳ない。
それに初日から遊びきるつもりはない。それゆえ、何をするのか迷ってしまう。
「連の楽器を聴いてみたいけどこの時間だと中途半端だし」
「それとも今日はこれで解散するか?俺は楽しかったしそれでもいいよ」
「ん~…」
悩んでいると建物の壁に貼ってあるポスターが目に映る。
そのポスターはUFOキャッチャーの広告だ。それ自体はよくあるものだが、僕が注目したのはその景品である。
~可愛い動物の楽園シリーズ vol.6~
これは可愛い動物のぬいぐるみたちがUFOキャッチャーの景品として手に入るのだ。とても可愛く僕は全シリーズを集めている。
入学の準備などで忙しくすっかり忘れていた。
「蓮、ゲームセンター寄ってもいい?」
「これが欲しいの?」
「うん!可愛くてさ全シリーズ集めてるんだよ!最近は忙しくてわすれてたんだけど。しかも今日までじゃん!……行ってもいい?」
「おまえ意外と可愛い趣味してんな(笑)。いいよ。いこうぜ。優の腕前も見たいし、なんなら他のゲームで遊べるし」
UFOキャッチャーをするべく僕たちはゲームセンターとカラオケが複合している施設、SE〇Aへとやってきた。
ここの店舗は他に比べいろんなアーケードゲームや音楽ゲームメダルゲームなどたくさんのゲーム機がそろっている。
だが、今回の目的は可愛い人形をとることである。僕は少しだけ気合を入れる。
「優、ちょっとだけ本気になってない?(笑)」
「当たり前だよ。ゲームとは常に敗北と隣り合わせだよ」
「なんでそんな達人みたいなことを言うんだ(笑)」
僕はとりあえず様子見として2000円分を100円玉に両替をする。
そして目的の台へとやってきた。vol.1の時からここでやっているため景品の配置の癖は初心者ながら分かっているつもりだ。
「普段からゲームセンターに行くの?」
「ううん。このぬいぐるみだけは別なんだ。テレビで特集されてるの見てめっちゃ可愛くて一瞬で心惹かれて。新作が出るたびにここにく来るんだ」
「じゃあ、腕前もそこまでじゃないのか」
「そうだね。でも案外このぬいぐるみは取りやすいように設定されてるみたいなんだ。やり始めてから3000円以内でとれるんだ」
「1つのぬいぐるみに3000円か。買うのと同じくらいか」
このUFOキャッチャーは500円分入れると1回サービスされる仕組みなので僕は迷わず500円分いれる。
「よし、頑張りますか」
「おー、とりあえず高みの見物させていただくわ。」
僕はこの景品のためだけにYouTubeで動画を見て勉強している。
始めた時から景品をとり続けてだんだんかかるお金も減っている。
今日の僕ならいけるはずだと自信をもって挑戦する。
しかし…………
「…………」
「…………」
「今いくら使った……」
「…………2000円」
全然取れない。
今回のぬいぐるみはクジラで動物の中でも大きいためかぬいぐるみ自体も大きくなっているため上手に落とすことができない。
「ラッコやカメとかはそんなに難しくなかったのに……。まさかこれは夢…?」
「現実だ。逃げるな(笑)」
「う~~。とりあえずもう1000円両替してくる」
「行ってら~」
1000円分を両替しに行く。高校生になったばかりだというのにお金が徐々に消えていく。使いすぎると菜緒さんに怒られる。
最後の1000円だと思いながら戻る。
するとなぜか蓮の両腕に2匹のクジラがいることに気づく。
…………は?
「え、ちょっ、蓮。それって………」
「……いや、あのー、そのー、なんていうか……。俺もやりたくなって。それで試しに100円入れてやってみたら1発で取れて。でお前が帰ってきてなくなってるのはまずいって思って店員さん呼んで新しく配置してもらって。それで試しにもう100円いれてやったら取れて……」
「…………」
僕が言葉を失っていると店員さんが来た。
また新しく景品を入れてもらうようだ。
「その~。2匹取れたわ!」
「取れたじゃなーい!!」
僕は悔しくなってやつあたりする。
「僕が2000円で取れてないのになんで蓮が200円で2匹なんだよ!」
「これも日頃の行いってやつ?(笑)」
「僕ふだんそんなにだめなのかな⁉」
しばらくしておちつてもう1回やる。
今度は蓮のアドバイスをもらいながらやることにした。
「そうそう。そこをクレーンに引っかけて」
「お、おお、おおおおーー!取れたーー!!ありがと蓮!!!!」
蓮のアドバイスを受けてやると僕も1発でとれた。
欲張ってもう1個取ろうとする。
1回目は失敗するも取れやすい位置になり2回目で取ることができた。残り2プレイ分あったため挑戦し僕はもう1匹取ることができた。
こうして蓮の腕には2匹、僕の腕には3匹のクジラが抱えられている。
「まさかの想定外だったな」
「1番驚いてるのは僕だよ。今度から新しいのでたら蓮を誘うから覚悟しといてね(笑)」
「まじかよ(笑)。まあ、それも悪くないか」
時刻は4時半を指している。
解散するにはちょうどいい時間である。
「そろそろ帰ろっか」
「そうだな、こんだけ盛り上がったしな(笑)」
満足し帰ろうと出口に向かおうとする。
出口の横にあるエレベーターが止まり、扉が開く。
「あれ?優じゃん!なにしてんの?」
「優さん?」
「優くんと蓮くんだ!」
そこから降りてきたのはまさかの人物たちであった。
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