第6話自己紹介②

 志乃先生が手をたたき、ようやく笑いがおさまる。


 「はいはい、みんな落ち着いたね!じゃあ、百崎くんから再開しようか!」


 こうして蓮の自己紹介が始まるわけだが、いまもあいつは思い出し笑いをしていてまともにしゃべれる状態じゃなさそうだが大丈夫かな。


 「えーと、天美中学出身、百崎 蓮です。部活はサッカー部に入ってました。俺も入部するかは決めていません。趣味は歌が好きなので聴いたり歌ったりしてます。最近は花を育てることが楽しいです。あ、俺はあまり驚かないので大丈夫です(笑)。

これから1年間よろしく」


 と笑いながら自己紹介を終えて席に戻ろうとする。みんなもさっきのことを思い出すかのように笑いながら拍手をする。さっきの被害者は僕なんだけどな。

 すれ違い様に’’ごめん’’とあやまりながらウィンクをする蓮。僕はそれを見て蓮の横っ腹を少しだけ強くたたく。


 「お前、あとで覚えとけよ」


 笑いながら伝え、蓮は席に戻る。

 さっきの一件もあり場の空気が和み、リラックスしながら自己紹介をすることができている。結果オーライなのか?


 「はい、じゃあ、残り2人!最後までちゃんと聞いてねぇ。

じゃあ、水瀬さん、よろしくね!」

 「はい!」


 元気に返事をし、前に出る。

 男子がざわつく。それもそのはず。那月は可愛いのだ。身長162㎝でスタイルもいい。髪型は大人っぽいひし形ボーイッシュヘアで容姿だけでもみんなが注目するのは当然だ。あと補足をするなら人より少しだけ胸がでかいことだろう。男子たちの目が集まるのも仕方ないだろう。

 僕はそんなことないけど。……ほんとだよ?


 「初めまして!優と同じ神谷中学出身、水瀬 那月です。部活はバスケ部でした。高校では違う部活に入ろうと思います。好きなことは運動したり、ゲームしたり、

お菓子作りすること、たくさんあるけど楽しく過ごすことが好きです!

私も驚かないので大丈夫です(笑)!これからよろしくね!」


 拍手を受けながら席に戻る那月。それと同時に僕の方を笑いながら見てくる人もいる。那月も僕の方をにやにやと見てくる。後ろの男も笑い声を抑えるために必死である。

 ………君らは人をいじめるのが好きなのか。



 そうして最後の1人の自己紹介も終え、志乃先生が話す。


 「はーい、みんなありがと。改めてこれから1年間よろしくね!

それじゃあ、話を切り替えて、大事な書類の配布や今後の日程について話してくね」


 真面目な話になり、気持ちを切り替えて話を聞く。

 自己紹介と合わせて1時間半がたち、ホームルームも終わりに近づき最後に先生から僕たちに対して言葉をかけてくれた。


 「みんなこれから高校生として今までになかった新しいことに挑戦することになります。挑戦するたびに壁にぶつかることもあると思います。1人でつらいこともあると思います。逆に大人数でいて苦しいと感じることもあると思います。そんなときは1度休憩して自分を見つめなおしてください。そして、行動に移してください。もしそれが不安だったら親や兄弟、友達に相談してください。恥ずかしかったり、言いたくなかったら先生に相談してください。必ず力になるとはいえませんが、話を聞いてあげることはできます。みんな私の大事な生徒です。

 そして、何事にも楽しんで取り組んでください。。はじめから諦めたりやらないのはだめです。有名な言葉で『やらない後悔よりやる後悔』と言いますね。その言葉通り、楽しみながら挑戦しましょう!できれば友達と一緒に楽しんでください。その思い出はあなたたちの財産になります。

 長くなったけど、みんなこれからよろしくね!」


 志乃先生の話した言葉ことは僕たち生徒に確実に響いただろう。

 みんな志乃先生が好きになっただろう。僕も信頼できる先生だなと感じた。


 「じゃあ今日のホームルームは終わりです!今日配布した提出物も期限までにちゃんとだしてね。忘れずに親に渡してね!えぇと、まだ学級委員は決まってないから決めるまで代理でやってくれる人いないかな?」


 先生の話を聞いた瞬間、いやな予想をしてしまった。

 その予想を覆すために僕は先生に異議を唱えようとするがその思いは

2人の小悪魔によって叶わなかった。



     「「優がいいと思います」」



 予想通り那月と蓮が僕の名前を挙げた。早すぎるだろ!言うのが!

 クラスメイトもいいんじゃないかなと賛成する。

 このままではまずい。まだ、先生に言えばたすかると思ったが、


 「夜空くん、いいかな?」


 先生が目を輝かせながら僕に聞いてくる。

 …………逃げ場がない(泣)。


 でも人からお願いされるってことは頼りにされていることだろう。

 そうじゃなくても仮だから大丈夫だろう。


 「はい、僕がやりますよ」


 こうして僕は学級委員(仮)となった。


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