第5話自己紹介①

 教室に戻りホームルームが始まる。


 「えー、まずはみんな入学おめでとう。3組の担任をつとめる

梅原 志乃(うめはら しの)です!志乃先生って呼んでね!私も今年で2年目でまだまだ不安だらけだけど精一杯頑張るからみんなも一緒に頑張ろう!1年間よろしくね!」

 「「お願いします!」」

 「やべー、女の先生だ!」

 「しかも可愛い!」

 「当たりだろ!」


 男子の熱が上がる。やっぱり思春期の僕たちには女性の先生が1番うれしいのだろう。それを見ている女子は少し引いた目で見ている。そんな中で那月が僕の方を見てくる。口パクで何か伝えようとしてる。


 ’’あんたも好きなの?’’


 そんなんじゃないと僕は全力で首を横に振る。


 ’’ばーか’’


 笑いながら言って那月は周りの女子との会話に戻っている。

 なんでそんなこと言われなきゃいけないだ、と自分の頭で考える。いや、分かるわけないだろ。僕はそういうの好きじゃないんだ。


 「はい!それではみんなに自分のことを知ってもらうために自己紹介をしてもらいます!内容は、名前と出身校と部活について、趣味や好きなことを話してもらおうかな。部活は何部に所属していたか、入るつもりなのか教えてくれると嬉しいな!

じゃあ、いきなりだけど窓側の席から順番にいこっか!

話すときは前に出てきて話してもらいます!」


 前に出て話すのは想定外だったのか、えぇーと声を漏らす人が何人かいる。後ろにいる男も驚きを隠せていないようだ。不満そうにするもみんな前に出て自己紹介をしていく。もともとするつもりで考えていた人もいれば、その場で考えて言っている人もいる。僕もその1人、何も考えていなかった。けれど、自分が普段休日にやっていることを話せばいいだけだ。何も難しいことはない。

 そうしているうちに前の人の自己紹介が終わる。


 「はーい、ありがとう。1年間よろしくね!次、夜空くん!」

 「神谷中学出身、夜空 優です。部活はバスケ部でした。入部するかは決まっていません。休日は運動したり、歌ったり、演奏したり、ゲームしたり、本を読んだりして過ごしています。あと、驚かされるのが苦手なのであまり驚かさないようにしてください。これからよろしくお願いします」


 そう言って拍手されて自分の席に戻ろうとする。僕は昔から那月に驚かされ続けて人からどっきりされたりするのが苦手になった。念のためを思い、自己紹介で言っておこうと思っていた。

 だが、僕はここで大誤算をした。

 自らの弱点をばらすことで何かを仕掛けようとする2人の思惑に気づかなかった。

 蓮が前に出ようと僕とすれ違おうとする。

 その瞬間


 「わあっ!!」

 「うわあああぁ!!!!」


 肩を思いっきり叩きながら大きい声で僕を驚かしてきた。

 僕は突然のことでびっくりし、その場で転げた。

 蓮は驚かせたことに満足しているのか思いきり笑っている。

 クラスメイトもびっくりしていたが、その中で蓮のほかにもう1人だけ笑っているやつがいた。そいつに関しては笑いじゃなくて大爆笑だ。


 「あはははは!!優、驚きすぎだって!お腹痛い!」

 「まじか優!そんなに驚くのか!?駄目だ!我慢できない(笑)!」


 那月と蓮は周りの目を気にせず、笑っている。

 クラスメイトも徐々に僕の驚き方に笑い始めた。


 「そんな驚くか!?」

 「やだー!大丈夫?(笑)」


 笑いに包まれている状況でやっと自分が驚かされたことに気づいた。


 「蓮!おまっ!驚かすなっていま言ったよな!?本当に苦手なんだって!!

那月に関しては笑いすぎなんだよ!!そもそも!こうなったのもむかしっからお前が驚かすからだろうがー!!(↑↑↑)」


 興奮のあまり声が裏返り、さらに笑いに包まれる。

 最初は我慢していた志乃先生も笑い始めた。

 みんなの笑いがおさまるまでに5分もかかった。それでも2人の笑いがおさまることはなかった。

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