第4話入学式
「それではただいまより桜星高校の入学式を始めます。
新入生が入場します。拍手でお迎えください」
パチパチパチパチ
体育館に入ると沢山の人が僕たちを大きな拍手で迎えてくれた。
「ゆうくーん!こっち向いてー!」
呼びかけられた方を向くと菜緒さんが手を振っていた。手にはスマホを構えており、写真を撮ってくれている。僕もそれに応えるように小さくだが手を振り返す。
「お母さんか?」
「ううん。幼馴染のお母さんの菜緒さん。僕の親、中学の時に海外に転勤になってお父さんだけじゃ心配だって言ってほんとは家族で引っ越すつもりだったんだ。
けど、僕がわがまま言って’’ここにいたい’’って言ったら菜緒さんが面倒見てくれることになったんだ」
「へぇ、いい人だな」
そう。僕の親は海外にいる。僕のお父さんと那月のお父さんは一緒に会社を立ち上げた。会社を大きく成長させようと頑張っているとお父さんたちも思っていた以上に会社が成長し、海外に会社を立ち上げることとなった。その結果、那月のお父さんと一緒に海外に行くことになったのだが、僕は日本を離れたくなかったため、菜緒さんにお世話になることとなった。掃除はできるのだが、ご飯だけはどうしてもつくれなかったため、朝と夜を一緒に食べさせてもらっている。
席に着き、国歌を歌う。あまり声を出したくないため口パクで歌う。
「優、声出しなよ」
「そういう蓮だって口パクじゃん(笑)」
「俺もあまり声は出したくないだ(笑)」
歌い終わると次は在校生が校歌を歌い始めた。桜星高校は文武平等の学校であり、生徒の自主性を重んじることもあり、県内でもトップクラスの人気である。
卒業生に有名人も何人もいるとか。そのためかOBによる支援もすごいらしく、
いろいろな設備も充実している。サッカー場、トラック、野球グラウンド、体育館に至っては新旧と2棟ある。サッカー場に関しては人工芝である。売店や食堂も大きく、教室は冷房も暖房も完備されている。それだけでなく、自然も大切にされていてちょっとした広場のような場所もある。学校としての規模が大きい。
生徒数は約800人。1学年約260人である。人気が高いが、入学することができる生徒数は少ないため毎年倍率が高い。倍率3倍以上は当たり前と言われるくらい。
僕は家から近く、設備も充実していて進学率も高いためここを選んだ。
校歌が歌い終わり着席し、校長先生や教頭先生のあいさつをきく。
桜星の先生はみんなやさしく、自由にのびのびと成長してくださいと僕たちに期待をしていると言ってくれた。
「最後に生徒会長 嵐山 虹希(あらしやま にの)さんよりあいさつです」
入学式も終わりに近づく。式は1時間ほどで終わってくれたのでありがたい。
「ねぇ、生徒会長2年生なんだって」
「へー、2年生で会長やってるなんてすごいね」
「それに美人で頭がいいんだって!憧れる~!」
近くで生徒会長について話す生徒の会話が聞こえてきた。
「2年生で生徒会長か」
「まぁ、少し珍しいよな。多くは3年生が生徒会長を務めるもんな。」
生徒会長が壇上に上がり、僕たちも起立しお辞儀をする。
「新入生の皆さん、このたびは桜星高校にご入学おめでとうございます」
生徒会長は落ち着きがあり、清らかなひとである。話の中に笑い話もはさみつつ、僕たちを歓迎してくれる。この話を聞いているだけで生徒会長を信頼でき、
桜星高校も素晴らしい学校なんだと実感させてくれる。
「最後に、新入生のみなさんのご活躍を祈念申し上げて祝辞とさせていただきます。本日は、ご入学、誠におめでとうございます」
こうして生徒会長のあいさつも終わり、入学式が終わった。
「なんでだろう。この学校に来てよかったって思えちゃった」
「俺もそう思うよ。ま、ここからさらに楽しい学校生活が始まるんだ。
会長が言ってた通り、のびのびと楽しんでこうぜ」
そのあと僕たちは体育館の前で記念撮影をし、教室へと戻った。
戻る際、柊にも会えた。柊は
「この学校の女性のレベル高くね!?特に生徒会長!いやーこの学校に来てよかったわ!優もいい人見つけたら教えてくれよ!(笑)じゃーな!」
そう言って仲良くなった友達であろう人たちと教室へと向かっていった。
「おまえの友達、なんていうかパワフルだな(笑)」
「ああ(笑)。でもあいつはなんだかんだでいいやつだから。
今度ちゃんと紹介するよ」
「りょーかい!」
僕たちも遅れながらも教室へと向かう。
風によって咲き乱れたさくらが雨のように降り注ぐ。
その風と雨は僕たちを優しく包み込むように舞った。
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