第3話友達

 歩いて15分。僕たちの入学する桜星高校が見えてきた。ここまでくると僕たちと同じ新入生が歩いている。

 学校に着き、僕たちはクラス表みてそれぞれのクラスへと向かう。


 「高校でも同じクラスになるなんてね♪」

 「ほんとだね。まぁ、僕は嬉しいよ。」

 

 僕と那月は同じクラス、柊と美佳は別のクラスとなった。

 柊と中学の時は2年同じクラスだったため少しだけ寂しいと感じる。

 でも、僕はもともと1人でいることも多いため慣れている。それに信頼してる人じゃないと一緒にいたくないし友達にもしたくない。

 そうして僕たちは教室の前に来た。


 「ご入学おめでとうございます。黒板に座席表がありるので確認してください。

8時45分に引率の方が来ますので、それでは自由に過ごしてください」


 入り口で先輩であろう女子生徒に話しかけられる。


 「ありがとうございます!」


 那月が元気よく返事を返し教室へと入る。僕も那月の後についていく。

 教室にはすでに多くの生徒がいる。教室に入ると何人かが僕たちのほうを見る。

分かる。こういう初めての場だと緊張してどんな人が入ってくるのか見たくなる。それに初めましてだからまだ誰とも話せなくて1人になるんだよな。

 そんなことを思いながら、座席表を確認する。

 この学校の座席は男女で分かれているみたいだ。クラス人数は36人。男女はちょうど18人ずつに分かれている。

 僕の苗字は夜空だから後ろの方だろう。探しやすいんだよなぁ。


 「あ、私の席あった!ゆうはあった?」

 「うん、真ん中の列。女子の隣だ」

 「周りに迷惑かけないでよ?ゆうはたまにおかしな行動するんだから」

 「おかしいとはなんだ。楽しくやらせてもらいますよ」


 自分の席に着き、事前に配布されていた入学式の日程表を読む。

 この後9時から入学式が始まり、終わり次第教室に戻り、ホームルームが行われる。中学の時は朝の会、帰りの会と言っていたのが可愛く思える。

 教室の人数は増え始め、それぞれの机に座って近くの人と話す生徒もいる。

 ちょこちょこ話している人を見て那月の方を見る。すると、那月はすでに2人の女子と仲良くしゃべっている。彼女はもともとスタイルもよく、フレンドリーに接するため打ち解けるのが早い。

 あまり見てはいけないと思い、周りを見ると何人かが僕の方を見ていると感じる。


 「なんだろ?」

 「君がかっこいいんだよ」


 後ろから声をかけられて僕は後ろの方を向く。

 振り返るとそこに座っていたのは髪の色が少し抜けた茶髪で、右目には泣きぼくろがあり、顔が整っておりとてもかっこいい男が座っていた。

 「え?」

 「君がかっこいんだよ」

 「…冗談だよね?」

 「冗談で言わないよ。君がかっこいいから何人かの女の子が見ているんだよ」


 突然かっこいいと言われて驚く僕を見て彼は笑っていた。


 「そうなのかな」

 「うん、そうだよ。面白いね、きみ」

 「遊ばないでよ、でも僕よりきみのほうがかっこいいと思うよ」

 「そう?じゃあ、素直に受け取っておくよ。ありがとう」


 彼はとても余裕があり、落ち着ている。大人の余裕というやつだろうか。


 「君はあまり緊張しないの?」


 そう聞かれた僕はわざと慌てたふりをする。


 「そ、そんなことないよ。めっちゃ緊張してる。もう、ほんと、すぐに逃げ出したくなるくらい」


 すると彼は、


 「あはははは!ほんと面白いね、きみ!緊張を解くためにわざとそんなあわてたふりしたでしょ」


 そう言われ、僕は驚く。自分で言うのもなんだが、大抵の人はこれで緊張をとき

仲良くなるのだが彼は違った。僕がわざとやったことを見抜いた。


 「…気づかれるなんて思わなかったよ」

 「分かるよ、それくらい。多分だけど俺ときみは仲良くなれるよ。空気を読み、周りにあわせて仲良くなろうとする。そんなんじゃないかな?」

 「…奇遇だね。僕も君とすぐ仲良くなれそうだ」

 「ああ、似た者同士ってとこかな」

 「それは違うでしょ」

 「え、ひどっ」


 そう言って僕たちは目を合わせ笑いあう。


 「これからよろしく。僕は夜空 優。ええと、」

 「連。 百崎 蓮(ももさき れん)だ。よろしくな、ゆう!」

 「うん。よろしく、れん」

 

 お互いに笑いあう。

 入学して僕に友達と言える人ができた。

 高校生になって初めての友達ができたことに喜んでいると引率の方であろう先輩が入り口から声をかける。


 「もうすぐ入学式が始まります。廊下に出て番号順で並んでください」


 椅子から立ち上がり廊下に出る。


 「いよいよ本格的に高校生だな」

 「うん。いっぱい楽しんでやる」

 「なんだ、意外とゆうは楽しみだったんだ。高校生になること」

 「真面目そうに見えるでしょ?意外とバカやってたりするんだよ(笑)」

 「へえ、ますます楽しみだ。優との3年間が」


 「それでは会場に向かいます」


 そう言われ、僕たちは後に続く。

 連の言う通り、僕はこの学校で誰よりも楽しむ。

 


   

 いつも通り1番楽しむんだ と。

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