第4話

「ところでお兄ちゃん。今日はここで何をしてたんですか?」

「ちょっと、いいアイディアを出すために来たんだよ」

半分本当のことで、半分嘘をついた。

どんなシチュエーションを書こうかと悩んで適当にブラブラしていた、とは言いづらかった。

「なるほど、次回の作品のためですか?」

「えーと……まあ、そんなところかな」

まあ大体はあってるけど。

「ということは、次の作品に私のようなヒロインが出てきたりするんですか?」

「まあそうだね」

「嬉しいです!それっていつになりますか?」

「うーん……まだ決めてないよ。まだ、全然ネタが出てきてないし」

「ああ、そうですよね。なんかすいません……」

「いやいいんだよ。それと、学校とかもあるしさ」

「そういえば、お兄ちゃんって高校生でしたよね」

「まあうん」

「すごいです!高校生であんなシチュエーションが書けるなんて!」

「はは……そんなことないけど」

あれは、ただの趣味丸出しの作品だから、あんなのが売れるはずがない。

「でも、どうして高校なんかに?」

「どうしてっていうと?」

「小説家になりたいなら、高校に通っている時間ってもったいないじゃないですか。高校に行っている時間があれば、もっといい作品が書けると思いませんか?」

なるほど……そういう考えもあったのか。

「いやでも、将来のためにさ」

中卒で働くなんて、結構大変だという話を中学の先生からよく聞く。

「……小説だけで食っていけるなんて思わないし」

ついそんな弱音が漏れてしまった。

「小説家は大変だっていう話は聞きますが、お兄ちゃんほどの天才でもそうなんですか?」

愛莉は、皮肉とかそういうのじゃなく本気で驚いている様子だった。

「まあうん。天才でも、時には苦労する場面があると俺は思うけど」

どんな天才だとしても苦労しないで生きることはない、と俺は思っている。

勝手な想像だけど。

「そうですか……」

夢を追うためには、現実と向き合い何が必要かを考えなきゃいけない。

どんな苦労があったとしても、夢を追い続けたいのなら、それなりの努力をしないと苦労は報われない。

そう思っていると、愛莉があっさりと言った。

「でしたら、私がお兄ちゃんの専属になります」

「……えーと、ごめん。なんて言った?」

突然なことに頭が追い付いていかず、目を瞬きしながら聞き返す。

「お兄ちゃんの作品作りを、私に手伝わせてください」

愛莉は親切にも、別な言葉でそういった。

「それでお兄ちゃんが良ければ、うちで一緒に生活しませんか?小説を書く環境なんか、お兄ちゃんの好みに合わせますし……」

「つまり、生活をすべて面倒見てくれると?」

「そういうことです。どうですか?悪い条件じゃないと思いますけど……」

そうだなぁ……ちょっと待て、一緒ってことは、俺はロリと一緒に生活できるということか?

それはなんか、罪深いものだな。

「うん、いい考えだと思うけど……」

「まだ不満ですか?言ってくれれば、何でもしてあげますけど……」

「ああ、いやそういうことじゃなくて。そんな費用どこから出てるの?」

「私のお金です」

「愛莉のお金?……聞くけど、君っていくつ?」

俺の認識が間違っていなければ、この子は小学生だ。

いや、もしかしたら合法ロリかもしれない。

「小学五年生です」

……だよなぁ。

やっぱり俺の認識は間違っていなかった。

「お金って小遣い?」

「いえ、投資とかをしてます」

あらら、完全に違法じゃん。

「どのくらい稼いでるの?」

「えーと……前の月で言ったら、五千万円くらいでしょうか」

ご、五千万!?

ヤバいじゃん、それってもう一生遊んで暮らせるぞ。

「ほ、ほんとに?」

「ほんとです。なので、お金のことについては心配いりません」

最初に見た時からそうだったけど、ほんとにこの世のものとは思えないほどのお嬢様だなぁ。

しかも、こんなお嬢妻に声かけてもらえるとか普通に奇跡なのでは?

「ふふっ、まだ信じられませんか?まあ無理もないです」

「その、さっきいたおじさんって誰?」

「ああ、社長です。このデパート、うちから少しだけですが出資していて、どんな感じにリニューアルされたのか見てたんです」

社長だと……?重役どころじゃねぇじゃん。

「まあ、社長に案内されなくてもよかったんですけど」

「そうなんだ……その、社長の名前聞いてもいい?」

「高橋一です」

俺はスマホを取り出し、このデパート名とその高橋一と一緒に検索をする。

……ヒット。

写真も出てくる。さっきのおっさんじゃないか。

愛莉が言っていたことは本当だった。

「ふふっ、信じました?」

愛莉はいたずらっぽく笑みを浮かべる。

「……ああ、信じたよ。別に疑っていたわけじゃなかったけど」

「いえいいんですよ。……それでお兄ちゃん」

愛莉は俺の顔をじっと見て、仕切り直すように言い直す。

「うちで作品を書いていただけますか?」

断る理由なんか一つもない。

俺の念願だったロリとの生活ができるし、それと超絶金持ちということ。

だが、もう一度リスク的なことを考える。

そんな俺の心境を察したのか、少し笑みを浮かべながら愛莉は言う。

「もし、返事が難しいのであれば、いったん持ち帰ってじっくり考えてもらってもいいですけど?」

……そうさせてもらう方がいいのだろうか?

いやでも、目の前にそんなおいしすぎる情報があるんだ。ここで逃したら、完全に後悔するに決まってる。

「愛莉がいいっていうなら、お世話になるよ」

「本当ですか?ありがとうございます!」

愛莉はその場ではしゃいだ。

「なにか要望があれば言ってくださいね。なんでもしますから!」

「なんでも」というすごい言葉を使う愛莉。

「う、うん、よろしく」

俺はそう言うと、なぜか愛莉の頭を撫でてしまった。

「ふぁっ……!?あ、いえ、こちらこそよろしくお願いします」


ということで。

俺はロリとの生活を手に入れたのだった。






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ロリハーレムしていい? ティーノ @vixli23

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