第3話
俺はどうやって念願だったロリとの生活を手に入れたのか?
説明するために、高校退学の5日ほど前に戻す。
都内にある、アイカワという出版社にて。
そのオフィスにほど近い喫茶店で、小説家になりたい俺は、担当編集者である燐ちゃんが作品になる前の原稿をチェックするのを、抹茶を飲みながらぼんやりと待っていた。
いわゆる打ち合わせというやつだ。
小説家になるにはいくつか方法があり、一般的には文学新人賞とかいう賞をきっかけに小説デビューをする。
他には、出版社に持ち込んだり、あるいは個人出版という形で小説家のデビューを目指したりする。
俺はどっちかって言うと、自費出版になるのだろうか。
ページ数で言うと、さすがに長編を書くのはめんどうなので、5万文字ほどに抑えた。
実のところ、あまり良いシチュエーションなんかは思い浮かんでいない中で原稿を書いてきたので、もしかしたら「面白くない」とバッサリ言われるかもしれない。
ふぅー、と燐ちゃんが大きく息をついて、持っていた原稿をそろえてテーブルに置きゆっくりと口を開いた。
「そうだなぁ、よく言えば男性モノの作品。悪く言えば、全年齢対象っていう訳じゃない」
想像していた回答よりも、どちらかといえばやんわりとした答えだった。
「つまり……?」
「つまり、全体的に趣味に走りすぎなとこ。どうしてロリしか出てこないわけ?しかも小学生だし。一人くらい中学生とかを入れること」
「あと、この作品ってR-18だと思った。だって、胸は露出するわ、胸は触るわ……そういうのは、別なところで出したら?こっちはラノベなんだし。たしかにサービスは必要だけど、限度っていうのはあるもんだよ?」
少し優しい口調でそういう燐ちゃん。
胸のサイズはそこそこあり、色白の足からは少し色気を感じる。
ショートヘアーの髪形や服装も、出版社勤めとは思えないほど奇麗である。
「そうか……なんでもかんでも趣味全開っていう訳にはいかないと?」
「そういうこと。それと、君の趣味には驚いたよ。だってロリしか出てこないんだもん」
「あはは……すいません」
少し苦笑いをしながらそう返しつつ、残っていた抹茶を飲み干す。
「評価できるところとしては、男性向けの作品が書けるところ?かな」
「まあ、俺の性癖があれなんで」
「……どんな性癖だろうが、さすがに趣味全開はいけないよ」
「ですよねぇ……うーん」
「ちょっとざっくりだけど、サービスの限度について書いてみたから、これをもとに書くといいんじゃない?」
そういいながら、スッと俺に一枚の紙を渡してきた。
「なるほど……参考にします」
その紙には、サービスの限度についてと、これからのアドバイスなどがざっくりだが書いてあった。
「とりあえず、頑張ってね。私にはアドバイスとかしかできないけど……」
「いやいいんです。そう言ってもらえるだけでも、結構モチベに繋がるんで」
「へぇ、そうなんだ。まあ、期待してないわけじゃないから」
「それ、俺と会うときいつも言ってますよね?」
「……」
俺がそう言うと燐ちゃんは、顔を赤らめて俺から視線をそらした。
「はぁ……燐ちゃんはまだいいんですか?時間」
「ん?ああ、まだ少しは大丈夫だけど……」
「それなら、もう少しアドバイスとかくださいよ」
「……しょうがないなー」
しょうがないといいつつ、どこか少し嬉しそうな燐ちゃん。
燐ちゃんの時間が許す限り、俺は色々なアドバイスをもらい紙に書き留めたりした。
喫茶店を後にして、どうしようかと考える。
せっかく交通費を払ってきたんだから、少しくらい寄り道してもいいのではないかと。
適当にブラブラしていれば、なにかいいアイディアが浮かぶかもしれない。
かわいいロリと運命的な出会いとかこないかなー。例えば、ロリから声をかけられるとかさぁ……。
非現実的なことを妄想していると、リニューアルオープンと張り紙が貼ってある建物を発見した。
その張り紙をよく見ると、ここは新しくできたデパートということが分かった。洋服屋が多く入っていて、なんというか女子が好みそうな雰囲気だった。ここなら理想的なロリと出会える可能性は高いのではないかと思い、試しに寄ってみることにした。
デパート内に入り、おしゃれ好きとかならテンションが上がるのではないかというファッションフロアなんかを見て回る。まあ俺は、こういうのは興味がないのだが。どれも高いなーって思うぐらい。洋服の値段を見てみると、実際結構高い。Tシャツ一枚でゲームとか買えるじゃん。比べたらダメなんだけどさ。そんなのを欲しいと思う人にとって、どちらも人生を豊かにしてくれるものだろう。豊かな人生かぁ……送りたいけどさ。
一時間ほどして一通り巡ってみた。
結局ロリとの運命的な出会いとかはなかった。むろん、いいアイディアなんかも浮かばなかった。
大都会のデパートもこんなもんなんだな。仕方ないといえばそうなのかもしれないけど。
気が付くと、外はすっかり夕焼けに包まれていた。特になにも収穫はなかったけど、これ以上ここにいても何も変わらない。そう思い帰ろうかと思っていると――
奇妙な二人が目に入った。
片方は、企業についてそうな白髪が混じったおっさん。
もう片方は、上品な制服を着たロリだった。
そこでロリの方に視線がいく。
黒髪ロング、まん丸い顔から、すぐに小学生ぐらいだと分かった。
いや、見た目で小学生ってわかるとか、完全にロリコンだこりゃ。
とここで考える。
小学生くらいだけど、もしかしたらこの子を中学生くらいにして胸を少し大きくしたらいい作品ができるんじゃないか?と。
ロリとおっさんは通路の隅の方で、何やら話をしている。
親子……つていう訳じゃないよな。そんでもって、犯罪つていう訳でもない。
なんでかっていうと、ロリに対しておっさんがお辞儀なんかをしているからだ。
お辞儀?いや、あれは謝っている方の意味だろうか。
どうしておっさんがロリに謝る?この二人はどういう関係なんだ。
そのことが気になったので、しばらくの間離れた場所から観察することにした。
ロリに謝るおっさんとか、いろんな意味で面白いのでは?と思い、原稿用紙をバックから取り出し、さっそくそのことについて言語化してみることに。
うーん、以外に悪くはない?いや、何か違う気がするけど……まあいいか。
というより、これがいいとしても、長続きしないのでは?これって、何をモチベにすればいいんだ?
うーん、いつののようにロリを出して、おっぱいとかそういうの出して……いかん、そんなことしたら、また燐ちゃんにダメ出しをされてしまう。
でもなぁ……こういう場合、どうしたらいいのだろう。
いっそ趣向を変えたりしてみたらどうだろう。
「ロリ」ではなく、中学生とか高校生とかをヒロインとして出してみるのは?
……絶対続かないだろ。
悩みに悩んでいると、おっさんがすごい勢いで謝り始めていた。ロリの方は遠慮するように何度か手を左右に振り、丁寧にお辞儀をした。何をしているのかと思った挨拶だったらしい。おっさんはその場を去っていった。
見た目ではわからなかったが、いまの素振りを見ていると、この娘はお嬢様なんじゃないかと思い始めた。
気づけば、俺はそのロリを食い入るように見ていた。
と、そこで。俺の視線に気が付いたのか、ロリはこちらを見た。
必然的に目が合ってしまう。
ドキリと心臓が跳ねた。別にときめいたという訳ではなく、これは完全に危険信号だった。
無断で相手のことを作品にするのは盗作……というかなんなのか。
いずれにせよ、俺はロリのことをじっと見ていたのだ。これは、通報されてもおかしくはない。
俺は無意識に、その原稿をバッグにしまい込むと、その場を離れようとした。
するとロリはにこっと笑い、こちらに近づいてきた。
い、いやいや、こっちに来るとか聞いてないですって!ほ、ほら、俺はロリコンなんだから、こっちに来ない方が――!
「こんにちは、お兄さん」
ロリは俺の前で足を止め、口を開いた。
「あ、え、ええと……こんにちは?」
俺はあたふたしながらも返答をする。
まさかロリにお兄さんなんて呼ばれるとは思わなかった。
ほんとはお兄ちゃんと呼ばれたいのだが……いい加減、その妄想やめた方がいいのでは?
「失礼ですけど、お兄さんって小説とか書く人……だったりしますか?」
「えっ?ま、まあそうだけど……?」
なぜそんなことが分かったのだろう。
なんなんだこの娘は。見た目は超絶かわいいし、ズバリと俺の職業を当てるとか、この世のものとは思えない。(いい意味で)
「どうしてわかったの?」
「原稿、書いてたじゃないですか」
原稿を書いているところを見られていたらしい。
自分から見えているなら、相手側からも見えているとかなんとか。
「その、カバンにしまった原稿、見せてもらっていいですか?」
「えーと……否定する権利は?」
「否定するなら、警察を呼びますっ」
かわいい顔してそんなことを……。
でも逆に考えれば、見せれば警察は来ない……ということか?
いやそう言ってないんだけどさ。
「はぁ……分かったよ」
俺は観念して、さっきまで殴り書きで書いていた原稿をロリに見せる。
「ありがとうございます」
清楚のような感じを出しながら、原稿を受け取るロリ。
「これって本文……?違う、ネタだしのメモかな……」
なにか独り言を言いながら俺の原稿を眺めるロリ。
「お兄さんの作品って結構趣味全開なところが多いですね」
それ、燐ちゃんから言われたよ。
「それにしてもこの言い回し……これって、さっきの私たちですよね?」
「あー……そうだけど」
「そうですよね。だって、この言い回しとかそうですもん」
そういいながら、原稿を指さす。
「はは……なんかごめん。勝手に言語化しちゃったりして」
「いえ、いいんですよ。お兄さんって小説家ですか?」
「いや、小説家を目指しているただの高校生さ」
「そうなんですか。もしもですけど、これ以外にも作品ってありますか?あったら読みたいんですけど……」
ちょうど、燐ちゃんに見せた作品がバックの中に入っている。
「はいどうぞ」
その作品を取り出し、ロリに渡す。
「あっ、ありがとうございます!」
そしてその作品に食い入るように読み進めるロリ。
数分後、ロリは急に顔を上げた。
「えっ、ほんもの……?そ、そんなことって……」
じっと俺の顔を見ながらつぶやくロリ。
「あの、名前を聞いてもいいですか?本物かどうか確かめたいので……」
「えっ、いいけど……」
本物?どういうことだ。
「高橋歩夢だけど?」
「あ、歩夢!?」
俺の名前を聞いた途端、ロリはその場で固まってしまった。
「え、えーと……どうしたの?」
「ほ、本物ですか!?」
「そ、そうだけど……?」
「ああ!やっぱり!」
一体どういうことなのだろう。
状況が全く分からないのだが。
「俺のこと知ってるの?」
「は、はい!大ファンです!」
……ファン?俺のか?
「ファンって言うのは……どういうこと?」
「歩夢さんは、以前に何度か作品を小説サイトにあげていたじゃないですか?」
「ああ。でも、とっくの前だぞそれ」
2年ほど前に、出来上がった作品(今ではかなりの駄作だが)を、小説サイトにあげていた時期がある。
だが、見る人は少なく、これでは小説家になれないなと思い小説サイトに作品をあげるのを辞めたのだ。
「それで、歩夢さんの作品を読むのが楽しくって。それから、歩夢さんのファンなったんです」
そういえば、全然見る人が少なくなっていたのにもかかわらず、一人だけ熱心に俺の作品を読み、俺の作品にコメントをしてくれた人がいた。
……その人ががこの子なのか?
「だけど、こんな作品でよく俺が歩夢だって分かったな」
「だって、歩夢さんの作品好きですので」
そこで言葉を区切り、少し恥ずかしそうにしながら言葉を発する。
「……歩夢さんの作品には、いつも小さい女の子だけが登場していました。つまり、歩夢さんの趣味がその作品に詰まっていたんです。それで、この作品を読んだとき、もしかしてと思い」
「俺の趣味が……なるほど」
いい意味で言えば、この作品には俺の趣味が詰まっているということ。
悪く言えば、趣味全開しすぎということか。
……燐ちゃんが言っていた言葉が今分かった気がする。
「その、歩夢さんが望むのなら……私のおっぱい触ります?」
「…………へっ?」
いや、小学生が「おっぱい」とか口にするのはどうかと思うが……それよりも、ロリが発言した言葉に驚きだった。
「いや、それは……遠慮しようかな?」
当然だが、ロリのおっぱいとか完全に違法だからな。
夢の中ならいいかもしれないけど、ここは現実世界だ。
妄想と現実をごっちゃにするんじゃない。
ごっちゃにしたら、そこで俺の人生は終わりだからな。警察にお世話になんかなりたくないし。
「それなら……お願いがあるんですけどいいですか?」
「お願い?言っておくけど、俺は君の体に触れられないからね」
何度も言うが、触れたくても触れられないのだ。
「……それなら、歩夢さんのあれが欲しいです」
ちょっと残念そうな顔をしたのは気のせいだろうか。
「あれって?」
なんだろう。もしかして……いやそんなことない。小学生だぞ?そんな考えが小学生にあるもんか。
ロリは頬を染めて、もじもじとおねだりしてきた。
「……さ、サインをもらってもいいですか?」
「サイン?あんまりうまくないけど欲しいっていうなら」
サインくらいならお安い御用だ。
ただ、サインの練習なんてそんなにしたことはないので結構下手くそである。
「じゃあ何にサインしたらいい?」
「あ、えーと……」
カバンからサインペンを取り出しそう言うと、ロリは少しあたふたとしていた。
「困りました。ちょうどいいものがないです……」
俺は周囲を見回してみる。だが、ここは福屋が多く入っているところなので、色紙のようなものは見つかりにくい。
時間があるのなら、百均かなんかに行って色紙を買ってくるのだが……。
そんなことを考えていると、ロリは意を消したようにして、制服をたくし上げた。
……ちょ!そんなことしたら下着が――
「あの……ここにサインしてもらっていいですか?」
制服の下には、真っ白いブラウスがあらわになった。
「えっ、えーと……ここにサインしろと?」
「は、はい……」
頭が追い付いていかない。
状況整理するのに手一杯だったからだ。
「その、ここにサインするのはいいけど……君はいいの?これ、結構高そうだし……」
「大丈夫です!歩夢さんのサインより価値のあるものなんかありませんから!」
「ほんとに?お母さんとかに怒られない?」
「大丈夫です。これ、自分で買ったものなので」
「そうなのか……じゃあ、いいのか?」
ちょっと抵抗はあるが、ロリの前に膝をつきマジックのキャップを外す。
……これ、結構ヤバいことをしているのでは?
いや違うんだ。俺はただ、お願いされてロリのお腹にサインをするだけであって……!
「あの……大丈夫ですか?」
「はっ……!?」
ダメダメだ、そんなことを考えるな。
「だ、大丈夫だよ」
ロリのお腹を見ながらそういう俺。
「それじゃあ、君の名前も入れる?」
「あっはい、お願いします!」
サインというのは、例えば「〇〇さんへ」みたいに書くのではないのだろうかと思い、一応訪ねてみた。
「それじゃ名前教えて」
「加藤愛莉です。漢字は加えるに藤で、愛に茉莉の莉……伝わりました?」
「はい、ありがと」
嬉しそうに笑うロリこと愛莉。
「じゃあ愛莉って呼んでもいい?」
「はいもちろんです!それじゃあ、歩夢さんのことお兄ちゃんって呼んでもいいですか?」
「えっ?まあいいけど……?」
なぜお兄ちゃんなのかは分からないが……とりあえず、愛莉のブラウスにサインをすることに集中する。
場所的には、お腹のちょっと横らへんがいいかな。優しくペンの先をお腹に当てる。ふにっと、お腹の柔らかな感触が伝わってくる。これがロリのお腹の感触……なるほどな。
この絵面って、完全に犯罪的だろ。最初からわかってたけどさぁ。
完全に変態だな。
「あぅ……っ」
と、愛莉が声を漏らし身をよじった。
「あ、痛かった?」
「いえ、そういう訳じゃなくて……そこくすぐったいんです」
ペンを走らせている間、愛莉は何度かちょっと色っぽい声を出しつつ、なんとかサインを終えた。
さっきまで真っ白だったブラウスが、俺のせいで汚れてしまっていた。
でもその甲斐はあったと思う。愛莉はサインの跡を見ると、とても喜んでくれた。
「やった!ありがとうございますお兄ちゃん!」
「いやそんなことないよ。ちょっときたなくてごめんね」
「いえそんなことないです!」
自分で見る分には少しきたないサインだが、愛莉から見れば大丈夫らしい。
ふぅ、なんとか一仕事は終えたな。
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