第22話
(続行)
2 月 17 日、今日は『天使の囁きの日』
…そんなことはどうでもよくて。
朝 7 時に目覚まし時計が鳴った。
仲田信枝は目を覚ます。
「うっ、うーん」
今日も寒い。目覚まし時計の気温計を見るとマイナス 5℃と表示されていた。
日本の冬は寒い。世界でも 10 本の指に入るくらいだと言われている。
信枝は気力を振り絞って部屋から出て、1 階のリビングに降りていく。
一人暮らしにはあまりにもこの家は広すぎる。
「よいしょと」
いつものようにコーヒーを淹れてダイニングテーブルに座った。
ダイニングテーブルには椅子が 5 脚。一人暮らしなのに…
コーヒーを飲む。ほろ苦い…。なぜか急に虚無感に襲われた。
自分の役割がなくなってしまったような強い喪失感。
子供なんか育ってたこともないのに、いわゆる空の巣症候群みたいな感じ。
「はーっ」
ため息が漏れた。
テレビの電源を点けるとニュースが流れている。
ウイルスの話、オリンピックの話、軍事侵攻の話。
なんだか世界は嘘みたいな話で溢れている。
虚構と現実の溶けた世界を僕は見下ろしている。
どうやら世界は改変を繰り返していたみたいだ。
絶滅した生物、人間の曖昧な記憶、宇宙の真理。
自分がなんでもない事となんでもあるという事。
個にして全であり、全にして個であるという事。
『おやすみ』そして僕は跡形もなく消え去った。
コーヒーを飲み干した信枝は出勤の準備をする。
歯を磨いて、化粧をして、仕事の服に着替えた。
玄関の靴箱も一人暮らしにはやはりでかすぎる。
「いってきます」
「…」無人の家からはもちろん何も返ってっこない。
そして、信枝はいつものように家を出た。 (完)
『タイトル未定、ジャンル未定、オチ未定』クスッと笑える日常系好きと 後味悪いSF好き が書いてる話 @IRODORI_YAKKUN
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