第21話

「う…」

なんか気分が悪くなってきた。僕は両腕を机についたまま、不快感に耐えていた。

「うーー」

まぶたが勝手に閉じてくる。眠たい。なんか寒気もする。なんだこれは…

スルッ。

『パシン!』

コロッ。

「おい!仲田!お前堂々と寝るとはいい度胸じゃないか、ああ?」

「えっ?えっ?あ、はい、すみません」

びっくりして顔を上げると、目の前に社会科教師・上園の顔があった。僕の教科書を持って

仁王立ちしている。

「よっぽど合格する自信があるんだな?」

「あ、いや、え…っと」

立ち上がって頭を下げる僕に、周囲からクスクス笑いが集まる。

いま、僕、寝てたのか?気分の悪さはすっかりよくなってる。

「すみませんでした」僕はもう一度謝ってから着席した。上園も教壇に戻る。

なんかよくわからないけど、モヤモヤと気分の悪さがなくなってよかった。

「…雄二」

え?

「これ、落ちたぜ」隣の席の康之が、小さい何かを拾って渡してきた。

「ん?あ…」それは小さい、カラフルなカプセルだった。

そう、まるでドク〇―マリオに出てきそうな…。

「なんだこれ。サプリか?」康之は怪訝そうな表情だ。

「あ、いや…」僕はよくわからないまま、そのカプセルを受け取った。途端にめまいがする。

これは…なんだっけ…なんだ…?…あっ!

これは…!!!!

その時僕は、この3日間のことを全部思い出した。

妹の恵美のこと、友人の武志のこと、そして…恋人になったばかりの美咲ちゃんのこと。

「わー!!!!!」

突然大声を出した僕に、教室中がびっくりして振り向く。

でもそれどころじゃない。こんな、こんなことって…!

「こんなことって…」

僕はもう何が何だかわからず、何も見えない。何も聞こえない。

そして震える手を口に運び、そのカプセルを飲み込んだ。意識が遠のいていく…。

『おやすみ』リンカの声が聞こえた。 (完)

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