第20話
「っていうかさあ、なんでチョコ持ってんの?バレンタインデーって 2 日前だぜ?」
「バレンタインデー?今週はバレンタインウィークなんだから?」
「バレンタインウィーク?あー、そうだっけ?」
「何寝ぼけたこと言ってんだよ。今週はバレンタイン伯爵による愛を確かめあうイベント、
バレンタインウィークだろ」
「あー、そうか、そうだっけ」日本の製菓業界は商魂たくましい。確かにそんな気もするな。
「そんなことより絶対に言うなよ」
「わかったわかった。ほら早く行かないと遅刻するぞ」
教室に入ると、バレンタインウィーク 3 日目だというのにチョコレートが活発に動いてい
た。本命チョコ、義理チョコはもちろん、友達同士でチョコレートを交換しあう友チョコ、
男から女に渡す逆チョコ、それから 3 個以上チョコレートをもらった人がその内の 1 つを
まだ 1 つももらっていない人に渡すお恵みチョコに、もう何がなんだか。
もうすぐ受験なのに浮かれやがって。完全に負け犬の遠吠えである。
3 限目社会。
「…であるからして、ネルソン・マンデラは、平等を求める闘いに生涯を捧げて、南アフリ
カの人種隔離政策、アパルトヘイトの終焉に貢献した訳です」
僕はノートに全く頭に入っていない言葉をただただ書き写す。
「そうそう余談ですが、このネルソン・マンデラには面白い話があって、この中でマンデラ
エフェクトって聞いたことがある人?」
「…」なんのリアクションもない教室。
「これは都市伝説みたいなもので、事実と異なる記憶を不特定多数の人が共有している現
象のことを言って、このネルソン・マンデラが 1980 年代に獄中死していたという記憶を持
つ人が大勢現れたことが由来なんだけど、田中どうだ?そんな記憶ないか?」
「いやー、2000 年代生まれですから。特にないですねー」
「あー、そうか。じゃあ、世界地図を見て、オーストラリアこんな日本に近かったっけって
ことは?」「いやー」
「キット○ットってお菓子あるだろ?今日誰か持っていないか?」
「ちょうど今日僕もらいましたよ」
高橋がキットカットを取り出した
「そのパッケージ見てみろ。ロゴにハイフンあった気がしないか?」「えっ、いやー」
「あっ、じゃあこれか、ピカ○ュウの尻尾の先は黒。」「特にないですねー」
「あっ、うーん…。じゃあ、本題に戻ります」
我々、Z 世代にはマンデラエフェクトは効果が無かったみたいだ。
でも、なんか分かる気がするんだよな。なんか世界に違和感を感じるんだよな。でもその正
体は分からない。なんかずっとモヤモヤしてる。
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