第19話

翌朝。

雄二は何となく寝不足のまま、学校に行った。

バレンタインデーの 2 日後、校内では「誰が誰に告白した」だの「誰と誰が付き合うように

なった」だの、女子を中心に噂話が飛び交っている。

卒業まであと少し。みんな中学最後の思い出を作ろうとしてるんだろうか。

誰からも告白されてない、彼女無しの僕には関係のないイベントだ。チョコも結局、母親か

らしかもらってない。実質ノーカウントだよなぁ。

毎年のことだ。

「雄二-、おはよう」

同じクラスの幸助が追い越しざまに肩をたたいていく。あいつも同じくノーカウント組の

はずだ。「おう、おはよう」

「お前、誰かからもらった?チョコ」

「いや。幸助は?」

「フフフ…聞いて驚くなよ。じゃじゃーん!」

幸助がカバンから取り出したそれは、きれいにラッピングされて、明らかに手作りのチョコ

だった。

「え?なにそれ?誰から?」まさかのチョコの登場にびっくりする。

「誰からだー?帰るまでに当てたら、半分やるよ」

「いや…それはチョコくれた人に悪いよ」別に興味ないし。

しかし、幸助はよっぽど自慢したいのか、「えー、おすそ分けしてやるよ。当ててみろよ」

と食い下がってくる。仕方ないから僕は、2人で歩いてて最初に目が合った女子の名前を口

にした。

「じゃあ、木下由紀」

「え…」

え…?

「なんで…」真っ赤な顔で立ち止まった幸助の横を、当の本人がうつむいて通り過ぎて行っ

た。

うそ???

まじかよ。

由紀は僕の幼馴染で、子どものころは「ゆきちゃんとゆうくん、ぜったいけっこんするも

ん!」と毎日のように言っていた、らしい。今となれば恥ずかしい思い出だ。

「あいつが幸助と…」

僕としては、誇らしいような寂しいような、なんか複雑な気分だ。

「お前、よくわかったな…他の奴には絶対内緒だからな」幸助がヘッドロックをかけてきた。

「いてーよ。分かってるから。わざわざ言わねーよ」僕はこちょこちょで攻撃をかわした。

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