第17話
「あと20分だね」
「…生きてるのね」
「うん、この通りピンピンしてるよ。誰かさんのおかげで」
「…」美咲は唇をかんだ。雄二には全部ばれているようだ。
「さ、最後に聞いて!」こうなればダメもとだ。情に訴えてやる。
「なんだよ?」
「これだけは聞いて」
「…何?」急に柔らかいトーンになった彼。
そんな素直なところが、彼の命取りになるとも知らずに。
「信じてもらえないかもしれないけど、私、雄二君のことが好きだったのは本当よ」
「…っ!ふざけるなよ!殺そうとしといて何言ってんだ!」怒鳴る雄二。
そりゃそうなるに決まってる。私は必死で申し訳なさそうなトーンを作る。
「やっぱり信じてはもらえないよね…」
「当たり前だろ!死んでてもおかしくなかったんだぞ」
「ごめん。でも本当なの」
「いやいやいや…」
私は、自分がいかにあまのじゃくなのかを、色んなエピソードを出して説明した。
死にたくない、死にたくない、何が何でも死にたくない、何とかしてこの場を切り抜け…
「いいよ」
泣きわめきながらしどろもどろの言葉をつなぎ合わせる私を、彼の低い声が遮った。
「え?」いいの?
「もう、いいよ」
「…それって…」
「12時だ」
「え?」
「『おやすみ』」
美咲が人生最後に聞いたのは、雄二とリンカが同時に発した声だった。
“ツー、ツー、ツー”
「あれ?」雄二はスマホから耳を話した。画面を見ると「発信先不明」の文字が出ている。
「どういうこと?僕、誰に電話してたんだ?」 なんか今日は、こんな感覚になることが多
いような…疲れてんのかな。もう12時過ぎてるしな。寝よう。
スマホを置いて、雄二は布団にもぐりこんだ。学校の用意はまた明日の朝だ。
(そうやってのんきに寝てられるのも今のうちね)寝顔を見ながら、リンカはつぶやく。
(結局あんたの手元には、毒入りのカプセルが 1 個と、もう一つのカプセルが溶けたまま
のあれが残ってんのよ。そのまま何もしなければ、じわじわ弱って消えていくだけだわ)
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