第15話
『どうでもいいや、って何よ』頭の中でリンカの声がした。
「…だって…」『もう武志を殺すのはあきらめちゃったわけ?』
「い、いや、そうじゃない…けど」『あきらめちゃってるわよね?』
「う、うん…だ、だってもう無理だよ!走って帰っちゃったじゃん!」
『そうね。帰っちゃったわね』「そうだろ?だから…」
『そして、玄関先に落ちてるお菓子に気付くのよ』
え???
どういうこと?言葉が出ない。
『あのお菓子はあんたがびっくりした拍子に、武志の玄関先に落としといたわよ。あいつな
ら「ラッキー」って何も考えずに食べるでしょ。まったく、世話が焼けるんだから』
「な…」なんて先回りだ。
『ま、相手の心の声が聞こえてくるんだし、こんな予測くらい簡単よ』
なるほど。それでもすごい機転だ。さすが天使。これで…
あれ?どうなるんだっけ?
何か大変なことが起こるんだったような…。
思い出せない。おかしい…。
『どうしたの?』リンカがニヤニヤしながら聞いてくる。
「僕はなんで、こんな夜中にこんな公園にいるんだ?」
『さぁ。散歩でもしたくなったんじゃないの?』
「…散歩?…」僕は首をひねりながら、家族の待つ家に帰った。
「どこで何してたのよ!こんな遅くまで!黙って家を出ていくんじゃないの!」
玄関先で母さんに怒られ、自分でも何をしていたか思い出せない僕は「…ごめんなさい」と
言いながら家に上がる。父親のいない我が家では、母さんが女手一つで僕ら兄弟を育ててく
れてる。心配させまいとこっそり家を出た気がするが、ばれていたらしい。「男の子だから
って、夜中に出歩いたら危ないのよ」とついてくる母さんに「わかったよ」と答えながら、
僕は混乱したまま二階に上がった。
「兄ちゃん、入るよ」「おう」一応の確認をして、洋一の部屋に入る。
女きょうだいがいたらもっと気を遣うんだろうが、男同士だからこんなもんだ。
『フフフ…』「なんだよ、リンカちゃん。気持ち悪い笑い方して」
『なんでもないわよ』彼女はそう言うと、またその存在を消した。
「お帰り、雄二」
「ただいま。なんで何回も着信鳴らしたんだよ」僕は改めて、洋一に聞いた。
「なんでだったんだろうなあ…何か必死でかけてた記憶だけあるんだけど…」
「必死で?」「おう。何かとんでもないことが起きてたような気がするんだよな」
…一緒だ。何かがおかしい。僕ら兄弟に、何が起きてるんだ?
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