第8話

ガタンッ。

「えっ?」

振り向くとそこに女が立っていた。倉谷千紗だ。

同じクラスの女子、それも 3 年間。でも一回も喋ったことのないそんな女の子。

「えっ、あっ、えー」

2 月 15 日に朝早く学校に来てチョコレートをロッカーに入れる男子学生イコール…ナンダ

ソレ?

「あっ、あっ、あー」

何故かにこやかな表情を浮かべて、会釈をして倉谷千紗は上履きに履き替え教室に向かう

階段を上っていった。

えとあだけの言語で会話を交わしたこのいま、一体僕は何を目撃されたのだろう?バレン

タイン翌日の奇行?人殺しの瞬間?

いやいや具体的に何を見られた?おそらく、ロッカーに箱を入れる所は見られた。あとは…

このロッカーが誰のかは分かるものなのかな?案外分かったりするもんか?あーーーー。

気づけば僕は校門を出て走っていた。

なんだこれ?どうしたらいい?もう分からない。全速力で学校と反対方向に走る。

「えっ?」

あっ、美咲ちゃん。うわー、変なとこ見られた。でも今日はキャパオーバー。あーーーー。

気づいたら河原のベンチで座っていた。いつの間にか日も落ちはじめている。

今日、僕は何をしたんだ?…とりあえずいまは何も考えないことにした。それにしても初め

てのズル休みかも。こういうのは親にバレてるのかな?

「ただいま」

「おかえりー」

いつも通りの母さんの声だ。セーフ。バレてないらしい。

安心したらお腹減ってきたなー。

ガチャッ「ただいまー。あっ」

帰ってきた洋一と目があった。

「おまえ今日…」

「えっ、あーー」

「まあいいや。一つ貸しな」

「ありがとう。…えっ」

洋一が手に持っている箱に目が止まる。今朝僕が武志のロッカーに入れたものと同じ箱。

「何?どうしたん?」

たまたま?それとも…「えっ、その箱って?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る