第1話 ほぼ終わった世界からの始まり。
「……んっ、俺、寝てたのか。」
「なんだか、頭が痛い。と言うより今何時だ!?」
スマホを確認すると、9:00を表示していた。
「ヤバイ遅刻っ!!……、いや、俺クビになったんだった。とりあえず顔を洗うか……」
陽は立ち上がり、浴室にある洗面台に向かった。
陽はお湯を捻るが、
「冷たッ!?まあいいや……」
水が出てきたが、構わず顔を洗う。
顔を拭き終え、ひとつの疑問を思い出す。
「俺、電気つけたまま寝てたよな?」
だが、部屋は真っ暗である。
「まさか停電!?」
陽はブレーカーを確認した。
もちろんブレーカーは落ちてない。
「じゃあ、なんで電気が落ちてるんだ?」
仕方が無いので、陽はスマホを見る。
そこにWiFiの表示は無く、圏外を表示していた。
「待て、なんでこんな状況になっているんだ?とりあえず外に出……」
服を着て外に出ようと部屋の扉を開けた瞬間、
パリンっ!!
ベランダに出ることの出来る窓が割れた。
いや、正確には何者かが窓から部屋に突っ込んできた。
そして、ヲタクである陽には、その存在が何か、すぐにわかった。
「まさか、ゴブリンなのか!?」
そう、この世には存在しない幻想(ライトノベル)の中にいるTheゴブリンの登場であった。
そして、陽はこの時もう1つの事が脳裏を過った。
『殺らなきゃ殺られる。』
つまり、ゴブリンに殺されることを理解していたのである。
でも、戦おうにも武器がない。
いや、武器はあるが、しまってある。
そう、包丁である。
だが、ゴブリンとの距離は1m。
そして、ゴブリンの手には棍棒らしき武器。
ただ、向こうはまだ俺に気が付いていない。
「よし、今がチャンスだな……」
陽はそっと玄関の鍵を開けた。
カチャっ!!
鍵を回しきり、油断していた。
鍵の開く時の音に気を配っていなかったのである。
その音で、ゴブリンは俺に気付いた。
「ギッギッギ……」
気持ち悪い鳴き声をしながら陽に近付く。
1mほどまで来て、
「ギェエエエ!!!!」
と声を上げながら飛び掛ってきた。
「危なっ!!」
陽はギリギリで躱すと同時に回し蹴りをゴブリンに当て、ゴブリンを玄関の壁に叩きつけた。
そして、素早くキッチンの戸棚から包丁を取り出そうとしたが、こういう時に限って人間はテンパる。
上手く取り出せず、苦戦していると、ゴブリンが起き上がり、再度陽に飛び掛かる。
胴体がガラ空きなので、1発お見舞されるかと思った瞬間、近くにあったフライパンで棍棒をガードした。
「ギェ?」
ゴブリンは何が起きたのか分からず、戸惑っていた。だが、陽は冷静だった。
「残念だったなっ!!」
そのままゴブリンの頭をフライパンでひと殴り。
ゴブリンは、またしても吹っ飛び、玄関の壁で頭を打つ。
陽はその一瞬で包丁を取り出し、玄関をゴブリンを蹴り、開けた。
そして、ゴブリンが怯んで動けない隙に、ゴブリンの心臓目掛けて包丁を刺した。
「ギェェェェェ!!!!」
ゴブリンは苦しむような声をあげているが、陽はお構い無しに押し込む。
『どうしてだろう、何故かはわからないけど、罪悪感とか殺意とかは無い。でも、殺らないと行けないというのだけはわかる。』
そして、数十秒後、ゴブリンは動かなくなった。
足元には大量の紫色の血が広がっていた。
ゴブリンの死体から包丁を抜き、陽は他にも視線を感じたのか、マンションの外へ出る。
やはりゴブリンは群れでこのマンションに来ていた。
「……殺らないと。俺が此奴ら全員殺らないと。」
その瞬間、ゴブリン達も襲い掛かるが、陽は一瞬で包丁を逆手に持ち替え、アッパーカットの要領でゴブリン達の首を切り裂く。
襲い掛かって来たゴブリンは4体。
群れは合計8体のゴブリンだった。
残りの3体には逃げられてしまった。
『チュートリアルクリア
浅木陽 レベル3に到達を確認。』
何処からかそんな声が聞こえてきた。
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